「揖斐線廃線物語」が、ずいぶんと脱線してしまって、名古屋本線建設物語となってしまいました。
ここらで、話題を揖斐線につなげなければなりません。
ここでは、要するに、名古屋本線がJR東海道線とのスピード競争の点で、非常に不利な立場にあり、経営的に苦しい状況にあるということを理解していただければ幸いです。
現在の名鉄の鉄道部門の輸送人員増加・増益の期待を担っているのは、2005年に開業する常滑線から中部国際空港に乗り入れる中部国際空港線と、名古屋市内の地下鉄との相互乗り入れです。
前者は、空港開設に伴うもので、新しい特急車両2000系の投入もあって、今の「旬」の話題です。
後者の方、地下鉄との相互乗り入れは、地味ですが、名鉄としては、非常に期待している部分です。
地下鉄との相互乗り入れは、首都圏や他の地域では多くの路線で行われていますが、名古屋市営地下鉄と名鉄とのそれは、2004年11月現在、まだ、3例あるのみです。
名鉄路線と名古屋市営地下鉄線との相互乗り入れ
日 時 |
内 容 |
1979(昭和54)年7月 |
豊田線梅坪−赤池開通。赤池で名古屋地下鉄鶴舞線と相互乗り入れ運転開始。 |
1993(平成5)年8月 |
犬山線上小田井駅で地下鉄鶴舞線との相互乗り入れ運転開始。犬山線−地下鉄鶴舞線−豊田線が接続。 |
2003(平成15)年3月 |
小牧線小牧駅と地下鉄名城線平安通駅を結ぶ上飯田連絡線が開通。小牧線から名城線への乗り入れ開始。 |
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人口増加地域である、愛知県犬山、岐阜県可児・各務原と名古屋都心を結んだ1993年の上小田井駅からの乗り入れの意義について、『名古屋鉄道百年史』は次のように表現しています。
※前掲書P733
「相互直通の意義
この相互直通運転による新しい運行系統は会社100年の歴史を通じても、画期的な営業形態の変革である。それは第1に市内交通と郊外交通との融合であり、相互直通の形式ではあるが、実質的には名古屋市交通局と会社による交通機関の新しいシステムの創造ともいうべきものである。第2には名古屋市内中心部をほぼ貫通する交通ルートの設定である。従来会社の名古屋本線・JR東海道本線が同じく名古屋市を南北に貫通しているが、この3号線相互直通はより一層都心を経由するため、はるかに利便度が高い。第3には犬山線・新名古屋駅・地下鉄名古屋駅の混雑緩和の効果が非常に大きい。
市内地下鉄を媒介とする相互直通運転は国内で数多く実施されているが、これらはすべて都市の外周鉄道の経営主体が別個であり、三者相互乗入れとなっている。
名古屋の場合は実施が東西に立ち遅れているように見えるが、市内乗入れの双方向がいずれも名古屋鉄道の路線であり二者相互間である。東西に比較して、乗車券・運賃・出改札などの面でも乗客にも鉄道にも利便は著しい。」
同書では、このあとのくだりで、「きびしいJRとの競争下にある名古屋本線に比較して、犬山線・豊田線は将来性豊かな有望路線であり、この両線が名古屋都心を貫通する効果は正に「画龍点睛」というべきで、100周年を迎える会社にふさわしい、究極の営業形態と見ることができる。」としている。
そして、この画期的な輸送形態の創設を「名鉄ルネッサンス」と持ち上げています。
2003年度の名鉄の総輸送人員はそれまでの減少からわずかながら増加に転じ、営業収益は前年度比+0.3%となりました。この原因について、名鉄営業概要は「平成15年3月に開業した上飯田連絡線の開業効果もあり」と2003年3月の小牧線からの地下鉄名城線乗り入れを高く評価しています。
※名古屋鉄道企業情報「営業概要・成績」http://www.meitetsu.co.jp/profile/eigyo/main.html/
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