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 043 夏雑感1 高校野球について思うこと1 −次は全国制覇−

 今年も夏本番となりました。
 日本の夏の定番といえば、お盆・終戦記念と平和への願い、そして、甲子園の高校野球だと思っています。その3つ目の高校野球に、この4月から、教師として関わっています。
 高校野球に関わるのは自分の人生で3度目のことです。

 
1度目は、なんと、自分が高校生の時、野球部に入っていたのです。といっても、普通の硬式野球部ではなく、軟式野球部です。私の通っていた学校は、岐阜県内でも珍しく硬式野球部と軟式野球部の両方がある学校でしたが、その軟式野球部の方に所属していました。もっとも、入学当初はサッカー部に入部し、そこで挫折して、1年生の9月に転部して3年生の8月までやりましたから、正味2年間の軟式野球部員でした。
 お世辞にもうまい選手とは言えず、捕手をやっていましたが、本塁から2塁までボールがやっと届く程度の弱肩でした。打撃は2年間で65打数13安打、打率2割ちょうど低さでした。しかし、通算13安打で打点も13あり、つまり、その勝負強さから4番を任されていました。いや正確に言えば、そんな選手が4番をやらざるを得ないようなチームだったというわけです。監督の先生(この人は、のちに私たち夫婦の仲人をやっていただく恩人となりました)も、「きみらのは、野球とは言えん」と半分あきらめ顔でした。クラスの友人からは、「公式野球部」「難式野球部」と陰口をたたかれました。
 それでも、高校生の特権で、ちゃんと生徒会から予算をもらい、練習場所も確保し、自分たちで練習メニューを考えて、しっかり練習はしていました。岐阜地区に自分たちも含めて高校軟式野球部が6チームがありましたが、我がチームは弱小とはいえ、それぞれの大会で最下位だったり、1勝もできなかったことは一度もありませんでした。知恵を持って技術や体力の不利を補っていたわけです。

 2度目は、自分が初任教師として赴任した学校で、野球部副顧問になった時です。野球部指導歴20数年のベテランの先生のアシスタントをやりました。監督・部長の次の副部長です。自分の軟式野球部経験を買われての顧問就任でしたが、上述のように選手としての実績はたいしたことありませんでしたから、初歩からの勉強になりました。
 ノック一つにしても、遠くへとばす外野ノックやキャッチャーフライを打ち上げるには苦労しました。基本的には、新任の足手まとい顧問でした。
 この学校も進学校でしたので、野球部の成績はぼちぼちでしたが、2年目に1年生に有力投手が入部し、上級生の奮闘とうまくかみあってチームに勢いが付き、その時(1988(昭和53)年)の夏の予選は、準決勝まで進出しました。この時は本当にはらはらどきどきしました。あと2勝で甲子園というところまで来ると、「もし勝ってしまって代表になったらどうしよう」と考えざるを得なくなります。(^.^)
 幸か不幸か準決勝で5−6で惜敗し、その夏も無事?に終わりました。

 それ以降は、長い間、高校野球といえば、ただ自分の所属する学校を応援するという状況が続きました。


 写真43−01・02 全国高等学校定時制・通信制野球選手権大会 (撮影日 08/08/13)
 高校野球といえば甲子園が代名詞となっていますが、それ以外の晴れの舞台もあります。
 
全日制の全国軟式野球は、兵庫県明石市の明石公園野球場で、平成25年8月25日から29日まで開催されます。
 また、以前に萩本欽一氏によってTVメディアに取り上げられ、「もう一つの甲子園」として有名になった、
定時制・通信制高等学校軟式野球全国大会は、平成25年8月13日から17日に開催されます。こちらは、決勝戦は神宮球場で開催されますが、1・2回戦は、東京都内各球場で行われます。
 上の写真は、平成20年度の大会で、岐阜県代表の華陽フロンティア高校が惜敗した場面です。場所は大田区の東京貨物駅の西にある太田グリーンスタジアムです。
 普通の硬式野球のレベルの高い大会も見応えはありますが、いろいろな事情や困難をもった年齢にも幅のある「若者」が、いろいろな苦難を乗り越えてチームプレイを行うというのも、感動的なドラマを生みます。


  3度目の今回は、高校野球連盟の事務方の仕事です。試合や大会の運営はもちろん、指導体制や今後の高校野球の進む方向全般についての総括的な仕事に関わることになりました。

 夏の選手権予選を前に、岐阜県議会で、高校野球のことが話題になりました。
 6月に開催された夏の議会で、関市選出の酒向薫議員が、ここまで県教委が予算をかけてやってきた高校野球に関する「
日本一づくり特別強化事業」の10年間の総括と今後の強化策について質問し、教育長に答弁を求めたからです。
 それに答えた松川禮子教育長は、「この事業で県や競技団体、学校などとの連携が図られ、県独自の強化体制が構築されてきた。
高校野球は今後10年間のうちに甲子園で優勝することが目標。さらなる投手力強化のため、経験豊富で優秀な投手コーチを県外から招きたい。」と答弁しました。
 ※参考文献1 『岐阜新聞』2013(平成25)年6月21日朝刊

