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 005 イギリスの教育事情と日本  その1                 

 先週、岐阜県世界青年友の会が主催するイベント、「青少年サミット PartU」に参加させていただきました。
 岐阜県世界青年友の会(略称GWY)は、青年の国際交流を促進するボランティア団体で、先日亡くなった小倉大垣市長の熱心な後援などによって、1982年から大垣市を中心に活動続けておられます。
 
 会長は元岐阜大学学長の加藤晃氏、実際の運営を進めておられるのは、
事務局長の臼井千里さんです。大垣経済界やJICAなどから資金的な援助は得ておられますが、臼井さん・村雲事務局次長をはじめ、運営を支えているのは、ボランティアの人たちです。
 
 私は、昨年の7月、GWYの企画したASEANの青年グループの
岐阜訪問の際に支援の依頼を受けたのが縁で、この活動の「支援団」の一員に加わりました。右の写真は、ASEAN青年グループが岐阜総合学園高等学校を訪問したときのもので、一番右の素敵な笑顔の方が臼井事務局長です。
 
 今回は、イギリスから二人の教育関係者、公立の中高一貫教育校の校長であるレイ・スレイド氏とケント州の前行政官マーガレット・メッドランド女史を招いての、交流会を計画されました。
 私は、14日(木)の県庁での教育行政説明、15日(金)の専門家会議、そしてメインである16日(土)の青少年サミットPartUと三日連続して会合に参加しました。そのうち前の二日間は、イギリスと日本の教育の違いやそこから浮かび上がる日本の教育の課題について、充分な議論をすることができました。その中から特に話のネタになることを一つ二つ書いてみます。

 まず、イギリスでは、学校長が非常に大きな権限を持っていることに学校運営の特色があります。これは、サッチャー政権時代から始まりました。
 公立学校の校長は、市町村の行政当局から任命され、生徒の数に応じた学校運営資金を任されます。その権限と費用の中には、カリキュラムの決定から教員の採用までが含まれています。金額が一定であるため、多くの教員をいい給料で雇おうとすれば、図書費・管理費などを抑えることになります。
 イギリスでは一般に若者の中に教員のなり手が少なく(慢性的教員不足)、ロンドンに近いスレイド氏の学校では、教員の募集に四苦八苦しているとのことでした。日本では考えられないことです。岐阜県では採用試験の倍率が20倍近くあるとお話しすると、それこそ信じられないということでした。
 
 イギリスの教員不足の原因は色々あります。教員そのものの社会的な地位がそれほど高くないこと、若者には他にも魅力的な職業が多々あること、日本と同様いろいろな責任を負わされる割には給料はそれほどは高くないこと、その結果として一度教員になったとしても容易にやめてしまうことなどなど。
 日本側の説明でスレイド氏が驚いたことは、公務員・教員の世界が、明瞭な終身雇用・年功序列型賃金になっていることでした。「きちんとした評価もなく、しかも毎年給料が上がっていく!!!」という点は、英国の二人を驚かせました。
 スレイド氏曰く、「教員が退職までやめない原因が分かりました。教員は居心地がいいんですね」。

 イギリスでは、もしかりに採用さえれたとしても、さほどの功績もないのに給料があがるのは7年目までだそうです。それからは、校長が功績を認めなければ、ワンランク上の給料へは上がることはできません。
 では、どうやって、教員を評価するのでしょう。また、校長自身はどのような形で評価を受けるのでしょう。
 続きは「その2」で説明します。 
 


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