一つ前へ 「教育について」のメニューへ 次へ

 040 学校で大切なこと 春雑感2 ホトトギスと個性?? −ひとりひとりを大切に−

 個性を大切にする、一人一人を大切にする。
 言うのは簡単ですが、実は難しことです。
 人は、いろいろな個性をもっていて、人によって様々です。全体としてそういう特色を持っていることは誰しもわかっていますが、現実には、他の人がどんな多様な特色であるかは、普通はわからないのです。

 同じ場面で、同じ課題があった時、人がその状況をどんなふうにとらえ、それに対してどんなふう考えるか?
 これは最も単純な個性の現れです。

 いいネタがあります、次の俳句です。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 これは、中学校でも授業の話題になっているネタですから、普通の学力の生徒は、たぶん知っています。

 この3つの句は、
信長=思い切った果断な性格=殺す、秀吉=アイデアマン=工夫する、家康=熟柿を取るように政権を握った=積極的な行動は取らず待つ、という3武将のイメージが見事に表現された俳句となっています。
 もっとも、こんな句を、ホトトギスを前に3武将がそろって詠むということはあり得ません。後世の知恵者の作り事です。
 
 この3句を紹介している最も有名な書物は、江戸時代後期の九州は平戸藩(今の長崎県)の大名、松浦静山が書いた『
甲子夜話』です。
 ※

 松浦静山は、1760年生まれで、1841年に81歳でなくなりました。1775年から1806年まで藩主をつとめ、引退後の1821年から、様々な知識を本にまとめ始め、278巻という膨大な量の書を残しました。
 ホトトギスの句は、その正編100巻ののうちの第53巻の8「「歴代の発句」にあります。
 松浦静山著中村幸彦・中野三敏校訂『甲子夜話4』(東洋文庫 1978年)P57−58

 ちなみに、ホトトギスの鳴き声をご存じない方は、次のページにあります。
  ※NHK CreativeLibrary ホトトギスhttp://www.nhk.or.jp/creative/material/81/D0002011503_00000.html


 これと同じことを、授業中に生徒全員にやってもらうと、とても面白い結果が出ます。生徒は様々な気持ちでホトトギスを自分に投影します。
 もっとも、大半の生徒は、信長・秀吉・家康の3句に洗脳されて、よく似た句になります。
 でも、いくつかの斬新なグループも登場し、お互いに読み比べると、面白い交流となります。

 まず最初は、名付けて「
やらないと怒るぞ・がんばれ系」です。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 次は、まったく視点が変わって、同情系の句です。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 優しい心根に救われます。
  
 次は、相手(ホトトギス)の
気持ちを察する系の作品です。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 そして最後は、ちょっと変わった発想の作品群、奇抜な発想系です。
 実はこの中には私の句もあります。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 私が自分の気持ちを素直に読めば、「鳴かざれば 代わりに鳴こう ホトトギス」です。
 今まで、ずいぶん代わりに鳴いて、ひどい目に遭ってきました。(^.^) 性分ですから致し方ありません。

 こんな遊びでも、人の個性・気持ちはいろいろであることがわかります。
 「鳴かざれば 僕と同じだ ホトトギス」という心境の生徒がいることを、忘れてはいけません。もちろん黙っている生徒も・・・・。


一つ前へ 「教育について」のメニューへ 次へ