甲子園には勝利の女神がいて、その女神がほんの少しいたずらをしたとしか思えないプレーが、時々起きます。
ちょっとした違いで、信じられないようなファインプレーが生まれ、また、逆に選手にとっては奈落の底に突き落とされような悲劇的な結果が待ち受けています。
あの桑田真澄氏が興味深い「野球論」を提唱しています。
桑田氏と言えば、高校時代はPL学園の投手として、甲子園通算20勝3敗(夏・春・夏・春・夏と5回出場して、2回は優勝)の「不滅の成績」を挙げており、プロ野球でも、読売巨人軍に在籍し、通算173勝を挙げた大投手です。
氏は、社会人枠で入学した早稲田大学大学院スポーツ科学研究科での研究によって、高校野球や野球のあり方についていくつかの書物を書いています。
基本は古い「野球道」に変わる、新しい「スポーツマンシップ」の提唱です。
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1 |
精神の鍛錬 例 「水は飲まない」
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絶対服従 例 監督の指示は絶対
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「練習量」の重視 例 長時間の練習への絶対的な信奉
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心の調和「バランス」 野球・勉強・遊びでの精神鍛錬 自律精神の修養 バランスのとれた人間へ
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尊重「リスぺクト」 指導者・選手相互のリスペクト 審判や相手選手へのリスペクト 自分へのリスペクト
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練習の質の重視「サイエンス」 効率的・合理的な練習 最新のスポーツ医学の活用 失敗の奨励
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※参考文献3 桑田真澄・平田竹男著『新・野球を学問する』(新潮文庫 2013年)P74・P107
※参考文献4 桑田真澄・佐山和夫著『野球道』(ちくま新書 2011年)P65 そして、桑田氏は、そういう理論の基礎に、練習や掃除などにおける日々の献身的な努力(氏は「努力の楽しさへの気づき」と表現)や、道具に対する感謝の気持ちを提唱しています。誰に見せるのではなく、自分の未来のために行う小さな努力の継続です。そこには、スター選手というイメージから私たちが勝手に誤解する、「わがまま」「横柄」な存在とは対照的な、「謙虚さ」を土台とした深い人間性が感じられます。
※参考文献5 桑田真澄著『心の野球』(幻冬舎 2010年)P17・38
私は、この桑田氏の思考に、自分の努力だけではどうしようもない、野球の勝負のあやや運命のはかなさを熟知しているからこその深みを感じます。 |