現代の諸課題 人口2
<解説編>
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1204 2129年の岐阜県の人口は?                            | 問題編へ |

    ※関連するお話、「なんだこりゃ」の「少子化問題と対策」はこちらです。
 
 このクイズには、まず前提となる知識が必要です。

  1. 日本の総人口は、2006年をピークに、それ以降は減少すると予想されています。

  2. 日本の中央部にあり、東海道新幹線も通り、東海道ベルト地帯に含まれている岐阜県ですが、本県も、2004年から人口減少県になりました。

詳しくいうと、2004(平成16)年3月31日「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数」(総務省自治行政局市町村課発表)では、47都道府県のうち、前年より人口が増加した都道府県は、僅かに14都府県、残り、33道県では人口が減少しています。前年までは、18都府県が人口増加でしたが、あらたに4県で人口が減少しました。その4県とは、岐阜・宮城・岡山・広島です。

 さて、本題です。
 クイズの質問の内容が紹介された、新聞記事の一部を引用します。
(『日本経済新聞』2005年7月7日の記事です。太字・色字は引用者が加工しました。)

「県はこのほど、将来推計人口の試算をまとめた。戦後最低となった県の2004年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)1.31が今後も続くという前提で、現在の年齢構成、転出転入などから将来人口を予測した。
 算定の基準は
04年10月の時点の人口211万8000人。試算では1割減となるのは、24年、2割減は34年、半減するのは64年としている。100年後の2104年には4分の1と、国より早く人口減少が進むとしている。」


ご存じとは思いますが、合計特殊出生率というのは、一人の女性が生涯に生む子どもの数を示したものです。
 第二次世界大戦直後の1947年には、その数値は4.32でした。それ以後急激に低下しましたが、1950年代から1970年代前半までは、概ね2.0前後が維持されました。唯一の例外は、1966年のいわゆる丙午の年で、この時は、1.58でした。
 ところが、高度経済成長が終わった1970年代半ばからじりじりとさがりはじめ、1989年には、丙午と1966年を下回る1.57を記録し、1.57ショックと呼ばれました。

 このため、それ以後、いろいろな手が打たれました。しかし、結果的には、いくつかの例外の年を除いて、合計特殊出生率は漸減を続け、2004年6月に発表された「平成15(2003)年人口道動態統計年計(概数)の概況」では、1.29となっています。
 →データなど参考になるサイトを人酢紹介します。
  「柏市インターネット男女共同参画センター 参画eye」の「合計特殊出生率のページはこちらです。

 現段階では人口を維持していくには、最低でも2.08が必要といわれています。(ちなみに、夫婦二人が二人の子どもを産めば、現状維持となると思われがちです。必要数値が2.00ではなく、2.08なのは、出産年齢に達する前に死亡してしまう女性の分を他の女性が補わなければならないためのものだそうです。ということは、女性の平均寿命が85歳を超えた我が国は、この数値が限りなく2.00に近くなっているわけですが、発展途上国など、平均寿命が低い国は、この数値はもっと高いわけです。)

 それでは、124年後の2129年にはどうなるかというと、正解、なんと、「人口はゼロ」です
 いくら124年後とはいえ、本当に人口ゼロ?

 ゼロということは、その年が近付くと、岐阜市をはじめ街はすべてゴーストタウンとなり、その直前の、2128年あたりには、生き残りの僅かな人が、まるで希少生物のように、細々と住む・・・・・。
 本当でしょうか?
 新聞には、県の担当者の見解として、「
本当にゼロになるかどうかは分からないが、今の出生率ではこのペースで人口が減ることを(県民)に分かってほしい」と書かれています。
 これでは、少し不正確です。確かめる必要があります。
 そこで、県教育委員会の知り合いのつてを頼って情報元の岐阜県知事公室統計調査課に確認しました。
 

1 通常の将来推計人口
 将来推計人口というのは、国や地方自治体単位でいろいろ計算されています。
 国立社会保障・人口問題研究所の「小地域簡易将来人口推計システム」というのがあって、自治体ごとに、合計特殊出生率、社会的な移動などを数値として入力すると、計算式によって数値が算出されます。
 ただし、このシステムによる
推計可能期間は、100年となっています。
 これによると、岐阜県の場合は、次の表のようになります。

将来推計人口 岐阜県(合計特殊出生率は1.31を使用)


推計人口

推定到達年

現在人口

2,117,988

2004年10月1日

1割減少

1,877,560

2024年頃

2割減少

1,680,344

2034年頃

3割減少

1,476,382

2044年頃

1/3減少 1,375,365 2049年頃

5割減少

1,073,462

2064年頃

 
 

523,563

100年後2104年推計人口(75.3%減)

 
2 人口ゼロ推定

 この数値をグラフにすると次のようになります。

 グラフ1は上表の数値をで示したものです。しかし、これでは、100年後の2004年までしか推計できません。
 そこで、それらの数値を結ぶ直線を書き加えたのが、グラフ2です。
 今回の、「2129年に人口ゼロ」は、
この直線がX軸と交差する点から割り出されたものです。

 したがって、担当職員のコメントの「本当にゼロになるかどうかは分からないが」は、あくまで、2004年以後も条件が変わらないとしてグラフ的にはゼロになるという意味です。
 県がこういう発表をしたのは、県民に、「
少子化の危機感」を強くアピールしたいという意図があるのでしょう。

 ちなみに、推定人口は、正確な理論にもとづくと、直線ではなく、曲線(正しくは指数曲線)で示されなければいけません。
 グラフ3の
緑色の線がその曲線です。
 これだと人口が少なくなるにつれて、減少の割合は減っていきます。
 
 したがって、限りなくゼロに近付くのは、まだ先の話です。
 数学的には、曲線はX軸にとは交わりませんが、数値的に1未満となるのは、3059年のことと推定されています。


3 人口ゼロ推定

 全国の人口を同じように、直線と曲線で、「人口ゼロ」の年を推定すると、直線では、2144年、曲線では、3584年となります。

 
紀元36世紀には、日本は消滅します

    ※関連するお話、「なんだこりゃ」の「少子化問題と対策」はこちらです。



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