現代日本経済の諸相7
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 512 2012年東京築地市場の初競り価格新記録マグロを大トロにすると?           |  問題編へ |    

 このページは、各新聞といくつかの参考文献をもとに記述しました。その一覧は、ページの一番下にあります。 
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 次の目次にしたがって、説明します。
 

 正解です

 大間産のマグロなどマグロ漁についての説明です

 2011年の8月に見学した築地市場の写真です 


 ついでに築地界隈の名所のひとつ 勝鬨橋の写真です 

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 1 正解です                          |このページの先頭へ戻る|

 問題に書いたことをもう一度復習します。
 東京築地の中央卸売り市場では、正月明けに恒例「
初競り」が行われます。
 2012年は1月5日午前5時頃から
マグロの初競りが行われました。
 各地から集荷されたマグロ560本が並べられ競りが行われました。
青森県大間産重量269kgのこの日のマグロの中では一番重量があるマグロが登場すると、競り値はどんどん上げられ、ついに5649万円の価格で落札となりました。これは、昨年の北海道戸井産のマグロ(重量342kg)の競り値、3249万円(1kgあたり、95,000円)を大幅に上回って、新記録となりました。(競り値の公式記録は1999年からしか残っていないため、それ以降の記録)

 落札したのは、東京のスシチェーン店「
すしざんまい」を経営する企業、喜代村でした。実は、昨年の戸井産のマグロをはじめ、近年の最高落札者は香港などの外国の寿司チェーン店の経営企業でした。久しぶりに日本企業が奪還したことになります。
 『朝日新聞』によると、経営者の木村清社長は、「昨年は東日本大震災があり、大変な年だった。新年の景気づけに一番のマグロを海外ではなく日本のみなさんに提供したかった。」と語ったそうです。

 ちなみに、すしざんまい本店のHPによると、通常の「本鮪大トロ一貫(この場合は1皿1個)の価格は、398円(税込み料金418円)です。チェーン店ですからちょっと安めですね。本マグロ大トロなら、1000円以上のお店も多いかと思います。
 
正解です。
 すしざんまい本店のHPの価格と、『スポニチ』インターネット版が報じた、元を取るための想定価格(市場関係者の推定)を比較すると次のようになります。

すしざんまい本店の
HP掲載の価格

寿司の種類

『スポニチ』インターネット版の
元を取るための想定価格

128円

本鮪赤身

10,000円 

298円

本鮪中トロ

15,000円~20,000円 

398円

本鮪大トロ

20,000円~30,000円 

 なんと、大トロは、20,000円から30,000円の価格でないと元は取れないとのことです。とんでもないお寿司になります。
 競り値が
5649万円、マグロの重量が269kgですから、単純に割り算すれば、1kg=210,000円となります。
 普通の寿司ネタの重量は、寿司店によって違いますが、平均は17g程といわれています。仮に計算しやすく20gとすると、1kgのマグロからは50個の寿司が採れることになります。これを適用すると、単純に210,000円÷50個=4,200円となります。
 しかし、マグロの重量269kgの中には、骨も外皮も含まれていますから、これよりは高い値段となるわけです。
 
 なお、『時事通信』のインターネット版によると、木村社長は、このマグロを通常の価格で提供すると語っており、あくまで上表の左の価格欄での提供となります。つまり、20,000円から30,000円の大トロを398円で食べることができるわけです。
 日本のお客さんに初競りの本マグロを提供したい、お寿司屋さんの鏡です。大盤振る舞いです。見事なものです。 

2013年1月の競り値更新、1億5540万円(重量222kg、1キロあたり70万円)については、次のページで解説しています。→クイズ現代社会513「競り値更新2013年、漁師の方の取り分は?」

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 2 大間産のマグロなどマグロ漁についての説明です     |このページの先頭へ戻る|

