現代日本経済の諸相5
<解説編>
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509 マクドナルドのハンバーガーの最低価格、セブン−イレブンのおにぎりの最高価格は?   |  問題編へ |  

 答えは右の表の通りです。

 マクドナルドのハンバーガーの最低価格は、130円から平日半額65円→常時80円を経て、常時59円となりました。 

 一方、セブン−イレブンのおにぎりの最高価格は、130円から140円、170円、180円を経て、現在では、200円に値上がりしています。

 さて、この価格の推移の背景にある企業の意図と、現実の業績はどうなっているのでしょうか。

 マクドナルドは、2001年1月から、平日ハンバーガー半額65円を実施し、これがヒットし、一時はこの不況の中での勝ち組企業ともてはやされました。

 その結果、景気は回復基調にあると判断した同社は、2002年2月から常時80円の販売を実施しました。ところが、低価格に一度なれてしまった消費者に受け入れられずに、売り上げは落ち込みました。

 このため、2002年8月から一挙に59円に値下げしましたが、苦戦が続いています。
 2002年12月期の連結経常利益はその前の期と比較して、なんと91%減の17億5000万円に激減してしまいました。

 価格の設定を見誤ったことと、ただ安ければいいという発想では、必ずしも消費者に受け入れられないということが


サークルKのおにぎり。左「紅鮭いくら」は130円、右シーチキンマヨネーズは98円。

示されました。

 一方、セブンーイレブンは、2002年1月から1個170円の高級おにぎりの販売を開始しました。これがおいしさを求める消費者に受け、売り上げを伸ばしました。
 2002年12月には、同社はついに1個200円のカニおにぎりを売り出しました。

 岐阜県には、セブン−イレブンはまだ出店していません。
 現物は手に入れることができませんので、他のコンビニの状況を聞いてみました。
 すると、この地区では、ファミリーマートもサンクスもサークルKも、最高価格は、130円から140円のものしか売っていませんでした。最低価格は、98円から100円です。

ローソンの160円おにぎり、「新潟コシヒカリ焼き鮭ハラミ」。外装は紙、大切りの鮭がはみ出る豪快な高級感?


 
 各コンビニに聞いた所、その値段の違いは、おにぎりの中味の具の違いとのことでした。

 この地区のコンビニとしては、ローソンに160円の高級おにぎりがありました。
 ローソン尻毛店(岐阜以外の方に念のため説明します。尻毛はしっけと読みます。地名です。名鉄電車の揖斐線にも尻毛駅というのがあり、次の駅が何と又丸駅(またまる)というので、えー、一時何という組み合わせの地名じゃ、ということで売れました。(-_-;))の店長さんの話では、

「これねぇ、セブン−イレブンの高級おにぎりが売れたもんだから、ローソンもまねをしたのです。この辺のサークルKとかはまだやっていないはずですよ。160円おにぎりは結構売れています。何しろ新潟コシヒカリでしかも具は全然違いますから。」
とのことでした。
 上の写真のように本当に高級品です。
 はたして、この「高級感」商法は、長く消費者の心をとらえるでしょうか?

 ところで、セブン−イレブンですが、今までは東海地方ではお目にかかれませんでしたが、ついに進出をはじめました。

 2003年2月までに名古屋市を中心に愛知県内に一挙に80店舗を開店。2005年までには、岐阜・三重も含めてなんと300から400店舗を展開する計画です。

 コンビニ業界1位のセブン−イレブンは、他店が店舗数で伸びなやんでいる中、2003年も順調に店舗数を増やしていく予定で、今年中には、10000店を越すとのことです。右のグラフをご覧下さい。
 別におにぎりだけのせいではないでしょうが、絶好調のセブン−イレブンです。



 以上、グラフ等は、『日本経済新聞』(2003年1月3日第21面)によりました。
 おにぎりは、岐阜市内の「サークルK中店」・「ファミリーマート西中島店」・「ミニストップ須賀店」・「サンクス島南公園店」・「ローソン尻毛店」に取材しました。
 


 510 マクドナルドの新戦略とはどのようなものか?                 |  問題編へ | 

 マクドナルドは、2001年1月から、平日ハンバーガー半額65円を実施し、これがヒットし、一時はこの不況の中での勝ち組企業ともてはやされました。
 その結果、景気は回復基調にあると判断した同社は、2002年2月から常時80円の販売を実施しました。ところが、低価格に一度なれてしまった消費者に受け入れられずに、売り上げは落ち込みました。
 
 このため、
2002年8月5日から一挙に59円に値下げしました。
 値下げした直後は、客が殺到しました。8月5日から11日の1週間の延べ来店人数は、なんと3010万人となり、1年4ヶ月ぶりに過去最高を記録しました。売上高では、前年同期に比べて8.6%の増加となりました。

 この時同時に発表された経済産業省の
デフレに関する消費者意識調査では、次の消費者の志向が示されました。
    A…品質が同じで低価格   B…価格は同じで品質向上
 のどちらを希望するかとの質問に対して、
    通信。ハンバーガー、牛丼
 については、消費者の8割がAの低価格を支持しました。
 (ちなみに、紳士服・婦人服、映像・音響家電では、6割りにとどまり、消費者は、これらの商品では「品質」も重視)
  ※以上のデータは、『読売新聞』(2002年8月12日)より
 
 マクドナルドの59円作戦は、数字的にも、意識調査の上でも成功するかに見えました。

 ところが、ライバルのロッテリアもセット料金の値下げを行います。こちらは、値下げした8月10日を「ロッテリアの日」として、ポテトを無料にするなど、強力な対抗策を採ってきました。

 この結果、マクドナルドの業績回復はねらい通り進まず、その後は苦戦が続きました。
 2002年12月期の連結経常利益はその前の期と比較して、なんと91%減の17億5000万円に激減してしまいました。12月の既存店売上高は前年同月比9.1%減、15ヶ月連続で前年実績を下回っています。

 そこで、新作戦に打って出ました。
 
正解 肉の量を通常の2倍に増やした、同社の単品メニューとしては最高価格の270円のハンバーガー、その名も「プレミアムマック」を売りだしたのです。

 当面は静岡県内124店舗限定の試験販売ですが、消費者の反応を確かめながら全国へ広げる戦略です。
 プレミアムマックはこれまで最高のビッグマックより20円高く、セット価格も580円とこれまでより30円高くなります。
 ミートパティと呼ばれる肉部分の容量は、通常のハンバーガー(約45グラム)の倍近い80グラムもあります。レタス・スライスしたタマネギ・チェダーチーズを挟み、特製ソースとからしを合わせた高級感たっぷりの仕立てとなっています。

 この戦略は、セブン・イレブンの高級おにぎり路線と同じく(未読の方はこちらへ)、基本は低価格路線を軸としながらも、高価格・高付加価値の商品もラインアップさせて、消費者の「こだわり志向」に応えようというものです。
 
 さて、消費者の心をうまくとらえるでしょうか。 
  ※後半は、『日本経済新聞』(2003年1月10日)を参考にしました。 


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