現代日本経済の諸相3
<解説編>
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503 月の土地、1エーカー(1224坪)の値段はいくら?                  

 このクイズの発端は、5月7日(火)『中日新聞』の夕刊に掲載された、「夢いかが、月を”分譲”」という記事です。
 それによれば、アメリカにあるルナ・エンバシー社(訳すと月の大使館)という会社が、約20年前からすでに販売を続けており、すでに、2億区画以上を販売したそうです。

 何でそんなことができるのか?
と思いません!!

 新聞によると、月や惑星などの天体資源は、1967年に国連で締結された宇宙条約で、いかなる政府の領有も許されていません。しかし、同社は、この条文を逆手にとって、「企業や個人の所有なら大丈夫」と解釈し、1980年にアメリカ政府や旧ソ連政府・国連に、地球外不動産の販売を宣言しました。それについて、とくにどこからも苦情はなく、その直後から売り出しを始めたそうです。

 国連の宇宙空間平和利用委員会にも所属していた慶応大学の栗林忠男教授は、この会社の解釈について、
「宇宙条約は国家観の約束事で、個人は空白。この点は確かに正しい。」と行っています。つまり、月の所有権の主張を妨げる法律はないそうです。

 さて、月の土地の値段ですが、同社の販売価格は、以下の通りです。

<値段表>

サッカーグラウンド(競技面積)

4,050u     1エーカー(約1,224坪)

¥  1,980円

東京ドーム(建築面積)

46,775u  11.56エーカー(約14,149坪)

¥ 19,800円

東京ディズニーランド

832,100u  205.6エーカー(約251,700坪) 

¥198,000円

 この月の土地の分譲については、今年の夏に日本ヘラルド映画の配給で封切られるアメリカ映画「月のひつじ」の前売り券とセットとしても売られており、ルナ・エンバシー社は、2002年3月に日本国内に代理店を開業しました。
 それ以後、日本国内だけで、すでに、2700区画を販売したそうです。結婚や誕生日のお祝いに「夢のあるギフト」として人気だそうです。


 ルナ・エンバシー社のホームページから申し込むと、次のものが送られてきます。

  • Lunar Deed(月の権利書、日本語訳付)

  • Bill of Right(月の法律、日本語訳付)

  • Lunar Map(月の地図)(あなたの土地がどこにあるか印されています。)

  • アメリカ政府へ提出された所有権申請書のコピー

 

※こちらがそのホームページ「Lunar Embassy.jp」 私も、この「母の日」に、息子たちからの妻へのプレゼントとして、注文してしまいました。妻は、月の土地1エーカーの地主になる予定です。
 
 上述の栗林教授は、次のように結んでおられます。
 「所有を宣言するのを妨げる法律もないが、同時に、所有を認める法律もなく、現実にたくさんの人が月に行く時代には法整備が必要。今買っている人の所有権は制限されることになるだろう。
 ようするに、何の保障もないということです。

 まあ、1980円で買った、壮大な夢、大まじめな冗談ですね。


 購入してから届いた「公式書類」です。左は購入した1エーカーの土地の場所。赤いマークのところが妻の土地のある場所です。右は「権利書」です。本物っぽいところが何とも言えません。


504 2002年ワールドカップサッカー韓国・日本大会の経済効果は何億円      |  この分野の問題編へ |      

 大きなイベントがあったり、プロ野球なんかでどこかが優勝しそうになると、決まってどこかの経済研究所かなんかが、それによる経済波及効果というのを発表します。
 その計算の原理は、ご承知のように、最初に観客が試合を観戦に行く費用が○○円で、その収入を得た企業がそれをさらにいくら投資して、というふうに波及的に全体としてどのくらい生産額を増やすかというものです。

 今回のサッカーワールドカップの場合は、いくつかの研究所がそれぞれまちまちの結果を出しました。

 2002年5月3日の『朝日新聞』によれば、第一生命研究所は、W杯の観戦関連や大会関係費などの直接支出の増加額は2330億円、関連産業への2次的な波及効果を含めると約3690億円と試算しています。この結果、4〜6月期の国内総生産(GDP)は、約0.3%上昇するとしています。

 これに対して、電通総研
社会工学研究所は、日本がベスト8進出の場合(つまり、決勝トーナメントに進出し1回戦を勝ち抜く)の場合、消費支出額は8477億円、反対に1次予選敗退の場合は、7900億円と試算しました。
 
