世界の文化その2
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<解説編>
 

1101 アメリカで誤解される日本の夫婦の児童虐待とは何でしょうか。       問題編へ

 正解は、日本人の乳幼児のお尻に現れる蒙古斑が、アメリカ人から見ると殴打したため生じた青あざと勘違いされ、子どもを虐待していると誤解される

 アメリカでは、日本と違って安全に対する意識が厳しいため、日本では時々ある車の中に子供を一人で寝かせておくとなどと言うことをしたら、みんなから非難を受けます。公園でをだだをこねる幼児を置き去りにして遠くから見ていたらとすぐに黒山の人だかりになってしまい、いいわけをするのに苦労したという話も聞きます。

 州によって多少の差はあるものの、アメリカでは12歳以下の子供を生命の危険がある状態に置くことは法律で禁止されています。小さな子供だけで外で遊ばせたり、留守ばんさせたりするのも法律違反。

 蒙古斑は、その名のとおり北アジア系の民族にしか存在しないため、白人・黒人の多いアメリカ社会では、その存在すら知られていない場合が多いのです。そのため、プ−ルの脱衣場・医者などで無知な西洋系アメリカ人に見とがめられて大騒ぎとなる場合もあります。こういうときに日本人と違って彼らは見て見ぬ振りという態度をとらないところも日本人とは違います。
 マンハッタンにある東京海上記念診療所は、今年はじめて広報誌に蒙古斑につての英文の解説を載せました。
 鮎沢純子業務部長は「蒙古斑は欧米ではあまり知られていない。尋ねられたとききちんと説明できるよう日頃から備えておくことが重要。米国社会では幼児虐待に敏感なこと、子供の人権を守るために誰でも通報ができることが法で保障されていることを知識として知っていることが重要。」と話している。
 ※『朝日新聞』1995年6月5日など


1102 フィンランドのチョコレート名前になっている日本を代表するものとは何ですか。 問題編へ

 日本が外国からどう見られているかを示すいい例がこのフィンランド製のチョコレートです。
 正解、何とその名前は、
geisha、つまり「芸者」です。

 日本ですらもう知らない人が多くなってしまったこの職業が、未だに外国では日本を代表するものとして意識されているのでしょうか。古典的には、日本は「冨士山・サムライ・寿司・芸者」の国なのでしょうか。それともその会社の単なる趣味なのでしょうか。

 このチョコレートは、フィンランドの Fazer という会社の製品です。
 フィンランドでは、スーパーマーケットなどどこでも売られているそうです。
 この商品そのものは、ドイツに旅行に行った教え子に買ってきてもらいました。ドイツでも、空港の売店やスーパーマーケットで売られていたそうです。
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 現物教材「geishaチョコ、geisha缶詰、芸者」へ


1103 おしゃべりなベルギー人の車のワイパーはどうなっているでしょうか。   問題編へ

 正解は、「ベルギーの車のワイパーは、窓の内側に付いている」です。つまり、しゃべってつばが飛ぶので、それを除くようにワイパーがあるというわけです。ナイスユーモアです。
 この他にもオランダ人がベルギー人を悪く言う話はあります。

  • 世界一薄い本が二つある。ひとつは、ドイツ人のユーモアの本で、もう一つはベルギーの歴史の本。

 ドイツ人がまじめでユーモアという点ではあまり得意ではないことと、ベルギーの歴史が浅いことを皮肉っています。ベルギーは元もとオランダと同じスペインの支配を受けていましたが、オランダ独立の際には、スペイン領として残ります。1830年になってようやく独立しました。したがって、ヨーロッパの中では新しい方の国です。
 
 こうなると、ベルギー人も負けておられません。ベルギー人の言うオランダ人の悪口です。

  • ある時、ベルギーの酒場にオランダ人が二人やってきて飲んだ。ところが、帰り際に喧嘩を始めた。
    店の主人が理由を聞くと、どちらが支払うかでもめている。
    そこで主人が、解決の方法を提案した。
    「洗面器に顔を付けて、息が続かなくなって早く顔を上げた方が負けで、お金を払うというのはどうか。」
    二人は、言われたとおり洗面器に顔を付けた。

    「そこでその二人どうなったと思う。」ベルギー人の主人は得意げに言います。
    「さあ」
    「二人とも顔を上げずに死んじまったのさ。」

 そんなことはあり得ないでしょう。
 これはあくまで、オランダ人が経済的にこざかしく、けちであるということを主題にしたブラックジョークです。なかなかのものです。そういえば、英語では、割り勘にすることを、「Dutch count」といいます。
 もう一つ紹介します。

  • 商業の盛んなアムステルダムは、また論理が幅を利かす所です。アムステルダムの論理学の先生が、農民に教えます。

    先生「お前は金魚鉢を持っているだろう」

    農民「持っています」

    先生「ということは魚が好きと言うことだ。つまり動物が好きというわけだ。ということは人間も好きというわけだ。人間には男と女がいる。お前が男である以上、お前は女好きということだ。どうだ。」

    農民「そうです。見事当たりました。」

    面白い話を聞いた農民はこの論理を友人に試します。

    農民「お前は金魚鉢を持っているか」

    友人「持っていない」

    いきなり演繹法が破綻してしまった農民はしばらく考えて結論を出します。

    農民「お前はホモだろう。」

 このように話すと、両国は仲が悪い様な風に見えますが、決してそうではありません。両国には、かの有名な、国境の町が存在しています。
 右図の星印の所に、
Baarle という小さい町があります。正確には、オランダ側では、Baarle-Nassau といい、ベルギー側では、Baarle-Hertog といいます。

