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名鉄揖斐線・廃線物語 叙情的写真集11 
 最後の春 −station2 尻毛−
尻毛駅 (撮影日 05/03/16)
 

 尻毛駅の東には、本巣市(旧本巣町)を経て谷汲へ抜ける古くからの街道(県道)が走っています。写真のような狭い道路ですが、この道路は路線バスも通る幹線道路です。狭い故に、大型バスとすれ違う時なんかは、この道路を知っているドライバーならともかく、初めての人は、大変苦労します。
 実は、我が家から忠節橋へ通って市内中心部へ入る最短ルートもこの道です。したがって、二人の息子の高校時代の通学ルートであり、また私もこれまで28年間の社会人生活のうち、12年間はこの道が通勤ルートでした。

 この街道に沿って、駅を挟んで南北に、「商店街」があります。これは、現在の揖斐線の中間駅の「商店街」としては、北方町の中心部の3駅を除くと、最大のものです。
 駅の南から街道に沿って、薬屋、和菓子屋、洋菓子屋、たばこ屋兼自転車預かり屋、洋品店、スーパー、魚屋、自転車屋、内科医院などなどが並んでいます。
 
 そのうち、駅のすぐ南、I たばこ店兼自転車預かり店で尋ねてみました。お店番をしていらっしゃったのは、私の母親と同年代ぐらい、年齢70歳後半ぐらいのご婦人です。

 

「ここのお店は、表に、「自転車手荷物預り所」と書いてありますが、手荷物預かりというのもやっておられるのですか。」

ご婦人

「はい、でも、今はもう手荷物を預けるお客さんはありません。この店を開業したのは戦後なもなくの頃でしたが、その頃は、電車で荷物を運んで商売している人が多かったんです。その人達が、ここで電車を降りて、大きな荷物をうちに預けて、この周辺で商売して、また荷物を持って次の駅に行くというふうだったんですがね。」

「自転車も、預かっておられるのですね。」

ご婦人

「はい、これも、昔はたくさん預かっていましたが、今はほれご覧のとおり、これだけやがね。」(お店の中には5台の自転車がありました。)

「揖斐線が廃線となったら、自転車預かりはどうなりますか?」

ご婦人

「そりゃ、バスもありますから、お客さんはないことはないでしょうか、私も年をとりましたんで、もう廃業にしますんです。お客さんのために朝早くから夜遅くまで店をおけておくのは大変ですから。この自転車のお客さん方、ほとんと高校生さんですが、この3月末まででお断りする約束にしてありますね。

「なんか寂しいですね。」

ご婦人

「しょうがないね。潮時ですがね。」

 
 もうじき、電車も、踏切も、そして、自転車手荷物預り所の看板も消えます。


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