宗教2
<解説編>
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801苦行を捨てた釈迦に乳粥を与えた村の娘の名前は何と言いますか。    | 問題編へ |

 ゴータマ・シッダールタ(釈迦)は、紀元前6世紀の遅いころ、もしくは紀元前5世紀早いころ、つまりでおよそで言えば、今から2500年ほど前にガンジス川中流域で誕生しました。その地は、現在では2説あって、ひとつはネパール領・ひとつはインド領となっています。インド領の方からは、仏舎利(骨を納めた容器)が発見されていますが、どちらかは正確には決定していません。
 当時このガンジス川中流域には、コーサラ国・マガダ国などの有力な国がいくつかあり、ゴータマはコーサラ国に属するシャーキャ国(釈迦族の国)の王子として生まれました。
 
 当時インドでは、輪廻転生の思想が広まっており、それを「苦しみ」ととらえていました。輪廻転生は、簡単に言えば、死んだら次に生まれ変わると言うことです。後の日本では、極楽への生まれ変わりとか良い面の方がとらえられていますが、人の次に何に生まれ変わるかはわかりません。蛇、ゴキブリ、アメーバ・・・。それが永遠と続いていくという考えは、やはり、「苦」です。
 
 ゴータマはその苦悩から脱却するため29歳で出家し、悟りを開くため荒行や断食などの苦行を繰り返します。6年経って35歳になった時、苦行では悟りの道が開けないと決意し、それを捨てて瞑想に入ります。
 その時、彼はガンジス川支流のナイランジャーナ河で沐浴し、近くのセナーニ村の娘が献上した「乳粥」を飲んで体力を回復します。
 
 乳粥は、インドではキールと呼ばれ今でも祭りの時や病人の食事として作られます。牛乳の中に水洗いした米を入れてぐつぐつ煮たあと、砂糖を入れたものだそうです。いかにも病人には良さそうですね。
 
 さて、このクイズは、この話がかなり有名なため、知る人は知っていて簡単なものです。ところが、普通の多くの生徒は知りません。しかし、ヒントもないと答えられるはずはありません。ところが、幸いなことに、名古屋の名古屋製酪という会社が、これにちなんで乳製品のブランド名として使用していて、かなり有名ですので、知らない生徒でも盛り上がります。つまり、ヒントとして、「その娘にちなんで乳製品のブランド名に付けられています。牛乳そのものではありません。もちろんインドの娘さんらしい名前です。」などと説明すると、生徒諸君は一生懸命考えてくれます。
 
 
正解は、スジャータです。誤答としては、クリープ・ヤクルトなど一杯でてきますが、ちゃんと当てる生徒もいるのでえらいものです。
 セナーニ村(通称スジャータの村)は、ゴータマがこの後悟りを開いた場所として有名なブッダガヤの近くにあって、村の中には、スジャータがゴータマに乳粥を献上している像が安置してあるそうです。また、ブッダガヤには「スジャータホテル」も存在しているそうです。
 
 それから、名古屋製酪がなぜ、「スジャータ」という名前を使っているかを会社に問い合わせてみました。最初にコーヒーフレッシュを商品化した時に社員から名前を募集して、社長さんがお決めになったそうです。(スジャータ通販部からのメールでの返答より)
 ※説明上、名古屋製酪の登録商標名と製品の写真を使用させていただきました。 
 ※NHK「ブッダ」プロジェクト『NHKスペシャルブッダ大いなる旅路1 輪廻する大地 仏教誕生』
                                  (1998年日本放送出版協会)
 ※現物教材リストへ→


802 キリスト教世界で神ではなく人間が作った国といわれているのはどこ。   | 問題編へ |   

 答えは、オランダです。
 
 そもそもすべての国土が神によって作られたということがあり得るかどうかは別として、オランダだけは、オランダ国民が、埋め立てや干拓によって、営々と築いた国であるという意味です。
 