 一方、各企業では次のような皮算用を立てています。
  ※5月3日『岐阜新聞』

  • 日本ビクター
    公式スポンサーとなった同社は、デジタルビデオカメラなどのアジア市場・欧州市場への売り込みを計画し、10%以上の成長をもくろむ。

  • 松下電器産業
    4〜6月期のテレビCMを前年同期の7倍に拡大し、DVDレコーダーの販売攻勢をかける。

  • スカイパーフェクトTV
    総額140億円といわれる巨費を投じて放映権を獲得。全64試合を追加料金なしで放映。加入者が伸び悩んでいる同社としては、W杯中継が社運をかけた勝負となる。

  • 百貨店そごう
    経営再建中のそごうは、決勝戦開催地の横浜が主力店だけに、出場国のビールを集めたイベントなどを企画し、来客を増やすもくろみ。

  • コンビニのファミリーマート
    エビの天ぷら2本とチキンカツを入れた「海老日本カツ」弁当を売りだし。

 電通総研は、これらの間接的な消費も含めたW杯の全体の経済効果は、なんと3兆円以上を試算しています。

 但し、私の思いでは、この不景気の世の中、サッカーを見に行くとしたら、その分、他の消費を控える人が多いと思います。それでは、何ら経済効果は生まないと思いますが、いかがでしょうか。

 内閣府も、次のように冷静に分析しています。(前述5月3日『朝日新聞』)
「全体の消費のパイは限られており、景気の底上げにはつながらない」


505 映画「タイタニック」のヒットに便乗してホテルが実施して大ヒットした企画とは? |  この分野の問題編へ |  

 映画タイタニックは、1997年10月から日本で公開され、翌年1998年にかけて大ヒットしました。何かがヒットすると、いろいろ便乗商品がでるのは世の常。

 私の学校では、翌年の文化祭で、「映画のワンシーン」という企画がありました。
 これは、有名な映画のワンシーンをセットで再現して、来場者に記念写真を撮ってもらおうというものです。その一つに、ちゃんと「タイタニック」がありました。もちろん、タイタニック号の舳先のシーンです。
 そういえば、どこかの会社の通信販売では、あのダイヤかなんか宝石のブレスレット「碧洋のハート」のイミテーションまで、売られていました。

 さて、正解。
 大阪・中之島のホテル、リーガロイヤルホテルが企画したのは、タイタニック号が沈む前の晩のディナーと同じメニューの料理を、企画品としてホテルのディナーの商品とするというものでした。名付けて「最後の晩餐」。


 当時の企画担当の女性Tさんによって、この企画が計画されたのは、97年の末。

リーガロイヤルホテル

 「タイタニック号最後の晩餐」


オードブル
カナッペラミラル、バルケット タイタニック
アスパラガス サフラン風味

コンソメスープ ”オルガ”

スコッチサーモンのポワレ ムスリーヌソース

牛フィレ肉ステーキ リリ風

取り合わせチーズとフルーツ

エクレア、バニラアイスクリーム、ピーチゼリー

コーヒー

 これは、タイタニック号の航海5日目の1912年4月14日の夜にファーストクラス乗客にだされたメニュー11品目から8品目を選んだものです。タイタニック号は、よく15日未明沈没しました。


 ところが、ホテル内の反応は、余り芳しくはなかったそうです。企画担当の上司は、「ホテルで悲劇はだめ」というもの。Tさんは、作品はパニックものではばく、「ロミオとジュリエット」のような悲恋映画であること、女性に大人気のレオナルド・ディカプリオが主演することを繰り返し説明し、今のホテルの主戦略である「若い女性に来てもらえるホテル」のコンセプトにかなっていることを力説、企画の実施が決まりました。

 この部分には、この映画のヒットのポイントも語られています。
 私も、最初「タイタニック」という映画のタイトルを聞いた時は、ただ「船が沈む映画」という連想を持ち、それなら、以前のタイタニックものや、「ポセイドン・アドベンチャー」など、数々の客船沈没スペクタクルものと同じではないか、と思っていました。
 それでもと考え直して妻と見てみたら、上述のように、タイタニックの沈没を舞台にした、見事な悲恋物語となっていて、観客を魅了しました。
 悲恋が沈没と組み合わさっているところがこの映画の妙で、これがただの悲恋映画なら、また反対に、世の中年男性などはあれほど見に行かなかったと思われます。
 
