2008-06
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108 2008年09月28 日(日) 鼠径ヘルニア入院・手術体験記その4 手術後      

5 どこをどれだけ切ったのか 
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 こげな気色の悪い写真を見せるのは、少々はばかりますが、究極のレポートです。
 どこをどれだけ切ったのかの実写が右の写真です。自分でデジカメを持って撮影しました。
 パジャマの写真をクリックするとパジャマを脱いだ写真が現れます。見たくない人は飛ばしてください。あくまでクリックするのは、あなたの責任です。(^_^) 

 この写真は、手術後3日目、点滴が終わって、初めてシャワーを浴びることができるという時に、傷口のガーゼを取って、水に濡れてもよいように、O看護師に透明のビニルテープを貼ってもらった時のものです。

 右大腿の付け根に、約7cmの「切腹」跡、これが鼠径ヘルニアの手術部位です。そこに、まるでホチキスの針の様なものが付いています。最近は傷口を縫合するのに昔のような糸ではなく、
チタン合金製のステープルを使います。

 私の場合、8個のステープルが打たれています。このステープルは、日本語の医学用語では、「」と書き「こう」と発音します。つまり、「手かぎ」の「かぎ」です。したがって、旧来の傷口縫合の糸を抜く、「抜糸」という用語は言い換えが必要です。最近では、「抜鈎」(ばっこう)といわれます。

 抜糸をするというのは傷が治る代名詞のようなものですからおめでたいことなのですが、本当に手術跡から糸を抜くのは、大変痛い措置でした。ところが、この「抜鈎」はほとんど痛くはありません。U医師から、鈎の文字の説明や何やらを聞いているうちに、あっとう間に済んでしまいました。
 このステープルは、外部の傷口の縫合だけではなく、内部の、例えば、腸と腸との吻合(ふんごう)にも使われています。早くて、痛くなくて安心という点ではよいのでしょうが、昔のような「外科医の技術」(職人技) というのは、だんだん必要なくなっていくのかもしれません。 


6 手術後の回復:当日 
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手術当日
 14:35
、病室到着。左足は僅かに感覚有り。右足は、前ページで説明した「足を曲げて持ち上げている感覚」があって、実に居心地悪い状況です。
O看護 「お帰りなさい。気分はどうですか。」

「無事終了です。ところで、腹減った。朝から何も食べていない。夕食は食べられる?」

O看護

「えっ、先生に聞いてみます。」

「今は痛くも何ともない。とりあえず麻酔が切れるまでは、このまま静養だね。」

O看護

「そのとおりです。夜になったら、感覚が戻ってきます。
 でも、今晩は万一のことを考えて、ベッドから離れずにトイレにも行かないでください。ここに溲瓶を置いておきますから、使ってください。歩き回っちゃ、ダメですよ。それから、夜中に痛みが来たら、夜勤の看護師を呼んで、痛み止めを点滴してもらってください。」

 17:45、両足の感覚はほぼ戻りました。しかし、それとは反対に、痛みが出てきました。
 18:45、妻の介添えで、夕食を全部食べました。おいしかった。
 19:05、初めての排尿。およそ200cc。他の方の体験記で、オシッコがなかなか出ずに、チューブを入れてもらったという記述がありましたが、私の場合は、ベッドの上で横になって排尿する経験もあったため、何でもなく簡単にできました。尿がたまって腹圧が上がって、傷口の痛みがだんだん激しくなってきたので、必死で排尿しました。
 実はこの時は、まだ、ペニスやその根元の感覚は戻っておらず、膀胱にお腹の筋肉で圧力をかけると、どこからともなく溲瓶に尿が出てくる、という何とも不思議な排尿でした。

 21:00、体温が37度4分となり、夜勤の看護婦さんに頼んで、氷枕を持ってきてもらいました。頭が痛い所までは行きませんでしたが、これから数時間が、熱や痛みとの戦いの時間となり、ひたすら我慢の時間となりました。
 O看護師が、痛くなったら夜勤看護師を呼んで痛み止めを請求しなさいと言ってくれましたが、それほど絶望的な痛みではなかったので、我慢することにしました。あとでレポートするためには身をもって痛みを経験しなければなりません。痛みは3種類ありました。

