2005-07
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E 1/13(水)12:00 決断 食事再開     

 容態が安定して3日間が過ぎた7日目・8日目、私は再び検査を受けました。レントゲンとCTです。
 腸閉塞部分がどうなっているか、確かめるための検査です。
 検査結果を前に、S医師は、二つの点で、懸念を表明しました。
 
 

S医師

「一つは、チューブによる排出物があまり多くなく、CTの画像では、まだ小腸内にガスが少したまっているようです。また、空腸の左上の部分には、腸重積を起こしている箇所もあります。
 もう一つは、原因がはっきりしないことです。
 これまでに、開腹手術の経験もなければ、便秘等の要因も考えられません。残るは、腸間膜の障害、腫瘍などの異物によることも考えられます。
 まだ、便通もないですよね。」

「はいありません。まだ、様子を見るのですか?」

S医師

「いや、もう、内科的には、打つ手はありません。明日もう一度、チューブから腸内に造影剤を入れてレントゲン撮影し、その時に、チューブを抜こうと思っています。
 腸重積の部分は、チューブを入れているためとも考えられます。
 それで何もなければ、明後日(1/14)から食事を再開しましょう。」

「やっと食べてもいいのですね。」

S医師

「食欲はありますか?」

「最近、ちょっと出てきました。食事時に他の人がうまそうに食べているのが羨ましくなってきました。」

S医師

「では、明日チューブを抜いて、明後日から食事です。
ただし、食事はすべて低残渣食で、流動食から始めます。いきなりなんでも食べられるというものではありません。
 海で難破して絶食ののち助けられた人が、すぐに普通のものを食べると死んじゃうという話は知っていますか?」

「聞いたことはあります。」

S医師

「それと同じです。
 小腸にある柔毛という養分を吸収するヒダは、細胞分裂がさかんで1週間で半分が入れ替わります。ということは、1週間絶食していると、新しい細胞がいっぱいできているわけですから、それにいきなり浸透圧の高いものを触れさせるとまずいわけです。
 それから、もし重大事態が発生したら、またチューブを入れて、今度は外科的な処置を考えなくてはいけませんから、その覚悟で。」

「わかりました。逆戻りしないように祈ります。」

 かくて、入院から10日目、1月14日(金)から食事が再開されました。


 1月13日に撮影した腸内の造影剤を入れたレントゲン写真。

 素人には、どこが患部でどこがどう悪くなっているか、簡単な説明だけではわかりません。

「とにかく、異常なし。食事を取ってもいい。」

という結論がうれしいばかりです。
 
 この写真の造影剤は、イレウス管から入れました。この造影剤は、胃の検査に使うバリウムとは違って水溶性のものです。
ガストログラフィンといいます。
 バリウムほどはっきり造影ができませんが、腸には優しい造影剤です。

 イレウス管が、曲がりくねって小腸の奥深くに入っていることがわかります。
 白い○が6個つながっているところが先端です。

O看護

「Mさん、今日使った造影剤は、きっと、閉塞部を通過して、そのまま出てきます。入院以来初めての便になるはずですから、どんなようすか、回数は何回か、覚えておいてください。」

「はい。その造影剤は、何色ですか?バリウムみたいに白ですか?それとも、赤とか緑とか・・・。」

O看護

「少なくとも赤ではありません。わかりませんから先生に聞いてあとで教えます。どうしてそんなこと聞くの?」

「いや、白と思ってたら、赤だったりしたらびっくりするでしょ。」

O看護

「それもそうですね。」

   

O看護

「わかりました。透明だそうです。」

「ありがとう。」

 このあと、無事、ガストログラフィンが排泄されました。腸閉塞部分が開通したことがはっきりしました。


1日目 低残渣全流動食

2日目 低残渣三分粥食

 3日目 低残渣五分粥食

 4日目 低残渣七部粥食

 5日目 低残渣全粥食

 6日目 低残渣通常ご飯食


 1月14日(金)食事再開の日の早朝の会話。
 この日、夜勤明けの看護師Tさんは、子どもさんがもう小学校高学年というベテランです。
 
 

T看護

「Mさん、今日の朝から、食事だって。おめでとう。」

「はい、もう、うれしくてうれしくて。」

T看護

「じゃ、念のために言っておきます。最初のは、食事といっても、全流動食、つまり、液体の「飲む食事」です。
 しかし、これをぐいぐい飲んではいけません。
 咬んで飲むのです。」

「液体を咬む?」

T看護

「そうです。咬んで、唾液と混ぜるの。わかる。」

「はい、わかりました。」

T看護

「あなたなら面白がってやりかねませんから言っときますが、流動食の一気飲みはいけません。」

「あい。」

 普通食への復帰は、順調に進みました。1日1レベルずつの慎重なステップアップです。
 上の食事は、すべて、昼食のメニューです。
 低残渣(ていざんさ)というのは、また次に説明します。


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