名鉄揖斐線・廃線物語
 説明的写真集
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 □保守点検
05/03/21作成  05/07/31説明一部追加
 鉄道は保守点検が大変です まずは油                               目次へ

 鉄道は、道路を走る自動車よりも高速で大量の輸送ができますが、その分いろいろ手間のかかる保守点検が必要となります。
 このページでは、保守点検にかかわるいくつかのことを写真と説明で紹介します。 

 まずは、油差しです。これは、ごく日常的な仕事です。
 左は、朝の黒野駅で、ポイントへの油差し。 右は、朝の徹明町交差点のカーブ部分への油差しです。       


 真夜中、マルタイ出動                                          目次へ

 名鉄揖斐線をテーマして取材を初めて6か月、この間に、写真を撮影したり、駅におじゃましていろいろ伺っているうちに、親しくなった駅員さんから、いろいろ面白い情報も教えてもらいました。

駅員

「Mさん、今度の月曜の晩、マルタイが出るんだけど、見に行ってみる?」

「マルタイって、あの軌道の砂利をちゃんとするやつ?」

駅員

「本線とかJRとかのは、ばかでかいけど、ここのは、そこに止まっている小さいやつ。でも、ちゃんと働く。月曜の晩は、確か政田駅の近くへ出動するはず。」


 マルタイというのは、正式名称マルチプルタイタンパーといいます。
 簡単に言うと、線路の保守をする機械です。
 
 普通の線路というのはご存じのように、レールの下に枕木があって、その下にバラストと呼ばれる一つの大きさ4センチほどの砕石が、厚さおよそ20センチから40センチほど敷き詰められています。(通過する車両の本数と重量によって異なります。)このバラスト(道床とも呼ばれます)は、地面とレールとの間の緩衝材の役目をもち、レールの座りをよくするとともに振動や騒音を和らげるクッションの役目を果たします。
 
 しかし、重い電車が何回も走ると、電車の重みによってバラストのバランスが崩れ、レールが不均等に沈下したりするなど不都合が生じ、安定した走行ができなくなってしまいます。 

 鉄道のことをあまり知らない方のために、もう少しわかりやすく説明します。
 たとえば、レールと枕木を地面の土の上に直に敷くと、通過する車両とレールの重みがかかる枕木の部分のみが、土の中に沈んでいってしまいます。
 
 枕木と地面の間にバラストがあるとどうなるか?
 バラスト(縮めてバラスともいいます。)は、河原に普通にある砂利とは違って、正確には砕石です。つまり、大きな岩を砕いたもので、角張っています。一般の砂利のように角が丸いものではないのです。
 
 なぜ角張っていないといけないのか?
 角張っていると、砕石どうしが互いにがっちり組み合って、下方向のみならず斜め方向にも力を伝えてくれます。つまり、車両とレールの重みをバラストが敷き詰められている部分(道床)全体に分散させてくれるわけです。
 したがって、レールと枕木部分のみが沈下するということがなくなります。

 しかし、よい状態のバラスト(道床)であるためには、4センチほどの大きさを中心に、2〜6センチぐらいの砕石が微妙にまじりあって、重量をうまく分散させてくれる必要があります。
 しかし、最初は理想的な状態でも、電車が何百回も走るにつれ、バラストのバランスが崩れ、少しずつ沈下が起こってしまいます。

  【2005年7月31日説明追加】
   『朝日新聞』2005年7月31日日曜版「be on Sunday」
   「4もっとサイエンス 線路の下にはなぜ砂利が」などを参考にしました。


 それを修正し、線路下のバラストとの線路そのもののバランスを回復する機械がこのマルタイです。通常は駅の車庫等にいますが、夜になると、ディーゼルエンジンをうならせて線路上をゆっくり作業現場まで走っていきます。
 現場では、自分の腹の下からツメのようなものを出して、線路と枕木を持ち上げ、バラストを掘り返し、付き固めて、線路とバラストのバランスを修復します。

(写真をクリックしてください)
マルタイ 黒野駅 マルタイ出動 ツメ
掘り返し1 掘り返し2 作業員

 この日、マルタイは、約3時間かけて、300メートルほどのバラストを修復しました。
 23時30分から2時半過ぎまでの、深夜作業でした。

 作業員の皆様ご苦労様、つきあった私もご苦労様。(次の日もちゃんと朝から出勤しました。(;´_`;))