 傷口そのものの痛み。表皮やその下の腹膜を切除した痛みです。鼠径部の内側を大きなヤスリでごりごり擦られているような痛みです。

 腹膜を上下左右に引っ張られる痛み。別に誰かが引っ張っているわけではないのですが、そう感じるものは仕方ありません。

 そして、3つ目は、男性にしか分からない痛みです。もともと、手術した部位が、睾丸から繋がる精管が通る部分です。したがって、睾丸が上に引っ張られる感覚の痛みがあり、何とも気持ち悪いものでした。


 やせ我慢せずに看護師さんを呼べばよかったのですが、それをしなかったので、1時間ほどうつらうつらしては、2時間ほど起きるということの繰り返しとなり、手術を受けた夜らしい苦しい数時間を経験しました。最終的には、4時頃やっと深い眠りに入ることができました。
 鼠径ヘルニアの痛みは、これまで経験した痛みの中では、そうたいしたことはありません。ランキングすると、次のようになります。
 
尿管結石の痛み > 腸閉塞の痛み > 
               腰部椎間板ヘルニアの座骨神経痛の痛み > 鼠径ヘルニア手術後の痛み

 つまり、これまでの経験した痛みの中では、ベスト3外の痛みでした。「注射をうってくれー」と絶叫する様な絶望的な痛みではなかったということです。 


7 手術後の回復:手術翌日・2日目・3日目 
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手術翌日
 06:45
、目が覚めました。やりました。ちゃんとペニスが回復して、勃起しました。涙が出るほど嬉しさを感じました。(^_^)
 痛みは、次第に落ち着き、上の2と3の痛みは徐々に薄らいで行きつつありました。

 08:20、U医師が外来診察の前に様子を見に来てくれました。

U医師

「痛かったですか。」

「はい、手術の時も、昨日の夜も。十分耐えました。」

U医師

「手術部位は腫れていますか。」

「ひどく腫れています。」

U医師

「本当ですね。内出血しています。精管が通る部分は、毛細血管がびっしり通っていて、生命力がかなり強い部分です。避妊のパイプカットってありますが、上手にカットして管を曲げておかないと、後で再生して繋がってしまうという事例もあります。少しぐらいの内出血は仕方ありません。重しの砂袋を持ってきますから、寝ている時は、お腹の上に載せておいてください。」

 退院まで、以下のような状態となりました。黄色いタオルにくるまれているのが、重しの砂袋です。 


 18:00、夕食。ベッドの上で座って食べるのも4度目。やっと、座ることがつらくなくなりました。痛みは、傷口の直接の痛み以外はほとんど感じなくなりました。 

手術3日目
 08:45
、U医師の回診。明日の退院許可をもらう。本日から点滴から解放されました。
 14:00、手術以来まだ一度も便通がなかったので、腹が張ってきました。腹が張ると、その分痛みが増します。手術前に浣腸をする理由はこれです。とはいっても、便所で気張るという芸当はとてもできそうにありません。この段階でも、せき・くしゃみ・笑いは、まだできていません。くしゃみなどしようものなら、痛くて跳び上がりそうです。

 ついに、座薬を使って排便を促すことにしました。
 O看護師が、「浣腸よりは自然です。」と奨めてくれたので、やってみました。おかげでさわやかな排便ができました。 


8 退院 
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 こうして、手術3日目の午後には、手術部位が腫れていて内出血していることを除けば、概ね懸案事項は解決され、予定どおり4日目の退院が決まりました。
 最初にも書きましたが、鼠径ヘルニアの手術はそれほど難しいものではありません。しかし、やはり、「切腹」をするとなると、そう簡単ではありません。
 手術後翌日・翌々日の夕方までは、座るのもつらく、痛みもかなりのものでした。ということは、この手術法では、日帰りで帰ることができたとしても、すぐに仕事に行くことはとてもできないということになります。手術日も含めて、最低でも、2泊3日は必要です。できたら、3泊4日の方がいいでしょう。

