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  011 保護者懇談について考える                      

 学校現場を離れた今は、保護者懇談というと、自分が学校へ出かけていって、子どもの担任と話をするというイメージになりました。妻も働いていますので、息子3人×年2or3回=6〜9回 は分担して出かけていきます。

 同業の方には説明するまでもありませんが、そうでない方のために、教師にとっての保護者懇談会の意味を説明します。
 教師にとっては、保護者懇談会はいろいろな儀式・行事の中でも、格別な意味のあるものです。それは次の理由によります。

  1. 児童生徒の親と話をする機会は、1年間にそうあるはずもなく、教師にとっても保護者にとっても、お互いに意見を交わす緊張した瞬間であること。

  2. 教師にとっては、その瞬間が、大量に集中して訪れるため、いろいろなタイプの保護者と児童生徒の組み合わせとの対応に非常に疲れる数日になること。

  3. 多くの保護者懇談は夏休み・冬休み等の長期休暇の前にあるため、教師にとっては、「これを乗り切れば・・・」という思いがあること。

 まずは、長男の小学校入学以来11年間に、担任と懇談した保護者としていろいろ感じたことを書きます。

  • 次男が4年生の時の担任は、育休教師の代理の方でしたが、見識の持ち主でした。「お父さん、懇談にいらしゃってありがとうございます。しかし、やはり小学生のうちは、お母さんの方がいいかと思います。子どもの細々としたことへの注意は、お父さんでは無理でしょう。その代わり、お父さんは、どーんとあとに控えていて、中学校や高校で頑張ってください。」

  • 次男の5年生の担任「Y君が今度初めて、学級委員になったことはご存じですね。それが決まった時、私になんていったかは、聞いておられんでしょう。」「はい、聞いていません。何と言ったのでしょう。」「『先生、これでお兄ちゃんに追いついたかな?』といったんですよ。彼の思いを伝える大事な言葉ですね。」生徒の不満の中に、兄弟・姉妹を比べるというのをよく聞いていましたから、自分の家では気を付けていました。しかし、気を付けていいることと、子どもが事実何を感じているかは、また別なのですね。

  • 挨拶のあと、「さて、この表ですが・・」といわれて、いきなり、机の上のプリントのテストの点と偏差値と順位の付け方を解説されました。受験で受かる受からないと言うのも大事ですが、自分の息子が学校で何をしているのか、どんなことを言っているのか、話してもらえる方が、嬉しい気がします。

 自分が、親として懇談を受けてみると、どうやったら親のニーズにかなうかが、多少見えて来た気がします。30代後半から私が実践してきたことを、あたらめていくつか提案します。

 その前提として、次のことを理解していなければなりません。
 教師にとっては、4〜5日間のあいだに、一度に40人近くを懇談するので、一杯話すことになり、「もううんざり」という感じがします。
 しかし、保護者にとっては、ひょっとすると年に2回の貴重な懇談の機会です。また、児童生徒にとっても、担任とあらためて話をする貴重な機会です。懇談の瞬間だけではなく、次にもつながるような時間にすべきではないでしょうか。

  1. 常日頃から「カルテ」のようなものを作っておいて、生徒の情報は、もれなく集めておく。こうしないと、生徒を見る目も持てないし、曖昧な記憶とフィーリングだけで意味のない懇談をしてしまう。

  2. 生徒の生き方、生活態度を示すようなエピソードを必ず用意できるようにしておく。

  3. 懇談に入るに、事前にひとりひとりに話す内容をメモしておいた上で、さらに、保護者や本人がその場で話したり、担任としてアドバイスしたり、生徒と約束したりさせたりしたことを、もれなくメモしておく。そのためには、面倒であるけれど、その日のうちに、「カルテ」に記入しなければならない。

  4. 初めての懇談では、親子関係にとくに留意し、会話が成立しているかどうかなど、家庭での保護者と生徒との位置づけに注意を払う。いわゆる生徒指導上問題のある生徒は、まず、親子関係のもつれから解きほぐさなければならない。

  5. 保護者にとって第一子の場合と、そうでない場合は、親の知識の多寡や、上の兄弟との違いなど、気を遣わなければならないことが多い。事前に調べておかなければならない。

  6. 高校の場合、3年生ともなると、やはり大学進学や就職のことが懇談のメインテーマなることは当たり前である。しかし、それでも、懇談のはじまりは、いきなり「プリントのテストの得点の見方」等とすべきではない。生徒の日頃の様子、将来の希望等、大きな話題から入って、保護者の反応を確かめながら、細かい話題に進むべきである。

  7. 保護者を交えた懇談は1年に2・3度であるが、生徒との面談はいつでもできる。課題が多い生徒、緊急にケアが必要な生徒は、保護者との懇談を契機として、次の生徒との面談につなげていかなければならない。

 今の時期は、懇談が終われば、冬休みです。ひとつの区切りをつける「意味のある儀式」として、精一杯やれば、忘年会の酒もまた美味いでしょう。 


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