2005-04
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B 1/05(水)15:00 イレウス管挿入開始            

 私は、レントゲン室へ連れて行かれ、胃の検診をする時に今まで何度も乗ったことがあるあのレントゲンの台に乗せられました。

S医師

「これから、閉塞部から手前にたまっている食物を抜くために、鼻から管を通してのどと食道・胃へと送り、小腸まで入れます。ちょっとつらいですが、我慢してください。うまくいけば、30分ぐらいで終わります。」

 
 仰向けになった私は、キシロカインという局所麻酔剤を鼻に投入されて、感覚を弱められたあと、なんと、そこから緑色のチューブを挿入されました。
 S医師が、私の腹部にレントゲンを当ててモニターで確認しながら、チューブをだんだん奥へ送っていきます。
 これが腸閉塞の通常の
保存的治療です。緊急の手術とかをしない場合は、こうするのです。
 つまり、チューブを患部まで通して、小腸内にたまってしまっているものを、チューブによって上から外へ逆に出そうという処置です。

 腸閉塞は医学用語でイレウス(ileus)といい、この管のことを
イレウス管と呼ぶことをあとから教えてもらいました。

 ところが、ところが、ここで予想外のことが起こりました。
 普通なら30分ぐらいで終わるはずのこの処置が、そう簡単にはいかなかったのです。

S医師

「う〜ん、あなたの胃の形は、ちょっと変わっていますね。これはバクジョウ胃です。しかも、胃軸が捻れています。
 通常の胃の検査と違って、食べ物がいっぱいです。昼ご飯は、腹痛の割にはしっかり食べたのですね。」

「いろいろな事情で、しっかり食べました。(-.-)」

 鼻からのどにチューブが入っている状態で、しゃべるのはなかなかの違和感です。しかし、まだ余裕のあった私は、時々、モニターを見ながら何が起こっているか確認していました。

S医師

「うんー難しいな。」

「先生、バクジョウって、何という字を書くのですか。爆発?」
S医師 「いえいえ、滝の瀑ね。瀑状胃。」
 
 説明だけではよくわかりませんが、本来チューブは胃から胃の下にある出口(幽門といいます)を通って十二指腸へ行かなければなりませんが、うまく行かないようです。
 S医師は次の手として、芯となる金属のワイヤーをチューブ内に通して、その力で無理矢理突破を試みる作戦を取りました。しかし、これも、失敗に終わりました。
 そのうち、これでは無理だと判断した先生が、決断を下します。

S医師

「よし、やむ得ない。胃カメラを入れよう。
 Mさん、ちょっと大変ですが、どうしてもチューブが十二指腸へ行きませんから、このままの状態で胃カメラを飲んでもらいます。」


 一瞬何のことかわかりませんでしたが、要するに、鼻からはこのままチューブが入った状態で、口からは普通に胃カメラを入れ、胃カメラの画像を見ながら、しかもより太い
胃カメラの力を利用して、胃の幽門部を突破し、それを道案内にチューブを送り込もうという作戦です。

 これも、最初は困難を極めました。
 しかし、事態は突然好転しました。あまりにもいろいろなものを強引に胃の中につっこまれたことに私の体が反応して、すごい勢いで胃の内容物を嘔吐してしまったのです。
 体がよじれるような反応で、おかげで、腸内のガスもずいぶん出ました。

S医師

「出た出た。よし、よし。これで何とかいけるかな。」


 吐瀉物にまみれた私は、不快そのものですが、S先生にはとっては、チャンスでした。
 この時点では、さすがの私も、もうくたくたです。
 まだこのあと、「イレウス管挿入」の補助は初体験という看護婦さんが、あまり失敗が続くのでおろおろして、抜いてはいけないチューブの中のワイヤーまで抜いてしまうというミスもあって、結局、処置が終了したのは、なんと、始めてから3時間半後でした。


18:30イレウス管小腸挿入完了。

S医師

「さあ、これでたまっているものが、うまくだせるぞ。あとは、腸内細菌の繁殖を抑え、閉塞してる腸の復活を待つことになります。それにしても長い時間がかかった。20数年の医師生活でこんなに長くかかったのは、初めてだ。


 S医師の新記録に貢献してしまいました。


 写真左、右の鼻の穴から出ている緑色のチューブが、イレウス管。この状態で、8日間過ごしました。右腕に着いているのは普通の点滴チューブ。
 右、イレウス管の先は、腸から出てきたものを貯めるバッグにつながっています。決して美しいものではないですのでモザイクをかけました。
 夜勤の看護婦さんは、毎日、このバッグにどのくらい(何cc)たまったかを計測してくれていました。

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