2014-01
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151 2014年01月03日(金) 2014年は午年です どんな年になるのでしょうか?    

 本来なら新年の祝辞を申し上げるところですが、沖縄で頑張っていた私の大切な元生徒A子さん(→「日記2012年4月1日:唯一の生徒」が、19歳で亡くなるという訃報に接したため、祝辞は失礼をさせていただきます。

 昨年は本物のヘビの写真を掲載して一部から顰蹙を買ってしまいましたが、今年の干支は馬(午)ですから、今回は馬の写真です。馬なら大丈夫ですね。


 写真−01 友人のハンソン家の馬。草原の中で気持ちよさそうです。米国アイオワ州(撮影日 13/06/14)


 写真−02・03 その昔、馬に乗りました (撮影日 1992/09/30)

 アイオワのハンソン家にホームステイした時、彼の馬に乗る機会に恵まれました。
 それより以前にも箱根の乗馬クラブで乗ったことがありますが、素人が馬になれるのはなかなか難しいものがあります。ましてや馬を御するなど、ある程度の訓練なしでは、全く無理な話です。特に高所での運動神経が鈍い私には、そもそも馬の背中という高いところが苦手です。
 この馬は、名前は忘れてしまいましたが、ハンソン家に長くいてよく訓練されている馬であったことや、主人がそばにいたこともあって、比較的素直に私の言うことを聞いてくれました。しかし、「気持ちよく乗馬」というレベルには、ほど遠いものでした。
 


 毎年のように同じことを書いていますが、1年の初めは、各新聞の社説を読み比べてみると、これから迎える年の課題といったものが浮かび上がってきます。
 毎年やっていると、新聞社によって、取り上げる内容が異なっていたり、同じ事柄でもいろいろな視点があったりと、本当にいろいろな課題を把握することができます。
 今年に限っては、各新聞社とも、話題は比較的狭い事柄に収束していました。
 その課題とは、ずばり安倍内閣の政治と経済についてです。それだけ圧倒的な話題性があったということでしょう。
 以下、各新聞の社説を引用しながら、自分なりに思っていることをまとめてみました。引用した新聞は次の6紙です。右は2014(平成26)年1月1日の社説のタイトルです。

  引用新聞名 社 説 の タ イ ト ル 

読売新聞

日本浮上への総力を結集せよ

 

朝日新聞

政治と市民 ―にぎやかな民主主義に

  毎日新聞 民主主義という木 枝葉を豊かに茂らそう 
 

日本経済新聞 

変わる世界に長期の国家戦略を 

 

中日新聞 

人間中心の国づくりへ 年のはじめに考える日 

 

岐阜新聞 

新年を迎えて 平和憲法に試練が訪れる 

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 物事を考え、それを実行していく場合、政治の問題にせよ、個人の問題にせよ、理念性・観念性と現実性の整合やバランスに配慮しなければなりません。英語の単語なら、ideality と reality です。
 企業においても会社のCI(コーポレイト アイデンティティ)は利益を上げることと並んで重要でしょうし、私たちの生きている教育の分野では、利益という尺度がないぶん、より以上に、ideality を掲げて、うまく reality を把握しつつその改善に努めていかなければなりません。

