2004-07
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076 2004年7月11日(日) トロイはやめて映画「ブラザーフッド」を見ました    

 この日記のページには、以前は、結構たくさん映画鑑賞記を書いていたのですが、最近はすっかりご無沙汰していました。
 2003年12月の「The Last Samurai」以来です。

 この間、1本も映画を見なかったわけではありません。
「Tears of the Sun」(アフリカでのアメリカ軍特殊部隊の活躍)、「半落ち」、「The day after tomorrow」など、1ヶ月に1本のペースでは見ていました。

 6月末、中間試験・期末試験をそれぞれ無事(妻「ぶじじゃない、(-.-)」)に終えた次男・3男と、見に行く映画を相談しました。
 候補は、「The day after tomorrow」、「トロイ」、そして、「ブラザーフッド」の中から本です。
 

○本日の前座その1 「The day after tomorrow」
 妻が同行する1回目は、
「戦争映画はいや。」
というご命令に従って、「The day after tomorrow」を見に行きました。
 
 この映画は、見ていない人は、多分TVの宣伝シーンのおかげでストーリーに大きな誤解をしていると思います。
 TVの宣伝シーンでは、「地球の気候異変」と「ニューヨークのブルックリンを襲う洪水」が描かれていましたから、ひょっとすると、「地球温暖化→海水面上昇」という図式を想像されたかもしれません。

 しかし、実際のストーリーは、もっと込み入ったものでした。

 地球温暖化で南極の氷が溶け、海水に混じる結果、海水の温度が低下し、しかも塩分濃度も低下します。この結果、従来の熱帯水域ではなく、温帯水域に、台風以上の寒波をもった巨大低気圧(吹雪の元のでかいやつです)がいくつも発生し、北半球が覆われてしまう。
 当然、北半球は寒波に覆われ、吹雪の中で多くの人が死んでいきます。

 この、巨大低気圧の引き起こす高潮によって、海水がニューヨークを襲うという話なのです。決して地球温暖化による海水面上昇ではありません。
 科学的な合理性はともかく、面白い発想でした。

 アメリカ映画につきものの、泣かせるヒューマンドラマも、もちろん入っています。
 レンタル・ビデオでのおすすめ度は次のとおりです。


おすすめ人 おすすめ度(3点満点) コメント
★★ 科学的発想がおもしろい
次男Y(18歳) ★★ CGの映像がすごい
三男D(14歳) ★★ いろいろ勉強になる
妻N(?) 人が流されて怖かった
 
○本日の前座その2 「トロイ」 

 次の週末、残った、「トロイ」と「ブラザーフッド」のどちらを見に行くか、次男・三男と悩みました。結果的に、公開されたばかりの「ブラザーフッド」を見に行きました。

 で、なんで、前座「トロイ」かというと、5月末に東京に行ったとき、「トロイの木馬」の写真を撮影してきましたので、その紹介です。
 以下の写真は、新宿歌舞伎町の商店街の真ん中に「展示」されていた、映画用撮影用の木馬です。

 トロイの物語の世界は、もともと古代ギリシアのホメロスの叙事詩『イリアス』に描かれたものですから、実際どんなものだったかは知るよしもありません。
 授業で利用されたい方は、連絡いただければ、もっとちゃんとした画像をお送りします。
  




 

ちなみに、左の写真の木馬は、現在のトルコ共和国の観光地トロイにある、観光客用のイミテーションの木馬です。

 馬が背中に、「家」を背負っています。(^_^)
 こんな木馬を城内に引き入れたとしたら、古代トロイの人々はどうかしていますね。

 この写真は、HP「Lunatic Cafe」の「うーさん」のご厚意で、現地で撮影した写真をお借りしました。ありがとうございました。「Lunatic Cafe」はこちらです。


○真打ち登場、「ブラザーフッド」

 古代ギリシアとトロイの戦争と男女の愛を描いた「トロイ」か、朝鮮戦争と韓国人の兄弟愛を描いた「ブラザーフッド」かという選択で、我が家の無口な映画評論家次男Yと三男Dは、「韓国と兄弟」を選択しました。

D「何千年も前の伝説の物語より、つい、50年前の映画の方が意義がある。」
父「よし、それはそれでいい判断だが、こういう映画は、予備知識がないと何も分からない。ちょっと、講釈をしておこう。朝鮮戦争は、歴史の時間に習ったか。」
D「中学校では、そんな細かいことやっていない。」
Y「高校では習うかもしれないが、まだそこまで行っていない。」(そこまで行くことを祈ります。(-.-))