 この町は、遙か12世紀の昔、オランダのブレダ公爵とベルギーのヘルトグ公爵との間で結ばれた領地協定のまま境界線がしかれているため、お互いの領土に多数の飛び地を残したまま現在に至っています。
 つまり、国境線といっても、一筆書きで線が引けるのではなく、お互いの領地の中に、また相手の領地が飛び込んでいるのです。 オランダ側のバール・ナッソウ市にはベルギー領が23カ所あると言った具合です。

 このため、どこの国の家かわかるよう、玄関には両国の国旗やシンボルマークが付いています。極端な場合には、家の中を国境線が通っている家が何軒もあります。そういう場合は、玄関がどちらに属しているかで、所属が決めてあります。
 この町では、市長・市役所はもちろん、警察も消防もすべて二つ協力して運営されています。
 ※司馬遼太郎『街道をゆく35 オランダ紀行』(1991年朝日新聞社)
 ※オランダについては、次のクイズもあります。
  クイズ現代社会 宗教1
  クイズ日本史 近世編


1104 アメリカへの輸出用の招き猫は日本の招き猫とどこが違うでしょう。      問題編へ

 右の写真がこの業界で「ドルキャット」と呼ばれている、アメリカ向け輸出版です。
 文化の違いに考慮して、次の点が違っています。
  1 瞳が青い
  2 小判ではなくドルコインを持っている
  3 福を招く手が、手のひらを上に向けて呼ぶ形となっている

 3番の手の形まで気が付いた方は、異文化理解の達人です。
 人を呼ぶ時ての動作をどうするかは、「招猫倶楽部」のサイトの「招猫研究室」に詳しく説明してあります。次のサイトをご覧ください。
  米「招猫倶楽部」http://homepage1.nifty.com/manekinekoclub/index.html
 
 現在の日本の招き猫の三大産地は、愛知県常滑・愛知県瀬戸・石川県九谷です。このうち、青い目の「ドルキャット」は、常滑で生産されています。
 「ドルキャット」は、ところどころにある招猫専門店(?)で購入できますが、次のURLにネット販売サイトがあります。
  ※遠州浜松招猫の宿 ふくねこ http://www.fukuneko-planning.com/top.html
   常滑の注文のコーナーのpage3にあります。

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1105 現代イギリスでは日本はどのように紹介されているでしょうか?      問題編へ

 日本と韓国とで開催される2002年サッカーワールドカップは、2001年12月1日に組み合わせ抽選が行われて、無事すべての対戦カードが決まり、本番へ向けて、気運が盛り上がっています。
 
 イギリスチーム、おとっと、正確に説明しましょう。イギリスは、正確にはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国で、歴史の授業でよく登場しますが、連合王国を形成するひとつひとつが、それぞれの単独のサッカー協会を持っていますから、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドに別れています。
 今回は、イングランドのみの出場です。

 抽選の結果、イングランドは、アルゼンチン・ナイジェリア・スウェーデンとともにF組を形成しました。日本・ベルギー・ロシア・チュニジアからなるH組などと比べると、誰しもが認める最激戦区です。
 イングランドの試合は、6月2日(埼玉)対スウェーデン、6月7日(札幌)対アルゼンチン、6月12日(大阪)対ナイジェリアとなりました。
 イングランドチームは、淡路島の津名町で5月下旬からキャンプに入ります。
 イギリス本国での同大会や日本に対する関心が高まっているのは、容易に想像できます。

 では、イギリス人観光客も多数出かける日本に対して、イギリスのメディアはどのような国だと報じているでしょうか。

 正解、最もポピュラーな紹介の仕方は、「物価の高い国」、です。

 大衆新聞「サン」は、一面で次のように値段の比較をしています。

<日英物価比較表> 数字はポンド、( )内は円、1ポンド185円で換算

英    国

項    目 日    本

40

(7400) サッカーのチケット 60 (11100)

(370) ホットドッグ         
      

たこ焼き

(740)

2.5

(462) ギネスビール(1パイント) (1295)

1.2

(222) コーヒー (740)

4.3

(795) たばこ(20本) 1.5 (277)

 ところが、これは事実とはずいぶん違います。日本のどこに普通で1杯740円のコーヒーが存在するでしょうか。故意の嘘か、それとも、高級ホテルのラウンジのコーヒーの値段でしょうか。

 この新聞を読んだイギリス人には、岐阜・名古屋地方の喫茶店の「モーニング・サービス」に連れて行ってあげましょう。その安さとゴージャスさに腰を抜かしてチビってしまうかもしれません。

 この辺の「一方的誤解」が、相互の正しい理解を妨げます。

 次の例はもっと滑稽です。
 「サン」は、一面の裏面で、「地震に気を付けろ」と大見出しを付けました。

 イングランドがキャンプする淡路島は、去る1995年の阪神淡路大震災では大きな断層が生じたり被害が大きかったところです。同紙は、「未だに地震が頻繁に発生している」と紹介し、地震とは無縁の英国人に対して、「少しの揺れでも、初めて経験する人は不安だろう」という地震学者のコメントまで付けています。
 
 デーリー・メールのマーティン・リプトン記者は、この秋に日本に訪れて実際に日本を見ています。ところが、彼女が紙面で使った写真は、着物を着た女性が、イングランド代表のベッカム主将が表紙に載っている雑誌を眺めているというもの。
 今時、着物を着た女性がそう簡単にいるはずはありません。

 リプトン記者は「街に着物を着た人なんていなかったから、一流ホテルの日本料理店で働く女性に頼んだんだ。やっぱり日本のイメージは着物だから」と説明したとか。おいおい、やらせかよ。

 いろいろあっって、一度凝り固まった画一的なイメージは、なかなか払拭されません。
 たくさんの人に日本にきてもらう以外に、事実を知ってもらういい方法はないかもしれません。百聞は一見に如かず。
  ※『朝日新聞』2001年12月5日朝刊の記載記事を一部引用して構成