名鉄揖斐線をテーマして取材を初めて6か月、この間に、写真を撮影したり、駅におじゃましていろいろ伺っているうちに、親しくなった駅員さんから、いろいろ面白い情報も教えてもらいました。
駅員 |
「Mさん、今度の月曜の晩、マルタイが出るんだけど、見に行ってみる?」 |
私 |
「マルタイって、あの軌道の砂利をちゃんとするやつ?」 |
駅員 |
「本線とかJRとかのは、ばかでかいけど、ここのは、そこに止まっている小さいやつ。でも、ちゃんと働く。月曜の晩は、確か政田駅の近くへ出動するはず。」 |
マルタイというのは、正式名称マルチプルタイタンパーといいます。
簡単に言うと、線路の保守をする機械です。
普通の線路というのはご存じのように、レールの下に枕木があって、その下にバラストと呼ばれる一つの大きさ4センチほどの砕石が、厚さおよそ20センチから40センチほど敷き詰められています。(通過する車両の本数と重量によって異なります。)このバラスト(道床とも呼ばれます)は、地面とレールとの間の緩衝材の役目をもち、レールの座りをよくするとともに振動や騒音を和らげるクッションの役目を果たします。
しかし、重い電車が何回も走ると、電車の重みによってバラストのバランスが崩れ、レールが不均等に沈下したりするなど不都合が生じ、安定した走行ができなくなってしまいます。
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鉄道のことをあまり知らない方のために、もう少しわかりやすく説明します。
たとえば、レールと枕木を地面の土の上に直に敷くと、通過する車両とレールの重みがかかる枕木の部分のみが、土の中に沈んでいってしまいます。
枕木と地面の間にバラストがあるとどうなるか?
バラスト(縮めてバラスともいいます。)は、河原に普通にある砂利とは違って、正確には砕石です。つまり、大きな岩を砕いたもので、角張っています。一般の砂利のように角が丸いものではないのです。
なぜ角張っていないといけないのか?
角張っていると、砕石どうしが互いにがっちり組み合って、下方向のみならず斜め方向にも力を伝えてくれます。つまり、車両とレールの重みをバラストが敷き詰められている部分(道床)全体に分散させてくれるわけです。
したがって、レールと枕木部分のみが沈下するということがなくなります。
しかし、よい状態のバラスト(道床)であるためには、4センチほどの大きさを中心に、2〜6センチぐらいの砕石が微妙にまじりあって、重量をうまく分散させてくれる必要があります。
しかし、最初は理想的な状態でも、電車が何百回も走るにつれ、バラストのバランスが崩れ、少しずつ沈下が起こってしまいます。 |
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【2005年7月31日説明追加】
『朝日新聞』2005年7月31日日曜版「be on Sunday」
「4もっとサイエンス 線路の下にはなぜ砂利が」などを参考にしました。 |
それを修正し、線路下のバラストとの線路そのもののバランスを回復する機械がこのマルタイです。通常は駅の車庫等にいますが、夜になると、ディーゼルエンジンをうならせて線路上をゆっくり作業現場まで走っていきます。
現場では、自分の腹の下からツメのようなものを出して、線路と枕木を持ち上げ、バラストを掘り返し、付き固めて、線路とバラストのバランスを修復します。
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