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人類はどこで誕生したか3
   
 □アクア説(水生人類説)の意外性 01/12/02作成 
 水辺で浅瀬を渡ったり泳ぐ生活を送った面白い証拠

 エレイン・モーガンは、上述のように、人間の基本的な器官や様態について、サバンナ説よりもアクア説の説明の方が無理がないと主張していますが、もっと細かい部分では、次のように面白い指摘をしています。

  1. まず鼻の形の問題です。
     他の多くの霊長類の鼻の穴(鼻孔)は、前を向いているか、横を向いているかのどちらかで、そもそも人間のように、鼻骨と軟骨があって、鼻孔が下を向いているという類人猿はひとつの例外をの除いてはいない。人間の鼻の形は、まさしく妙な進化の形なのです。
     ところで、上に書いたひとつの例外とは、テングザルのことです。これはその名のとおり、天狗のように、高い鼻を持っています。(今の若い人は天狗を知らないかもしれませんが)テングザルが鼻が高いのは、オスの成獣のそれは、明らかにメスを引きつけるためのシンボルとなっています。ところが、こどもサルの行動を観察すると、彼らはサルにしては珍しく泳ぎ、その時、鼻先はシュノーケルのように水面からでて、呼吸ができるようになっているのです。
     説明が遅れましたが、ゴリラやチンパンジーなど人間に近い類人猿は、そもそも水に浸かることをひどく嫌います。森の樹上生活者である彼らにとって水の中を泳ぐというのは日常生活上とても縁遠いことであり、また、彼らは毛が濡れてしまうことを非常に嫌います。
     飼育されているニホンザルや、人間の影響を受けたニホンザルが、気持ちよく温泉に浸かっているのは、自然な姿ではないのです。
     テナガザルは、ボルネオのマングローブが生えた海岸沿いの湿地帯に住んでいます。満ち潮の時は、しばしばえさ場からえさ場へ水中を渡っていかなければなりません。その環境に適応したのが彼らの鼻なのです。

  2. さて、前項の最後に宿題にした、鼻の穴の下の溝のことです。
     これを何というか知っている人は少ないと思います。顔のほかの部分は話題になっても、この溝はあまり話題にはならないからでしょうか?
     この溝は、人中といいます。さて、これはいったい何のためにあるのでしょうか?霊長類の中にもこんな溝のあるサルはいません。
     鼻の下に溝が2本あるのなら「鼻汁を流すため」とか言う説も考えられますが、中央に1本あるだけです。
     これについて、モーガン自身も予想しなかった意外な展開が起こりました。
     モーガン自身は、「水生哺乳類(イルカなど)は鼻孔を閉じることができるが、人間はあまりうまくいかない」と考えていました。彼女はそのことを『人は海辺で進化した』に書いたのですが、それについて読者の一人から、反論がきました。
     その手紙によると、「自分の夫と子どもたちは、上唇をうまく上に挙げると、上唇で鼻孔を塞ぐことができる。事実そうやって水が入らないようにして泳いでいる」というのです。その場合、人中の溝は、ちょうど鼻の真ん中の隔壁に密着して、上唇がぴったりと蓋をするのに適した形だと言うことになるのです。
     試しにやってみましたが、私はうまくいきません。しかし、人は顔に関しても、原始的な筋肉が今なお生きている人が結構います。たとえば、耳を動かすことができるとか、舌を器用に横向けたりななめにしたりできるとか・・・・。
     皆さんに聞いてみれば、口の中に空気を入れて上唇を持ち上げて鼻孔を閉じることができる人はいませんか?
     人中はそのための溝なのでしょうか。

  3. 次は体毛の生え方です。
     人類は基本的には、保温するという点では体毛は失ったも同然です。その理由は、前項に書きました。
     ところが、ひとによっては、いわゆる毛深い人もいます。
     問題はその毛の生え方です。
     霊長類では、毛は、水分を落下させる目的から、ほとんどが下に向かってまっすぐ下に向かって生えています。ゴリラの背中の毛はまっすぐ下を向いているのです。
     ところが人間の体毛は、そうではありません。
     家族に毛深い人がいれば身近で、いない人は、相撲の力士の中の毛深い人でも観察してみてください。背中の毛は左右対称で、まるで渦を巻いているような向きで生えています。
     これは、なんと、「頭を水から出したまま、平泳ぎに似た泳ぎをしたとすれば、体のまわりにできる水流はまさに、ホモ・サピエンスの体毛の向き」に合致しているのです。
     もういちど、毛深い人を観察してみましょう。
     


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