 このやりとりを理解していただくためには、教育長答弁にある「日本一づくり特別強化事業」が、いつの時点でどういうねらいで始められたかについて説明しなければなりません。
 この事業は、2003(平成15)年度から始められ、この2013年3月までに最初の10年が終了し、今年度4月から第2期の10年に入った事業です。
 なぜ、県の教育委員会によって、この事業が始められたのか?その理由は、次のとおり事業がはじまる前の10年間は、岐阜県の高校野球は、非常に低迷していたからです。

 下の表1をご覧ください。



 事業がはじまる2003年4月以前の10年間の岐阜県勢の成績は、夏は4勝10敗春は1勝3敗合計5勝13敗というひどい状況でした。
 つまり、春の選抜大会は、前年の秋期の東海大会(岐阜・愛知・静岡・三重の4県代表チームの大会)の成績が芳しくなく、10年間で僅か3チームしか出場ができませんでした。しかもその3チームのうち、最後の年の2003年春の中京高校がやっと1勝を挙げたのみでした。なおこの勝利は、岐阜県勢の選抜大会における20年ぶりの勝利(1983年の岐阜第一の勝利以来)でした。1984年から1993年の10年間には、岐阜県勢は春の選抜大会にたった1度しか出場できませんでした。(1989年の県岐阜商、この時も初戦敗北)春の選抜大会においては、とりわけ弱い岐阜県勢だったのです。
 夏の選手権はといえば、これは各県1チーム出場できますから毎年出場はしていました。しかし、10年間の成績は4勝10敗で、6大会は初戦敗退、勝っても1勝がやっとでした。
 春夏いずれにしても、甲子園大会の組み合わせ抽選会があると、岐阜県勢と対戦することが決まると、相手校は密かに「ラッキー」といったとかいう噂が伝わっていました。

 このような「低迷」ぶりから脱出すべく、2003年度から日本一づくり特別強化事業が始められたというわけです。事業名は、「日本一づくり」となっていますが、最初の10年の目標は、とりあえず「
常時選抜大会出場」でした。その前の20年間で、選抜には4回しか出場していませんから、大会で活躍より、まず出場ということが目標だったのです。無理もありません。
 この事業の具体的な内容として、社会人野球の優れた監督による高校生への直接指導、中学校の優秀な選抜選手を集めた強化合宿、スポーツ科学トレーニングセンターにおけるトレーニング支援、東海地区の他県のチームに対するVTR撮影などによる科学的分析などが実施され、次のように歴然たる成果につながりました。
  ※参考文献2 『毎日新聞』2013(平成25)年6月21日朝刊

 次の表2、この10年間の甲子園での成績をご覧ください。




 事業がはじまってからし3年間は、大きな成果は上がりませんでした。
 しかし、
2006年の春の選抜大会に岐阜城北高校がベスト4入りしてから、一気に成果が出始めました。通算すると、この10年で、春の大会13勝6敗夏の大会8勝10敗合計21勝16敗となりました。
 また、春夏合わせて、準優勝1回、ベスト4が3回、ベスト8が2回と、「先の10年」に比べれば、大きな飛躍を遂げることができました。
 
 これを踏まえて、
「次の10年」の目標が、「全国制覇」となったというわけです。実際には、全国制覇の道はまだ遠いかもしれませんが、目標としては、「優勝パレード」を掲げておかないと、更なる飛躍は望めません。

 まずは、県予選をどこのチームが勝ち抜くかです。
 このまま順調に試合が消化されていくと、21日(日)にはベスト8が、23日(火)にはベスト4が決まり、24日(水)には、準決勝の組み合わせ抽選会が行われます。
 そして、25日(木)が準決勝、26日(金)が決勝戦です。 


 写真43−01  これは平成25年の春季県大会のひとこま         (撮影日 13/04/26)

 この大会で3位になってシード権を得た益田清風高校は、選手権大会岐阜大会でも活躍が期待されましたが、初戦の2回戦でノーシードの郡上高校に0−1で敗れました。高校野球の勝負は紙一重の差で決まります。 


 ところで、岐阜県勢が甲子園で優勝したら、どこがパレードを主催するのでしょう?いろいろ嬉しい心配はつきません・・・・・・。(^.^)


 【夏雑感1 高校野球について1 参考文献一覧】
  このページ43の記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

『岐阜新聞』2013(平成25)年6月21日朝刊 

朝日新聞デジタル:高校野球「岐阜代表の試合結果」・甲子園の戦績 (選抜)・(選手権)
  (選抜) http://www.asahi.com/koshien/stats/spring/p20.html
  (選手権)http://www.asahi.com/koshien/stats/summer/p20.html

『毎日新聞』2013(平成25)年6月21日朝刊


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