 現在の安倍内閣では、これまでの政権の中では際だって、reality よりも ideality が注目される内閣となっています。
 まず、経済分野の
アベノミクスです。
 これについては、リーマンショックやそれ以前からの日本経済の低迷の中で、「あきらめ」以外は感じることができなかった国民に、「
ひょっとしたら」という明るい気持ちを抱かせていること自体、大きな成功であり、これまでになかった成果ということができるでしょう。
 課題は、
日経の指摘するとおり次の点でしょう。
「アベノミクスは経済から入って、国力を取り戻すための短期の国家再生プランである。金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢という政策手段を通じてデフレから脱却し、「日本再興」をめざす方向性はまちがっていない。 カギをにぎるのは成長戦略である。日本を変える突破口にしなければならないのだが、力不足で思うように進んでいない。それを阻むのが反規制改革・反負担分配・反変革の「3本の釘(くぎ)」である。」
 とはいえ、
読売の次の指摘も重要です。
「アベノミクスは、3本の矢のうち、大胆な金融緩和と機動的な財政出動の2本の矢によって、日本の景気を持ち直し、株高・円安も実現するなど、一定の成果を上げている。日本の国際社会での存在感が増したことも確かだ。だが、日銀がデフレ克服の目標に掲げる「2%の物価上昇率」の実現への道筋は、なお不透明だ。景気を下支えする財政出動は持続力に限りがある。世論の支持も、景気回復への期待が先行し、必ずしも生活向上を実感できたからではない。 今年は、アベノミクスの真価が問われる。 首相の決断によって、4月に消費税率が5%から8%に引き上げられる。 3月までは、耐久消費財などの「駆け込み需要」もあって、景気は回復基調で推移するだろう。だが、消費が冷え込む「反動減」が予想される4月以降は、景気が腰折れしかねない。」
 もっというなら、国民の目にわかりやすい「成長」を、実現してほしいものです。
 つまり、雇用や所得の増加ですね。私たち公務員も、一体全体、この数年間に昔なら受け取っていた給与のうち、どれだけをもらいそこなったことでしょう。
 「
ひょっとしたら」と思っていますが、これが、「やはり思っただけで現実は何も無し」で終わってしまった時の失望感は大きいと思います。 

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 経済より重要な問題は、政治の課題です。
 安倍首相の ideality に基づく、積極的な舵取りによって、この日本はどこへ行くのでしょう?

 
中日は指摘します。
「グローバリゼーションと中国の大国化に「強い国」での対抗を鮮明にした政権。しかし、
経済や軍事でなく人間を大切にする国に未来と希望があります。株価を上昇させ、企業に巨額の内部留保をもたらしたアベノミクスへの自負と陶酔からでしょう、安倍晋三首相は大胆でした。就任当初の現実主義は消え、軍事力増強の政策にためらいは感じられませんでした。
 多くの国民の懸念をふり払って特定秘密保護法を強行成立させた後は、初の国家安全保障戦略と新防衛大綱、中期防衛力整備計画の閣議決定が続きました。
 強い国への疑心暗鬼
  今後十年の外交、防衛の基本方針を示す安保戦略は、日米同盟を基軸にした「積極的平和主義」を打ち出し、戦後の防衛政策の転換をはかりました。先の戦争への反省から専守防衛に徹する平和国家が国是で国際貢献も非軍事でしたが、積極的平和主義は国際的紛争への積極的介入を意図し、軍事力行使が含意されています。(中略)
 強い国志向の日本を世界はどうみているか。昨年暮れの安倍首相の靖国参拝への反応が象徴的。中国、韓国が激しく非難したのはもちろん、ロシア、欧州連合(EU)、同盟国の米国までが「失望した」と異例の声明発表で応じました。戦後積み上げてきた平和国家日本への「尊敬と高い評価」は崩れかかっているようです。」

 弱い国・強い国の尺度はどこにあるのでしょうか?
 安倍首相の政策より、
中日の指摘する、「人間を大切にする国に未来と希望がある」のフレーズの方が、魅力を感じます。

 
毎日は、別の表現で提案しています。
「だが、強い国や社会とは、どんな姿を言うのだろうか。指導者が、強さを誇示する社会なのか。
 違う、と私たちは考える。強い国とは、異論を排除せず、多様な価値観を包み込む、ぶあつい民主社会のことである。「寛容で自由な空気」こそ、貫く棒でありたい。
 自由で寛容な空気こそ
 慌ただしい師走だった。特定秘密保護法、初の国家安保戦略、そして靖国参拝。政権与党と安倍首相の、力の政治がそこにあった。
 政権に、権力の源泉の「数」を与えたのは、私たち国民だ。
 その代表者である政治家が、多数で法案を通す。選挙と議会の多数決があって、民主主義は成りたつ。それを否定する人はいない。
 ただし、「反対するのなら次の選挙で落とせばいい」などと政治家が開き直ったり、多数決に異を唱えるのは少数者の横暴だ、といった主張がまかり通ったりするのは、民主主義のはき違えではないか。
 民主主義とは、納得と合意を求める手続きだ。いつでも、誰でも、自由に意見を言える国。少数意見が、権柄ずくの政治に押しつぶされない国。それを大事にするのが、民主主義のまっとうさ、である。  いまの社会は、どうか。  あらゆる政策を、賛成する側と反対する側に分け、多様な世論を「味方か」「敵か」に二分する政治。対話より対決、説得より論破が、はびこってはいないだろうか。  そんな象徴が、靖国だ。」