 実は、この初競りには、もう一つのドラマがありました。
 昨年の初競りで最高値を記録し、歴代最高価格を更新したのは、
北海道戸井産のまぐろでした。
 それまでは、2000年以来ずっと、
青森県大間産のマグロが初競り値第1位の記録を保持してきましたが、2011年は同じ津軽海峡を挟んで対岸にある戸井に苦杯をなめたわけです。(最高競り値の価格としては、2001年の202kgの大間産マグロの2020万円が最高。この価格が、2011年に破られました。)
 
大間戸井も地名としては耳にする地名ですが、どこにあるのか詳しく知っている方は少ないと思います。ちょっと地図を引用して学習します。

上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、津軽海峡の地図です。 下が青森県、上が北海道です。
青森県大間漁港は本州最北端の岬、大間崎のすぐ西側にあります。青森県下北郡大間町です。
一方、
北海道戸井漁港は、津軽海峡を挟んで大間崎とは反対側の岬、汐首岬の5kmほど東にある漁港です。以前は戸井町でしたが、平成の大合併によって周辺3町村とともに函館市に編入されました。

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 11年間最高競り値を保持してきた大間としては、2011年に戸井にその座を明け渡してしまったわけですから、何とか奪取したいと思うのは当然です。
 実は、戸井に敗れた時点で、その敗因は察しが付いていました。
 それまで、
大間漁港では、初出漁が1月6日となっていたため、築地の初競りには、年末に獲れたマグロを出していました。一方の戸井では、1月4日に水揚げされたものを築地に送っていました。つまり、新鮮さでハンディがあったわけです。
 首位奪還を目指した大間漁港は、
2012年の初出漁をそれまでよりも3日早めて1月3日とし、1月3日~4日に水揚げした鮮度のいい4本のマグロを築地に送ったのです。
 この結果、1月5日の初競りでは、戸井産と大間産のマグロは新鮮度では全く同じレベルとなり、この日のマグロの中でより大きく、また知名度が高い大間産のマグロに高値が付き、大間は1年で首位を奪還したというわけです。
 小説やTV・映画などに取り上げられて、
マグロといえば1本釣りの大間という感じですが、休漁期間を半減するという努力がこの成功につながりました。(この部分は、『読売新聞』インターネット版によりました。)

 ちなみに、初競りでは、全体的にご祝儀相場となりますから、一般的にマグロ重量200kgから300kgのものが、600万円から900万円程度の値が付きます。つまり、1kgあたり30,000円程度です。
 しかし、通常の日常的な本マグロの市場価格(競り値の価格)は、1kgが2000円~3000円程度で、ごく常識の範囲内となります。
 ただし、
大間産の冬物は、1kgあたり1万円の値が付くこともあります。やはり、大間はすごいのです。つねにその日の一番の値が付くことを期待され、競り場の最前列に並べられているそうです。
  ※参考文献5 中野秀樹・岡雅一著『マグロのふしぎがわかる本』P6
  ※参考文献6 星野真澄著『日本の食卓からマグロが消える日 世界の魚争奪戦』P84

 食用に販売されているマグロは、高級なものから
クロマグロ本マグロのこと、太平洋マグロ大西洋マグロがありこの二つは別種)、ミナミマグロメバチキハダビンナガの6種類です。
 このうち最も北の海で育つのがクロマグロです。マグロというと南の海で育つというイメージがありますが、クロマグロは温帯域の海で育ちます。北の海で育つため、脂肪分がおおく、大トロの美味が生まれるのです。当然、秋から冬にかけての水温が下がる時期のものがより美味となります。
 太平洋クロマグロの産卵場所は、3月から5月にかけては、南西諸島から台湾へかけての近海です。夏にかけて産卵場所は北上し、日本海や本州南でも産卵が見られます。
 稚魚は大きくなる過程で、北太平洋をアメリカやメキシコ海岸まで泳ぎ回って成長します。マグロは狭い海域で成長する魚ではありません。
 そこで、次のような指摘もあります。
 前掲書の中野秀樹水産学博士(水産総合研究センター遠洋水産研究所くろまぐろ資源部長)はおしゃっています。
「ここで津軽海峡周辺の戸井や三厩(みんまや)などのクロマグロを漁獲している漁村の名誉のために書いておかなければいけないが、津軽海峡を泳いでいるマグロはすべてクロマグロ、どこの漁港であげようが同じ種類で味に変わりはない。ひとえに青森県大間のみが有名になってブランド化してしまい、すぐ隣の三厩や海峡を挟んだ北海道側の戸井に上がったマグロの値段は大間に比べて落ちるという。残念なことである。」
 ※参考文献5 中野秀樹・岡雅一著『マグロのふしぎがわかる本』P3-5

