2005-05
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C 1/06(木)01:00 痛み止め ソセゴン            

 十二指腸・空腸・回腸の位置を示した模式図。但し、レントゲン写真を見ると、こんな簡単なものではありません。

イレウス管挿入処置の時点で、「保存的治療」は完了しました。
 つまり、緊急手術の必要性がないと判断された私は、とりあえず、イレウス管を通して小腸内にたまったものの排出し、点滴による抗生剤の投入で閉塞箇所の上流部に腸細菌が異常繁殖しないようにするとともに、小腸内の圧力を下げて、閉塞箇所の復活を期待するという、状態に入りました。

 これは、このまま腸の活動が正常化し、閉塞箇所がうまく復活すれば万事めでたしめでたし、反対に、他の症状が発生して事態が好転しないまたは悪化した場合は、外科的治療=手術ということを意味していました。
 とりあえず、1週間近くはこのまま様子を見るということで、長期戦に入ったのでした。

 しかし、それは、あくまで治療する方の見通しで、この日の私の仕事は、迫り来る痛みとの戦いでした。

 イレウス管挿入前に注射してもらった痛み止めは、夕方にはもはや効果が無くなり、また一層の腹痛が襲ってきました。
 胃にたまっていた昼ご飯のおにぎりは全部嘔吐してしまいましたが、それ以前の朝食や昨日の夕食の消化滓が腸内を移動して、閉塞部分のダムにどんどん貯まり、また小腸の圧力が上がって来ていたのです。
 圧力が上がると、周囲の血管をはじめいろいろなものが圧迫され、痛みや全身の不調が発生するわけです。

 実はイレウス管はこの時点でどこまで届いていたかというと、十二指腸から空腸へ入ったところまでだったのです。
 これが通常の「
保存的治療」で、それ以上は、自分の腸の蠕動運動によって、腸内物を外へ送り出しながら、自分で閉塞箇所もしくはその下流まで運んでいくというものなのだそうです。(一応逆流を防止するためと腸が送りやすくするため、、先端部にバルーン(空気でふくらんでいる)が着いています。)

 19:00 2回目の痛み止め注射を打ってもらいました。
 打ってもらった時は痛みが和らぎ実に気持ちがいいのですが、この夜、私の激しい痛みの前には、この注射も、2時間しか効き目がありませんでした。

 21:00 痛みがぶり返し、看護師をよんで、痛みを抑える処置を願いました。今度は、点滴の中になにやら混ぜてもらいました。
 この薬は、ほんの少々痛みを和らげてくれましたが、注射ほどのことはありません。気休め程度でした。

 23:00 あまりの痛みに、また注射(3本目)を打ってもらいました。
 あとで確かめたのですが、この痛み止め=鎮痛剤は、いわゆるモルヒネ(麻薬)ではなく、
塩酸ペンタゾシンを主成分とするもので、この病院では、山之内製薬のソセゴンというのを使っていました。

 日が変わって6日の01:00、やはり2時間弱でソセゴンの効き目が切れ、痛みを感じ始めました。
 やがて、痛みは私の入院中で最大の痛みとなってきました。
 
 看護師を呼びました。

「注射打ってください。」

看護師

「 えー、もうですか。だめです。
 この鎮痛剤は、前に注射してから少なくとも5時間の間隔が必要です。2本目・3本目の時は間隔が短かったようですから、今回は、絶対駄目です。午前4時までは、注射できません。」

 しょうがないので、先ほども入れてもらった、あまり効かない薬を点滴に混ぜてもらいました。
 しかし、ほとんど気休めです。
 この真夜中の1時から2時・3時・4時にかけての3時間が、今回の入院のハイライトでした。(-.-)
 痛みは、文字では表現できません。
 ひたすら、脂汗かいて、うなっていました。

 04:00 夜勤の看護師さんは、私がベルを鳴らすまでもなく、注射を持って登場しました。ちゃんと忘れずにいてくれました。 感謝感激です。

看護師

「はい、痛みはひどいですか。よく我慢しましたね。注射を打ちます。」

「早く打って・・・はやく・・。なんかこれって、麻薬をほしがる中毒患者みたいだなー。」

看護師

「これは麻薬ではありませんが、癖になってしまう危険性がある薬ですから、我慢してもらいました。はい、もうこれで、ぐっすり眠れますよ。」

 あとで調べたら、ソセゴンは、厚生労働省の「医薬品・医療用具等安全性情報」に、「連用により薬物依存を生ずることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。」とある危険な鎮痛剤でした。看護師さんは、当たり前ですが患者のわがままを抑えて、ちゃんとルールを守ってくれたのでした。

 注射の直後、事態はあっさり好転しました。
 痛み止めが効きはじめると同時に、突然、激しい嘔吐感に襲われ、まるでお腹の奥から絞り出すように、大量の液体を吐瀉しました。バケツを手元に引き寄せるヒマもないくらいの突然の出来事でした。2度目の吐瀉物まみれです。
 
 結果的に、この大量の吐瀉を境に、痛みも、不快感も、峠を越しました。
 もちろん、夜勤の看護師さん二人が、吐瀉物の片づけに20分も費やすというご苦労と引き替えでしたが・・・。


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