現物教材 日本史14

近世 007 でかい黒砂糖                             |現物教材:目次:日本史 |


「でかい岩塩」「でかい石炭」に続くでかいシリーズの第3弾、「でかい黒砂糖」です。
 何に使うかは、日本史クイズ江戸時代編「19世紀の薩摩藩の借財」をご覧ください。

 ところで、この縦横12センチ×15センチ、厚みも5センチもあろうかという大きな黒砂糖ですが、10年ほど前にどこかで購入したのですが、どこで購入したのか、どうしても思い出せません。
 思い出せないと言うことは、どこか近くの普通の場所だったと思うのですが、近隣の大きなスーパーや食材店には、売っていませんでした。

 このコーナーでは、入手方法を紹介するのが大事な仕事と思ってきましたが、ここでは、思い出すまで紹介は御免ください。

 また例によって、砂糖とサトウキビの説明をします。

1 砂糖の原料と世界の歴史
 ご存じのように、現在では、砂糖はサトウキビ(甘藷)か、テンサイ(さとうだいこん、ビートともいう)から作られます。
 
 サトウキビは、南太平洋の島々が原産地と考えられています。そこから東南アジアを経てインドに伝わったようで、今から2300年前の、ギリシアのアレクサンドロス大王のインド遠征時の記録に、サトウキビに関する記述が出てきます。
 そののちアラビア人によって、西はペルシア・エジプト、東は中国に伝えられました。
 
 ヨーロッパへは、11世紀から13世紀にかけて、オリエントへ出かけた十字軍が持ち帰りました。温暖な地中海地方で栽培が始まります。しかし、当初は、ヨーロッパでも大変な貴重品でした。
 しかし、アメリカ大陸が発見され、ヨーロッパ人によってアメリカへサトウキビがもたらされると、砂糖の生産は急速に伸びました。おりしも、ヨーロッパでは、中国産の紅茶が広がりつつあり、紅茶と砂糖はヨーロッパ人の食生活に急速に普及していきました。
 現在ではサトウキビはハワイやキューバなど、全世界で8000万トン以上が生産されています。

 テンサイは、18世紀にドイツで、資料用のビートが改良されて作られました。
 日本では明治維新後に北海道で栽培が始まりました。こちらは、比較的涼しい地域で栽培され、現在では、ウクライナ、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカなどで、4000万トン以上が生産されています。

2 サトウキビと日本
 サトウキビは、日本へは、唐僧鑑真によって伝えられたと言われています。しかし、しばらくは、栽培はされませんでした。
 室町時代になると日明貿易が盛んとなり、明から砂糖が輸入され、日常生活で珍重されます。狂言の「ぶす」の太郎冠者と次郎冠者の話は、有名ですね。
 ちなみに、第8代将軍足利義政は、砂糖をふんだんに使った羊羹が大好物だったといわれています。

 南蛮貿易では、砂糖菓子が輸入され、もてはやされました。ポルトガル語の、「confeito」 が「金平糖」という日本語になったのも、そういう事情です。
 このあと、琉球では、1623年からサトウキビの栽培が始まります。
  ※詳しくは、沖縄県黒砂糖協同組合・沖縄県黒砂糖工業会のサイトへ

 やがては、薩摩藩領の奄美大島・喜界島(きかいがしま)・徳之島でも栽培が始まります。
 第8代将軍徳川吉宗は、全国に甘藷の栽培を奨励しました。しかし、すぐには、栽培法は確立されず、18世紀末から19世紀初頭においては、琉球と薩摩藩領が日本の砂糖生産の中心でした。
 これが、19世紀前半の薩摩藩の財政改革を可能とします。

3 黒砂糖と白砂糖
 現在では、砂糖といったら普通は、白い砂糖のことです。しかし、江戸時代は、砂糖といったら、黒砂糖でした。
 砂糖の種類は、製法により基本的に次の二つに分けることができます。 

区分

違い

砂糖の細かい種類

砂 糖

含密糖

サトウキビの全成分をそのまま煮詰めたもの

黒砂糖
和三盆(和菓子などの原料)

分密糖

サトウキビのしぼり汁から糖蜜を遠心分離したもの
今日、普通に使われる砂糖

上白糖
グラニュー糖
三温糖 など


4 黒砂糖の成分
 黒砂糖は、サトウキビの糖蜜分を分離していない砂糖であるため、ミネラル・ビタミンなどが多く含まれています。
 沖縄県は長寿県として知られていますが、沖縄県黒砂糖協同組合・沖縄県黒砂糖工業会によれば、その原因の一つは、黒砂糖にあるということです。 

成分名

単位

黒砂糖

和三盆

上白糖




100






エネルギー

kcal

354

383

384

タンパク質

g

1.7

0.2

0

炭水化物 g 89.7 98.8 99.2

ナトリウム

mg

27

1

1

カリウム

mg

1100

140

2

カルシウム mg 240 27 1

ビタミンB1

mg

0.05

0.01

0

ビタミンB2

 mg

0.07

0.03

0

 以下は、市販品です。


種子島産の黒砂糖


種子島産黒砂糖の中味。(唐揚げではない (+_+) )

 
喜界島産の黒砂糖


黒砂糖を粉末状にしたもの 


北海道十勝さんのテンサイトウ


 最後に、実物のサトウキビの通信販売で購入できるサイトを紹介します。

 鹿児島県の奄美大島にある「株式会社さと」の「ガジュマルの郷 特産品販売事業部」です。
 但し、1月〜3月の収穫時期しか購入できません。
 ※鹿児島県大島郡笠利町里50−2 電話 0997−63−1622(フリーダイヤル 0120−53−0501


 もうひとつ、おまけですが、横浜には、「横浜さとうのふるさと館」という砂糖工場の中に作られた見学施設があります。インターネットの紹介によると、小山のような砂糖、サトウキビ畑など、いろいろ経験できるそうです。
 ※横浜さとうのふるさと館 横浜市鶴見区大黒町13−46塩水港精糖(株) 電話0120−310−260
   こちらのサイトです。