 劇場へ向かう車の中で、映画の舞台となる朝鮮戦争の説明です。息子たちにとって大きなお世話ですが、地歴・公民科の教師を親にもつ宿命です。

 ここで書くにはちょっと退屈になりますので、世界史クイズにしました。興味ある方は、こちらへどうぞ。


Y「きっと、ずいぶんな人が犠牲になったのだろうね。」
父「正確には、どのくらいか分からないだろう。韓国の教科書には、韓国人だけで150万人の死傷者と書いてある。」

父としては、彼らがどんな感想を持つか、映画以上に興味関心で映画を見ました。

 さて、映画です。

<あらすじ、ほんのさわり>
 韓国では、今でも、50数年前の朝鮮戦争の際の犠牲者の遺骨の発掘が行われています。
 この映画も、生き残った弟のもとへ、兄の遺骨が発見されたという知らせが届く場面から始まります。
 チャン・ドンゴンとウォン・ビンが演じる兄弟は、兄はソウルの靴作り職人、弟は大学進学を目指す優秀な高校生です。

 母と兄の婚約者とその妹たちとの平和な暮らしは、1950年6月25日の北朝鮮の南侵によって打ち破られました。
 当時、北朝鮮軍はソ連から援助を受けて着々と軍事増強を図っており、T34などのソ連軍戦車も保有していました。
 これに対して、韓国軍は戦車も有効な対戦車兵器ももっておらず、韓国軍は瞬く間に総崩れとなります。

 国境線に近かったソウルは、開戦後僅か4日目に、北朝鮮軍の手に落ちます。

 兄弟と家族は、南の親戚の家を目指して逃避行を続けます。
 ところが、その最中に、強制的な韓国軍の軍隊徴募によって、兄弟は、兵士にされてしまいます。

 二人が部隊に配属されたのは、釜山の西にある洛東江の陣地でした。ここは、追いつめられれた韓国軍が、南の端の釜山を中心に固めた防衛ラインの一つです。

 兄は、兄の責任として、自分が死んでも、優秀な弟を生かして母の元に返してやりたいと思っていました。
 弟は、兄とともに無事に帰りたいと思っていました。

 兄弟ともに戦場に出てきた兄に、部隊長は、同情しつつ意味深長な言葉を投げかけます。
「弟を無事帰したいと思ったら・・・・。」

 それから、兄は、鬼神の如く戦場で活躍します。部下の兵隊を犠牲にしても手柄を立てるといった、なりふり構わない戦いぶりでした。
 そして、ついには勲章を手に入れます。

 ところが、弟は、たとえ自分のためであったとしても、いや自分のため故によけいに、兄のそのような考え方、行動が許せなくなります。

 そして、兄弟をもてあそぶ運命の糸は・・・・。

 兄の死は何だったのか、兄の思いは何だったのか、新聞の宣伝文句通り、ラスト30分は涙、涙、ひたすら涙です。
 もっとも、涙もろい私は、すでに、最初のソウルの幸福なシーンを見ただけで、泣けてきました。この町は、この戦争の、最初の1年間に、4度戦場となるのです。そこに住む人々にどんな過酷な運命が襲ったか、想像するに余りあります。

 兄の婚約者もその悲劇の中に巻き込まれていきます。


父「この映画はどうだ。友達に推薦できるか。」
Y「できる。」
D「すごかった。」

ということで、我が家のおすすめ度は次のようになりました。
   
おすすめ人 おすすめ度(3点満点) コメント
★★★ 日本が忘れている何かがある。
次男Y(18歳) ★★★ 同上
三男D(14歳) ★★★ とにかくすごい、ストーリーもスケールも。
妻N(?) 棄権 戦争映画は怖い
 
 

棄権した妻を除く、3人は満点です。まだの方は、是非どうぞ。

Y「父ちゃんは、兄弟がいないから、兄弟のああいう気持ちって、分からないんだね。」
父「そうだ。・・・・・・」
D「兄として、もし戦争になったら、僕のことを映画のように考えるかな?」
Y「う〜ん。とりあえず、ああいう戦争が起こらないことを願いたい。」

 10年ほど前、石原慎太郎現東京都知事が、まだただの評論家だったとき、文学賞の作品がだんだんつまらなくなってきた理由を指摘した文章を読んだ。
 
 石原氏に言わせると、優れた文学が生まれる要素は、戦争、貧困、戦うべき思想(イデオロギー)の3つだそうです。今の日本には、どれ一つも、存在していません。

 1950年代の韓国にはと言えば、どれもこれも、いやと言うほどありました。
 
 平和ぼけの日本で、私はいいぞ。


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