 そして、憲法です。
 社会科・地歴公民科の教師としての私のこれまでの36年9ヶ月の活動の信念は、なんと言っても「平和憲法の遵守」にありました。
岐阜が指摘しています。
「多くの人はアベノミクスの恩恵を実感できないまま、消費税増税を迎えることになりそうだ。さらに環太平洋連携協定(TPP)交渉や原発再稼働でも、決断の時が迫る。目の前には難問があふれている。ただ、そんな中、どうしても頭から離れない問題が一つある。
 憲法のことだ。
 昨年12月、特定秘密保護法が成立した。メディアや市民団体、弁護士はもちろん、作家や科学者、法学者と、ありとあらゆる人々が反対と疑問の声を上げた。
 しかし政府、 与党は一切耳を貸さずに、野党の追及も振り切り「数の力」に物を言わせて押し切った。
 国民の「知る権利」や報道・取材の自由は厳しい状況に置かれることになった。振り返ってみると、これが政権を手にして以来、首相が抑えてきた「安倍カラー」を前面に押し出す大きな転換点だった。続いて閣議決定した国家安全保障戦略や新防衛大綱では「専守防衛」から「積極的平和主義」にかじを切った。
 今年は「戦後レジームからの脱却」を加速させ、武器輸出三原則の大幅見直しや国際貢献を強く打ち出す新たな原則策定を目指す。加えて集団的自衛権行使の解釈変更に踏み出すとみられており、憲法に試練が訪れる。」

 私は、あと1年3か月で定年を迎えます。
 最後は、次代の教師や若者へ、自信を持ってバトンタッチできるような状況にあることを願いたいものです。
 
朝日の提案です。
「豪シドニー大学のジョン・キーン教授も、行政を監視する市民のネットワークや組織を重視する。最近邦訳が出た「デモクラシーの生と死」という著書で、それを「モニタリング民主主義」と呼んでいる。年末の訪日時の講演でも、地球温暖化や少数民族、核軍縮などグローバルな課題で市民レベルの運動が果たした役割を強調した。
  いずれも投票日だけの「有権者」ではなく、
日常的に「主権者」としてふるまうことを再評価する考え方ともいえる。
 そんな活動はもうあちこちに広がっている。新聞やテレビが十分に伝えていないだけだと批判をいただきそうだ。確かに、メディアの視線は選挙や政党に偏りがちだ。私たち論説委員も視野を広げる必要を痛感する。
 場合によってはこれから2年半、国政選挙はない。それを「選挙での多数派」に黙ってついていく期間にはできない。異議申し立てを「雑音」扱いさせるわけにもいかない。」

 普通科の生徒諸君にいつも言っています。
「レベルが高く幅の広い教養を身につけなさい」と。
 その目的のひとつは、普通の市民として、国の行く末に関わるような大きな問題を議論したり、自分の態度を示すことにあると思います。
 アメリカとの同盟はどうしますか、どうやって平和を実現しますか、領土問題はどうしますか、靖国参拝はどうしますか、原子力発電所はどうしますか・・・。
 こんな問題にもまじめに向き合える生徒を育てて行けたらと思っています。

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 昨年、2013年の1月1日の日記には、1年の目標を宣言しました。
  1 江戸幕末の授業ネタの特集
  2 新任の地歴公民科の先生へのメッセージ
  3 福島原発の立ち入り規制エリア直外の訪問
 
 恥ずかしながら、どれも実現しませんでした。(-.-)
 今年こそ頑張ります。

 最後に、左の写真は、我が家の近くのコンビニ、ココストアで見つけた新発売の馬さん型クリームパンです。
 愛嬌があってておいしいパンでした。
 
 今年がいい年でありますように。
 
 

 写真−04 馬形クリームパン(撮影日 24/01/01)

 【参考文献一覧】
  このページに引用した各新聞の社説は、次のURLより複写しました。

読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/ 

朝日新聞 http://www.asahi.com/

毎日新聞 http://mainichi.jp/

日本経済新聞 http://www.nikkei.com/news/editorial/

  中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/ 
  岐阜新聞 http://www.gifu-np.co.jp/  

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