 産地の競争もいいですが、消費者は冷静に見ることも大切です。

 また、日本のマグロ消費に関しては、上述の参考文献6、星野真澄著『日本の食卓からマグロが消える日 世界の魚争奪戦』のタイトルにもあるように、今後の動向が懸念されています。
 2004年の世界のマグロ漁獲量は、208万トンですが、そのうち日本は21万トンを漁獲しています。
 日本の消費量は58万トンですから、消費量のうちの
63%は37万トンは外国からの輸入です。輸入相手国は50数カ国になります。
 ※World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)のHPの数値です。
   http://www.wwf.or.jp/activities/2009/01/625530.html
 
 しかし、この供給の状況が今後も続くとは限らないという懸念です。それは次の要因によります。

日本の遠洋漁業が急速に衰退している。(外国産への対抗のためのコストダウン、燃料高騰、漁獲規制)

  畜養マグロも含めて、安価な外国産マグロへの依存が高まっている。 
  中国をはじめとする世界的な水産物需要の高まり。マグロもその中に含まれる。 

 星野さんは、マグロをはじめとする日本の水産資源消費について、次のように警告しています。
「 日本の漁業は、戦後の食料不足、動物性タンパク質の確保という使命を担って、発展してきた。そして日本人は、小魚も大型魚も関係なく、大切な食料として食べていた。小骨を取ることを面倒くさがらずに食べていた。それが当たり前の光景だった。
 現在、日本人の食卓には、世界中から輸入された食材が溢れている。脂が乗って口当たりの良い魚をいつでも手に入れることができる。中国の女性労働者たちの手によって食べやすいように骨が抜かれた魚が、子供たちの学校給食に提供されている。
 もちろんそのこと自体を悪いとは言えないが、魚を他の工業製品と同じように扱い、便利さ、手軽さ、経済効率を追求し続けていくことを、私たち日本人は見直さなければならない時期に来ているのではないだろうか。
 見直す努力をしていかなければ、世界で激しさを増している水産物の争奪戦に敗れ去るだけではなく、食料を自給する能力も失ってしまうに違いない。その日は、遠くない将来、必ずやってくると思えてならない。」
 ※参考文献6 星野真澄著『日本の食卓からマグロが消える日 世界の魚争奪戦』P213-214

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 3 2011年の8月に見学した築地市場の写真です       |このページの先頭へ戻る|

 東京築地の中央卸売市場といえば、日本を代表する卸売市場です。
 一度訪問してみたいと思っていましたが、ガイド付きのツアーがあることを知り、2011年の8月9日に妻と二人で参加しました。本マグロの初競りのついでに、その時の写真を掲載して、ほんの少々東京卸売市場について説明します。

 このツアーの名称は、「築地魚河岸ガイドツアー」といいます。
 私たちは、「場内場外見学 食事付きコース」(料金1人6,500円)を申し込みました。
 9:00に築地交差点角のビル内のツアーデスクに集合し、10分ほどビデオを見た後、築地市場場内の見学に入り、1時間半ほど場内を見学しました。場外に出ていろいろなお店を回り、12時頃近くのお寿司屋さんでランチメニューの昼食をとるというツアーでした。
「少人数にガイドが付いて」の宣伝に偽りはなく、この日の参加者は合計10人ほどでしたが、私たち夫婦に専属のガイドさんが1人付き、丁寧な説明をしていただき、おまけに私の好奇心にあふれたむちゃくちゃな質問にも、ちゃんとお答えしてくださいました。お昼のおいしいお寿司も含めて大変満足したツアーでした。
 築地魚河岸ガイドツアーのHPはこちらです。http://www.tsukijitour.jp/index.html 