 
 余談ですが、2001年の「パール・ハーバー」も戦争映画、実は悲恋映画という同じ組み合わせの妙を狙ったものだったと思います。しかし、タイタニックと違って、舞台がでかくて複雑すぎたせいか、いまいちだったと思います。
  ※映画パールハーバーはこちら

 ディナー企画は、98年2月1日から実施されました。
 6000円と8000円のメニューを1ヶ月限定で実施すると言うものでした。
 他のホテルの企画と比べても異例の企画でしたので、担当Tさんは、「もし失敗したら、私が毎日食べる。友達は何人呼ぼうかしら」。と不安の毎日だったそうです。
  
 ところが、予定の数は毎日完売。客席はいつも満席となりました。当初は相手にもしてくれなかったグループホテルも同じ企画に乗ってきました。
 ディナーは売れに売れ、この結果、ホテルの企画としては、異例のロングランとなりました。
 ホテルのこの種の企画には、「特許」を取ることができません。したがって、いいのがあると他のホテルがいろいろな形でまねをしていくのが常で、なかなかロングランとはならないのです。
 
 98年5月はじめまでに1万5千食が「売れ」、さらにその後も好調に売れ続けていきました。
 企画担当Tさんは、98年5月始めに、社長から特別表彰を受けています。
  ※ここまでの詳細は『朝日新聞』平成10年5月17日朝刊より

 このメニューは、今でも、10名以上であれば、食べることができます。値段は、税金・サービス料込みで、10000円だそうです。詳しくは、リーガロイヤルホテル、06−6448−1121 に問い合わせください。
  ※6月2日電話取材、メニューはファックスで送付してもらいました。


506 これらの会社の株価が上昇した原因は何か?                 |  この分野の問題編へ |

 グローリー工業は紙幣処理機械の大手の会社、沖電気工業・オムロンは、ATM(現金自動預け払い機)の会社の会社といえば、もうおわかりでしょう。
 
正解。これらの会社の株が、2002年8月2日(金)に東京証券株式市

新紙幣発行によってメリットのある企業

業種
(需要創出効果)

企業名
(東証8月2日終値の前日比較)

内 容

紙幣処理など
(2000億円)

グローリー工業(300円)
日本コンラックス(62円)
日本金銭機械(92円)

自動販売機、ゲーム機の切り替え

情報処理
(1兆円)

住商情報システム(30円)
日立情報システム(110円)

ソフトの変更

金融端末
(200億円)

沖電気工業(27円)
オムロン(37円)

ATMの更新など

場で一斉に急激に上昇したのは、この日午前、政府が、千円・5千円・一万円札の図柄を一新した、新しい紙幣を、2004年に発行することを発表したからです。

 大和証券の調査によると、新紙幣導入による需要創出効果は、ソフトの切り替えに伴う「情報処理」関係が1兆円。自販機やゲーム機など「紙幣処理」の関係が2000億円。さらに、ATMなど「金融端末」の関係が300億円にのぼると言うことだそうです。

 このため、発表があった2日の午後、紙幣処理機大手のグローリー工業株には買い注文が殺到、前日比300円高の2120円となり、オムロンの株価は、同150円高の1850円まで上昇しました。

新千円札

野口英世

富士山と桜

新5千円札

樋口一葉

尾形光琳の「燕子花図」

新1万円札

福沢諭吉(変更なし)

平等院鳳凰堂


 しかし、新紙幣の発行によって、マイナス効果を蒙る会社もあります。
 自動発券機の更新に多額の費用がかかる鉄道会社、ATMの更新をしなければならない銀行などです。
 とくに、ただでさえも不良債権で青息吐息の銀行には、大きな負担となると考えられます。岐阜市に本店のある十六銀行は、全部で700台のATMがあります。紙幣の状態にもよりますが、改修には1台あたり、「数十万円」かかるとのことです。

 政府は、この新紙幣発行のねらいを、より高度の偽造防止と新紙幣による日本経済の沈滞ムードの払拭にあるといっています。しかし、竹中平蔵経済財政大臣は、新紙幣の経済効果については、「ネット(実質)の効果は大きく期待してもいけない」といっていますが、その通りでしょう。このような小手先の「景気刺激策」では、本当に経済が回復するとはとても思えません。
 
 ところで、新紙幣の図柄は右の通りです。 
  ※以上、『岐阜新聞』平成14年8月2日(日)夕刊、『中日新聞』平成14年8月3日(土)朝刊より


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