 真夜中、忠節橋北詰交差点、軌道整備                         目次へ

 普通の線路上よりもやっかいなのが、道路の軌道です。
 職場の上司が、深夜の作業について情報を教えてくれました。
 

上司

「Mさん、昨日な、残業して12時頃帰った時に、忠節橋南の真砂町通りの軌道敷きで大工事をやっとたぞ。」

「そうですか、保守工事ですね。今日も残業で遅くなりますから、帰りに写真とってきます。」


 上司のせっかくの情報ですから、確かめないわけにはいきません。残業を11時に打ち切って、忠節橋へ向かいました。
 11時半頃は何もありませんでしたが、しばらく巡回していると12時頃になってにわかに賑やかになりました。続々と工事車両が集結します。交通規制も始まりました。
 この日は、忠節橋北詰の交差点で、軌道敷き内の線路と舗装の修復工事が行われたのです。

 ちょっと手持ちぶさたの作業員に確認しました。

「この作業って定期的にやるんですか。」

作業員

「そうです。一般的に軌道敷き内の道路は、電車やさらに自動車の重みで、不規則な沈下が起こってでこぼこになります。さらに、交差点は、自動車に横切られるため、そこだけ特にでこぼこになります。今日は、そのための、交差点内の修復作業です。」


 写真左 忠節橋北詰の交差点の真ん中の舗装がはぎ取られ、道床の部分が整備されています。白い色の機械は、はぎ取ったアスファルトを吸い込んでしまう機械です。
 写真右 忠節橋北の斜面にそろった機械群。アスファルトをはぎ取って改修するマシン、アスファルトを敷き詰める機械、敷き固める機械などなど。
   


 雪、ポイント                                           目次へ

 雪が降れば、雪を除くことをはじめとしてやっかいな作業が生じます。これは道路も鉄道も同じですが、ちょっと鉄道らしい特色もあります。

(写真をクリックしてください)
雪の美濃北方駅 ポイントのランプ

 駅員さんから聞いた話です。

「雪が降ると駅のポイントの所は、火が灯されますね。」

駅員

「ええ、凍結防止の石油ランプです。駅員がいるところはいいんですが、揖斐線の場合は、尻毛・美濃北方・政田とすれ違いのポイントがある駅はいずれも無人駅ですから、ランプの火を灯しにいかなければならないわけですよ。」

「本線とかは、こんな原始的ではないんでしょうね。」

駅員

「もちろん、たとえば、名古屋本線の岐南駅は無人駅でポイントがありますが、新岐阜(名鉄岐阜)駅からスイッチ一つで電熱器が作動して、雪を解かす仕組みです。ずいぶん熱い電熱器で、目玉焼きが焼けるとかいう話です。
 揖斐線のは、油が5時間しかもたない石油ランプだから、終電の後、始発の前と油の補充に行かなきゃならんのですよ。」

「それって、自動車で行くんですか?」

駅員

「え、え??」

 これは、我ながら間抜けな質問でした。電車会社の人が何で自動車を使う必要があるのでしょう。

駅員

「もちろん、電車で行きますよ。」

「夜中に勝手に電車なんか走らせていいんですか?」

駅員

「勝手に、電車走らすって、別に遊びじゃないんだからいいですよ。保守のための電車の運行はかまいません。ハイセツも重要な役目です。」

「ハイセツ?それって何ですか?」

駅員

「雪をどける、排雪、です。道路と違って線路は電車が走らない限り雪はどけられないから、雪がたくさん降る夜は排雪は大変な仕事なんです。谷汲線が廃線となる前は、そりゃ−大雪の時は苦労しました。黒野から谷汲へ向かって行くに連れて雪が深くなって、へたをすると、電車が雪の上に乗り上げそうになることもあったなー。」


 谷汲線に続いて揖斐線と、名鉄電車の中で、最も雪の降る路線がなくなっていきます。
「排雪電車が雪に乗り上げる」なんてことは、これから以後の名鉄電車にありえるとは思いません。「伝説・神話」の世界になってしまいそうです。


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