 現在のオランダの国土面積は、4万844平方km(北海道の半分ほど)で、1518万の人口があります。国土の面積の4分の1が海面下にあります。最も低いところは海抜マイナス8mです。オランダの正式名称の「Kingdom of the Netherlands」は「低い土地」という意味ですし、俗称のオランダの語源「ホラント」(州名)は、窪地という意味です。
 ちなみに、
この国の最も高いところは、ドイツ・ベルギーとの国境近くのファールセルベルフ山(丘?)で標高321mです。(これは岐阜市の金華山より低い)
 
 このような国ですから、オランダは、現代の環境問題の重要な課題のひとつである「地球温暖化防止のための二酸化炭素排出量規制」については、非常に熱心です。温暖化による国土の「海没」が、先進国中、最も心配だからです。
 ※司馬遼太郎『街道をゆく35 オランダ紀行』(1991年朝日新聞社)
 
 オランダについては、次のクイズもあります。
  ※現代社会世界の文化クイズ→  日本史近世編クイズ→


803 ユダヤ教のタルムードの教えの中にあるうそをついていい場合とは?    | 問題編へ |     

 まず、教科書にはあまり出てこない『タルムード』の説明からです。

 タルムードはとは直訳すると「偉大な研究」という意味になります。ユダヤ民族を支えてきた生活規範書です。全20巻、 1万2000ページにわたるもので、本としては、紀元後500年頃それまで1000年間伝えられた口伝を、10年かかって2000人の学者が編纂したものです。
 
 3人の
ラビ(ラビはユダヤ教の僧侶)ヒレル( 紀元前バビロニア生まれ)、ヨハナン(紀元後70年ローマが神殿を破壊するときのラビ。エルサレムを包囲したローマ軍司令官にすべて破壊されても仕方がないが、学校一つは残してくれと要望。後日実現。)、アキバ(詳細不明)の話が特によく出てきますが、現代でも、現代のラビによって、新しく増やし続けられているものです。内容は、道徳や処世訓的なものから、商売・生産活動の慣習にいたるまで、すべての分野にわたります。
  ※ラビ・M・トケイヤー著加瀬英明訳『ユダヤ人5000年の知恵ー聖典タルムード発想の秘密』(1971年実業之日本社)

さて、もちろん
モーゼの『十戒』の中には、9番目に「うそをついてはいけない」という戒めがあります。にもかかわらず、タルムードでは、二つのことには嘘をついてもいいといっています。
 
 
正解は、「次の二つの場合はうそを付きなさい。まず、もうすでに誰かが買ってしまったものについて意見を求めてきたときは、たとえそれが悪くても、素晴らしいとうそを付きなさい。次に友が結婚したときは、必ず大変な美人です、幸福に暮らしなさいとうそを付きなさい。」

 日本でも、「本人の実態とは無関係に褒められるのは、結婚式と葬式の時」という格言がありますが、ユダヤ人においても、少なくとも結婚式の時は、うそを言ってもいいから、祝福すべきと言う教えです。

 タルムードには、このほかにも、次のような教訓的な教えがあります。

  • うそつきに与えられる最大の罰は、彼が真実を語ったときも人が信じないことだ。

  • 要領のいい人間と、賢い人間・・・要領のいい人間は、賢い人間だったら絶対に陥らないような困難な状況を、うまく切り抜ける人のことである。

  • 目が見えないよりも心が見えない方が恐ろしい。

  • 賢人になる7つの条件
    1自分より賢い人がいるときは沈黙する
    2人の話の腰を折らない
    3答えるときにあわてない
    4常に的を得た質問をし筋道だった答えをする
    5まずしなければならないことから手を着け、後回しにできるものは最後にする
    6自分が知らないときはそれを認める
    7真実を認める

  • 神が最初の女を男の顔から作らなかったのは、男を支配してはならいからである。しかし、足から作らなかったのは、彼の奴隷になってはならないからである。肋骨から作ったのは、彼女がいつも心の近くにいることができるようにである