 築地中央市場は、1935(昭和10)年に開場して、今日まで、76年あまりの歴史があります。施設の老朽化やトラック輸送に向いていない(当初は鉄道・船舶輸送を前提に建設された)構造から限界が指摘されており、現在の約23haの広さの2倍となる、40ha規模を持つ豊洲の新市場が計画されています。
 ※東京中央卸売市場のHP 「豊洲新市場建設について」http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/challenge/


 写真17-01 隅田川の対岸から見た築地市場                  (撮影日 11/08/09)

 開業当時は海から船による搬出入が多かったのですが、今はほとんどありません。船便は1日に1・2隻とのことです。
 この写真は、築地4丁目の交差点を東へ行って、勝鬨橋を渡った隅田川東岸からの撮影です。中央は東京タワー、右は汐留シオサイトのビル群です。 


 写真17-02 築地市場の生鮮食品積み出し場          (撮影日 11/08/09)

 正確には、買荷保管所といい、卸売業者や小売業者などの買い手に渡った荷物を積み出しするまでの保管場所です。昔は、「潮待茶屋」と呼ばれました。小売店などが自動車を持っていない時代は、市場の自動車で配達しましたが、今は運送業者が配達したり、荷主が自動車で取りに来ます。
 うろうろしているとどやされるぐらい、トラックや車が通過します。「生き馬の目を抜く」世界です。 


 写真17-03 築地市場の案内地図です                  (撮影日 11/08/09)

 左下が築地4丁目の交差点です。下中央に正門があります。
 私たちは最初に、緑色の
青果部を見学し、次に水色の水産物部に向かい、その後、地図中央の灰色の部分「買荷保管所」、赤色の部分の魚河岸横丁を通って、左手の白色い部分の場外市場へ向かいました。
 のマークは、関係者以外立ち入り禁止区域です。
 白色の場外市場は何時でも行くことができますが、基本的に午前9時以降なら、緑色・水色・赤色の部分も一般人でも入場可能です。ただ、どなたかの案内がないと、何が何なんだかわからず、買い物もできません。
 時々TVなどで報道される、一般人が見学できる早朝の
マグロのセリは、地図右上の勝どき門から入場して、受付をしてもらわなければなりません。午前5時からの受付で、先着120名までです。60名ずつ2班に分けて、5時25分から5時50分まで、と5時50分から6時15分までの見学だそうです。その頃にはセリは終了するそうです。 


 写真17-04・05 案内板 左は築地の歴史 右は水爆マグロについて  (撮影日 11/08/09)

 左:この土地は、江戸時代に寛政の改革を行った老中松平定信が、引退後屋敷地を賜った場所で、浴恩園と名付けられた庭園があったところです。明治維新後、海軍省用地となり、初代の海軍兵学校(のちに広島県江田島へ移設)などが建設されました。
 魚市場は江戸時代以来かの有名な日本橋東の日本橋川川岸(俗称、魚河岸)にありましたが、1923(大正12)年の関東大震災によって壊滅し、築地に移りました。
 右:1954年のビキニ水爆事件の時は、被ばくした第五福竜丸から水揚げされた放射能に汚染されたマグロ等の一部約2トンが築地市場に入荷し、検査の結果、廃棄されました。この事件を忘れないように、「マグロ塚」がつくられています。
  →第五福竜丸の説明はこちらです。クイズ日本史:戦後期2「次の写真から語れる戦後史とは?」


 写真17-06・07 青果部と鮮魚部  (撮影日 11/08/09)

 青果部・鮮魚部とも、写真の右手がセリを行うエリアで、9時以降も一般人は立ち入り禁止です。


 写真17-08・09 青果部の左:桃とマンゴー、右:松茸  いずれも安い価格です。  (撮影日 11/08/09)

