江戸時代5

<解説編>
516 写真の江戸時代の産物は何?                         問題へ      

 6つの品物の詳しい写真を以下に掲載しますので、これを見て考えてください。 



 答えの前に、これを授業中にどう行うのかを詳しく説明します。興味のない方は、とばして正解をどうぞ。

 授業の時に、生徒が現物を見る、さわるということは、理解を助ける重要な行為です。しかし、多くの先生方がやっている、ただ見る機会を作るだけでは、生徒にとっては、単にそれだけで終わってしまう場合が多いのです。
 しっかり理解するには、その時々に、認知科学でいう「深い処理」が必要です。

 その為のクイズ仕立て教材セットがこれです。
 次の写真をご覧ください。

 上の6枚の写真にある教材は、下の写真にあるように、一つのタッパーに入るように工夫されています。もちろん、このクイズ学習は、授業中にグループで行うことを想定していますので、タッパーはグループの数だけ準備しなければなりません。



 さて、答えの説明に向かいます。

 江戸時代は、江戸幕府が安定した支配を長く続けた結果、諸国で産業が発達していきます。それを説明するため、高校の日本史の教科書には、さまざまな産物が登場します。

 ところが、その数が多すぎるため、教える方も学ぶ方も、具体的なイメージとか、理解ができずに、ただ言葉だけ記憶して過ぎていってしまう学習が多くなってしまいます。

 この6つの品物クイズ学習は、江戸時代の終わりに行う、いわば復習の学習です。授業中にさっと説明していったものを、本当にわかっているかどうか、もう一度確認するためのクイズ学習です。

 では、正解です。もちろん、教材の入手方法付きです。


 これは、黒砂糖です。 すでに他の所でも説明していますので省略しますが、幕末の薩摩藩の藩政改革では鍵となる産物です。
<入手方法> 
 そこらのスーパーで売っています。 右はその1例。喜界ヶ島産です。
 詳しくは、他のクイズ「江戸時代514」と「現物教材でかい黒砂糖」を参照ください。 

 これは、いりこ(海鼠(なまこ)の内臓を抜いて、煮て干したもの)です。
 17世紀末以降、中国向けの長崎貿易において、それまでの銅に代わって、重要な輸出品となった、フカのひれ、干しアワビを併せて、俵物と総称される海産物のひとつ。中国料理に使われる。
  老中田沼意次の時代には、長崎貿易で利益を上げるための重要な商品となった。
<入手方法>
 中華食材を売っている専門店で手に入ります。私は、たまたま行った神戸の中華街の食材屋さんで入手しました。結構な値段でした。
 

 これは、くじらのひげです。
 鯨については、「諸産業の発達」の部分で、「紀伊・土佐・肥前・長門などの捕鯨」の発達の記述があり、幕末のアメリカによる外圧の理由にも、北太平洋の捕鯨船の寄港地の記述があります。
 また、各地の祭りのからくり人形などの細工には、鯨のひげが今でいうバネとして使われました。詳しくは、「現物教材鯨のひげそのた鯨セット」参照
<入手方法>
 鯨のひげの未加工物は、現在は普通のルートでは手に入りません。靴べらなどに加工した物は、
和歌山県太地町立くじら博物館 0735-59-2400 で手に入ります。 ミュージアムショップのコーナーでは、通信販売もできます。http://www.town.taiji.wakayama.jp/museum/mainmu.htm  

 これは、紅花(べにばな)です。 紅花は、出羽村山(最上)地方特産の赤い染料をとる原料として登場します。いわゆる、出羽の紅花、阿波の藍、の並び称される物の一つです。
 現在では、紅花は、植物油として高級な調理油となっていますし、また、乾燥した物は紅花茶として、健康飲料ともなっています。
<入手方法>
 写真の物は紅花茶で、薬局や健康食品専門店など入手できます。

 これは、油粕(あぶらかす)です。油粕は、菜種油・大豆油などをしぼった絞りかすです。窒素分を多く含み、肥料として現在も使われています。
 江戸時代では、干鰯(ほしか、干した鰯)などと並んで、金肥(お金を払って購入する肥料)の代表です。綿花などを栽培するには不可欠な肥料でした。
<入手方法>
 これは今も使われていますので、園芸店で簡単に購入できます。安価です。

 これは、フカのひれです。
 上の2番のいりこのところで説明した、俵物の一つです。
 古くから、東日本ではサメ、西日本ではフカという言い方を使ってきました。言い換えれば、サメのひれです。いうまでもなく、中国料理の高級な原料です。
<入手方法>
 もちろん、中華食材として買うこともできます。しかし、とても高価です。
 そこで、写真の細かなフカヒレは、実はインスタントのフカヒレスープに入っていたものをいったん調理して、一つひとつピンセットで分離し、それをあらためて乾燥させるという、苦肉の策で安価に作りました。(--;)