  • 妻を理由なくいじめるな。神は彼女の涙の粒を数えるから。

  • 世の中には多く使いすぎるといけないものが三つある。それは、パンのイースト、塩、ためらい。

  • 偉い人が目下の者の言うことを聞き、老人が若い者の言うことに耳を傾ける世界は、祝福されるべきである。

  • 荷物を満載した船が二隻港に浮かんでいる。一つは出港しようとしており、一つはちょうど入港したところだった。人々は多くの場合、船がでていくときには盛大に見送るが、入ってくるときはあまり迎えない。これは非常に愚かな習慣である。でていく船の未来は分からない。嵐にあって船は沈むかもしれない。それを何故盛大に見送るのだろうか。長い航海を終えて船が無事に戻ってきたときにこそ、大きな喜びがあるのだ。それは、一つのつとめを果たし終えたときだからである。

  • 人生に付いても同じことがいえる。子どもが生まれたときにはみんなが祝福する。これは子どもがちょうど人生という大海に船出したようなもので、その未来に何があるか分からない。病気で死ぬかもしれないし、その子が恐ろしい殺人犯になるかもしれない。しかし人が永遠の眠りにつくとき、その人生で何をやってきたかということが、みんなにわかっているのだから、このときにこそ、人々は祝福すべきなのである。

 

 また、江戸時代の名奉行大岡越前守忠相の「名判決」の話(いわゆる大岡政談)の中にある、子どもの母親と名乗る二人の人物に、互いに子どもの手を引っ張らせ、痛がって可愛そうだと言って手を放した方を本当の母親とするという話は、このタルムードのソロモン王のエピソードが「原典」です。


804 卍は記号・漢字?その意味は?                                 | 問題編へ |     

質問1 卍は記号か文字か
 正解 卍は地図の記号であり同時にちゃんとした文字です。
 
 地図記号として卍は寺を表しますから、記号という答えはもちろん正解です。
 では、文字なのかどうか?
 ワープロの世界では、「まんじ」と打てば、一太郎でもワードでも、卍に変換されます。
 実は、この卍は、ちゃんとした文字で、漢和辞典に掲載されています。

  • よみかた まんじ

  • 部首   一の部(漢和辞典の一番最初に載っている部首です。この部首に属する漢字は、一はもちろん、万、与、王、百、天、可、丘、牙、玉、石、世、平、再、爽、画など、へぇーと思う字が含まれています)

  • 画数 6(書き順まではわかりません。御存知の方は教えてください。)

  • 意味 功徳・円満の意味。吉祥・万徳を示す。(『広辞苑』第二版補訂などより) 

質問2 どのこの国の何から由来し、何の意味があったか
 正解 インドのヒンドゥー教の太陽神ヴィシヌの胸の旋毛、つまりクルクル回った胸毛を示したものです
 
 文字・記号の由来としては、太陽が光を放っている状態を象形化したものとも考えられますが、古代インドのヒンドゥー教では、太陽神ヴィシヌの胸部の旋毛を示すものとされていました。古代インド仏教でも、仏陀の胸や足の裏に現れる瑞相とされ、同じくインドの宗教であるジャイナ教でも使用されています。
 インドのサンスクリット語では、卍はスヴァスティカといい、「幸福な」「吉瑞のある」という意味になっています。

 実は、卍には、右に示したように、二つの種類があります。
 普通の日本での卍は、中心から周囲へ左へ旋回したもので左旋といい、反対に、右へ旋回したものは、右旋といわれます。
 右旋を45度傾けると、ヒトラーのナチス党の鍵十字(ハーケンクロイツ)となります。ナチス党の党章は、インドとは関係のないものです。
 右旋・左旋は中国や日本ではその意義に区別なく仏教を示すものとして使われていますが、ヒンドゥー教やチベット仏教では、左旋・右旋に区別があるそうです。(『平凡社世界大百科事典』などより)


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