 近くに住んでいる方なら、こんな安くて新鮮な市場はありません。ただし、場内市場は、専門業者との取引が終わる10時過ぎには閉店となってしまいます。一般人が購入できるのは、9時から1時間かせいぜい2時間ぐらいの時間帯です。
 気軽に買い物に立ち寄るというわけには生きません。


 写真17-10・11 左:場内ではこの車が主役です 右:この機械は何でしょうか? (撮影日 11/08/09)


 写真17-12・13 左:氷の販売機でした  右:氷の価格です  (撮影日 11/08/09)

 氷は鮮魚部の必需品です。


 写真17-14・15 左:鮮魚店の帳場  右:鮮魚店には2種類の水道配管が来ています (撮影日 11/08/09)

 左:各店の帳場を預かるのは、その店の女将さんか娘さんだそうです。
 右:鮮魚店には、青い配管と通常のねずみ色の2種類の配管が来ています。海水(塩水)と通常の水道水です。


 築地といえば、マグロです。場内に店を構える700店のうち、150店がマグロ専門店です。

 写真17-16・17・18・19 いろいろな方法で冷凍マグロが解体されていきます  (撮影日 11/08/09)

 左上の写真では、まぐろが縦に2分の1、さらに4分の1に解体されtれいます。

 競りに出てくるマグロは、しっぽの手前で輪切りにされています。ここが、マグロに評価を下すポイントだそうです。
 あるマグロ取扱商社のベテランの発言です。
「『この尾の皮目の周りに脂が乗るんだけど、この皮目の脂の乗りと、この赤身のきれいな色。あとは身の縮み。魚の鮮度がよかったら、ぐっとしまって肉が盛り上がってくるんだけど。そういうところで総合評価するんです。』」
 ※参考文献6 星野真澄著『日本の食卓からマグロが消える日 世界の魚争奪戦』P87


 写真17-20 買い手の注文通りに成形された冷凍マグロ (撮影日 11/08/09)

 現代の冷凍マグロは、マイナス60度以下で冷結されています
 丸ごとの冷凍マグロ1匹を冷凍トラックから市場の床に降ろす際は、そのまま放り投げてしまうと、マグロに傷が付きますので、工夫がなされています。マグロを降ろす場所に古タイヤを敷いてクッション代わりにして降ろすそうです。
 この極低温の冷凍技術は、1970年代前半に確立されました。
 それまでは、冷凍といってもマイナス20度前後でしか冷凍できませんでしたので、マグロの肉の中のミオグロビンが時間の経過によって、酸素と結合してオキシミオグロビンからメトミオグロビンへ変化(この変化をメト化という)し、肉の色が鮮紅色から褐色または黒褐色へと変化してしまい、刺身の素材としては通用しないものになってしまっていました。
 ところが、このメト化は、マイナス35度以下の冷凍では著しく抑制することができ、この技術の普及によって、鮮紅色が保たれた冷凍マグロの流通が広がっていきました。
 ※参考文献5 中野秀樹・岡雅一著『マグロのふしぎがわかる本』P159-160  

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 写真17-21・22 いろいろな種類の包丁と大きな砥石での包丁研ぎ   (撮影日 11/08/09)

 大きなマグロをおろす時は、刀身が150cmの包丁が使われるそうです。包丁というよりは刀、いやそれ以上です。 

 写真17-23・24 生マグロがいろいろな形で商品となります  (撮影日 11/08/09)

 左は、大トロ・中トロに、目玉(手前の濃い赤色の肉)です。 右は、カマ・尾の身・ほほ・トロブツです。
 江戸時代になると日本では食物としての魚の利用が全国津々浦々に広がっていきます。後半期には、江戸前のにぎり寿司も確立されました。しかし、当初は、刺身として人気のあったのは、タイ、ヒラメ、スズキなどの白身の魚でした。赤身のマグロ肉は、上述のようにメト化によって色が褐色になってしまい、いいネタとしての評価されませんでした。冷蔵庫のない時代ですからいたしかたありません。
 また、江戸前の握り寿司の発展は、おいしい醤油につけて寿司を食べることと一体となって広がっていきますが、マグロの赤身は醤油が中までしみ通りますが、トロ身は醤油が中までしみ通らず、いわゆるヅケにはならない素材でした。このため、トロ身は二束三文で売られるか捨てられていたそうです。今から思うともったいない話です。
  ※参考文献7 中村泉著『マグロ学』(講談社 2011年)P166-167
 