 退院後、手術から7日目に、抜糸ならぬ、抜鈎(ばっこう)をしてもらい、その日から風呂の浴槽につかることを許されました。この時点でもまだ手術部位は十分に腫れていて、ちょっと心配でしたが、担当U医師は、あっさり、言いました。

U医師

「大丈夫です。腫れは必ず退きます。内出血も待っていればおさまります。注射で血を抜いてもいいですが、痛いですから、何もしないでいた方がいいでしょう。
 もし、よほどのことがあれば、また外来に来てください。」

「薬もいいのですか。」

U医師

「はい、必要ありません。もちろん、しばらくは、激しい運動とか、重労働はしてはいけないですよ。それ以外は、もう大丈夫です。」


 ということで、本人的には、鼠径部が腫れているし、痛みはあるし、不安がありますが、これで万事終了となりました。めでたしめでたし。
 入院費用はというと、本人3割負担で合計、88,800円となりました。
 ある方の体験記には、日帰り手術の費用が、34,080円と書かれていましたから、それよりは、負担は大きくなりました。私の場合、全身麻酔をかけてもらったので、その費用も普通以上にかかっていると思われます。

 さて、最後は再発の問題です。手術した部位の再発率は、メッシュの膜を使うようになってから画期的に下がり、今ではほとんど再発を心配しなくてよい状況となりました。
 
 ところが、最初の診察の時に、U医師がいやなことを言いました。 

U医師

「Mさん、左側のここ押さえると痛いでしょう。(鼠径部を睾丸側から押さえた時の痛みのことです。)
こちらの筋肉も弱くなっています。この場合、右を手術してヘルニアを抑えると、腹圧のバランスが変わって、今度は、弱い左側に出てきてしまうことがあります。気を付けていてください。」

「わかりました。」

 
 右がおさまれば、今度は左?そんなことには、なりたくはありません。しかし、気を付けなければ、とはいっても、何に気を付ければいいのでしょうか?(*_*)   

 O看護師とは、今回は短いおつきあいでした。

「Oさん、明日は退院です。」(退院の日、23日は祭日で、彼女は勤務日ではありませんでした。)

O看護

「おめでとうございます。」

「またまた、浣腸から何からいろいろお世話になりました。本当にありがとうございました。また何かでお会いするかもしれません。」

O看護

「では。お大事に。」

 HP掲載用の美人看護師の写真撮影を、とおねだりしましたが、ダメでした。

O看護

「写真がないから、伝説の美人看護師です。」

 2児の母の役割と看護師の仕事、大変ですが頑張ってください。

 O看護師さん、その他の4階の看護師さん、外科のU先生、外科外来のH看護師さん、その他山内ホスピタルのみなさん、ありがとうございました。


 【追記】 08/10/05記述
 大事なことを書き忘れていました。
 2005年1月の
腸閉塞入院の時は、入院から9日間も絶食していましたから、体重は、入院時の67.8kgから62.8kgへと激減しました。腸閉塞は究極のダイエットでした。
  
 今回の
鼠径ヘルニアはどうだったのでしょうか?
 9月19日の入院費の朝、服を着たままで、体重は、
67.2kgでした。
 退院の日の朝の測定では・・・・・・・・、なんと、
69.0kgとなっていました。
 
 僅か、4泊5日の入院で、体重は1.8kgも増加してしまいました。
 病院食ですからカロリー計算はちゃんとされているでしょうが、動くと痛いのでほとんどベッドの上から動かず、しかも、妻が差し入れてくれた、大判焼きだのミスタードーナツだのを景気よく食べたのが失敗でした。

 退院後10日過ぎた現在では、体重は入院時に戻りました。
 ただし、鼠径部の腫れはまだ退いていません。もう笑ったり、クシャミをしたりできますが、まだ痛いことには変わりまりません。なかなか長いつきあいとなるようです。


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