 マグロのおいしさは、ひとつは、前述のミオグロビンの鮮紅色が醸し出します。
 また、肉が含んでいる脂質がうま味と独特の食感をつくります。ちなみに、大トロには100g中、20~28gの脂質が含まれているそうです。

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 写真17-25・26 私たちは右の写真の手前左のマグロを買いました  (撮影日 11/08/09)

 私たちは、今日の市場に入荷した生(冷凍ではない)のマグロを買うことにしました。
 新鮮な3,600円の値札が付いている中トロです。
 産地を示す札が貼ってあって、それには「ボストン」と書いてあります。


「ボストンって、アメリカ東海岸のボストンですか?」

店員

「そうです。アメリカから氷と一緒に空輸されてきました。もう店じまいの時間ですから、安くしますよ。いくらがいいですか?」

 もう、10時半を過ぎています。
 

「いくらがいいですかって、値札が3,600円と書いてありますが・・・、ええ・・・。」

  値段をいわずにいると、店員さんの方がかってに決めてくれました。

店員

「1,500円でいかがですか。」 

 ということで、とても大きなマグロを、1,500円で購入し、発泡スチロールの箱に、氷をたっぷり入れてもらって、ご機嫌で帰りました。


 場外市場もなかなかの面白さです。ガイドさんは慣れたもので、興味深いところに立ち寄ってくれます。 

 写真17-27・28 こんなお店もあります 左:牛丼の吉野屋1号店です。右:紀文総本店です。(撮影日 11/08/09)


 写真17-29・30 左手前:海苔屋さん 左奥:鰹節屋さん 右:包丁屋さん  (撮影日 11/08/09)

 海苔屋さんでは、全国の海苔の生産状況の講義を受けました。鰹節屋さんでは、鰹節の削り方、刃の具合の教えてもらい、今年の正月の鰹節削りに生かして大成功となりました。


 写真17-31・32 これは何かわかりますか?たい焼きならぬ、マグロ焼きです  (撮影日 11/08/09)


 いいですね、築地市場巡り。もう一度行ってみたいです。 

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 4 ついでに築地界隈の名所のひとつ 勝鬨橋の写真です |このページの先頭へ戻る|

 築地を訪問したついでに、昭和時代の「遺跡」、勝鬨橋に行ってきました。
 思い出に、ちょっと写真だけ掲載します。 


 写真17-33 隅田川の対岸から見た勝鬨橋                 (撮影日 11/08/09)

 昔は、大型船が通るたびに、中央部が跳ね上がっていましたが、1970(昭和45)年11月25日を最後に、閉じたままとなりました。


 写真17-34・35 跳ね橋の中央部分です        (撮影日 11/08/09)


 写真17-36・37 橋の西詰めに資料館があります  (撮影日 11/08/09)

 左:「かちどき 橋の資料館」です。中には、勝鬨橋の資料をはじめ、地域の紹介がなされています。
 右:昔はこうやって、橋の中央部が跳ね上がりました。
 


 【大間産マグロの初競り値、新記録 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』2012年1月5日付け朝刊

 

インターネット版『スポニチニュース』2012年1月6日06:00

  インターネット版『共同通信』2012年1月5日9時29分 

寿司チェーン店「すしざんまい」のHP http://www.kiyomura.co.jp/

中野秀樹・岡雅一著『マグロのふしぎがわかる本』(築地書館 2010年)

  星野真澄著『日本の食卓からマグロが消える日 世界の魚争奪戦』(NHK出版 2007年) 
 

中村泉著『マグロ学』(講談社 2011年) 

 
World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金) http://www.wwf.or.jp/activities/2009/01/625530.html


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