作戦は成功し、最初は計画通りのペースでの走行が実現しました。
第1関門の通過時間は、9時48分45秒で、ほぼ予定通りでした。
しかし、次から予定が狂い始めます。
金華橋を渡らずにそのまま東進して、岐阜小学校北、玉井町・十八楼前を通過して、長良橋の下をくぐって、堤防道路へ出ました。
ここから、納涼台方面へ向けてが、実はちょっとした難所でした。ずっと緩やかな上り坂だったのです。私と同じレベルの集団も、ずいぶんペースが遅くなります。お互いに、遅くなって抜かれ、これはいかんと頑張ってまた抜き返すといった感じでした。細かい1kmごとの表示はありませんから、ペース配分はつかめませんが、計画の「1km=8分」以上はかかっている感じです。
そのことは、鵜飼大橋(10km地点表示あり)まできて、はっきり気がつきました。
「これはまずい。次の千鳥橋を渡った13kmの関門通過が危ない。」
関門までまだ3km弱もあるのに、時間はすでに10時32分を過ぎています。関門通過制限時間は10:55です。「1km=7分台」というこれまでにないペースで走らなければなりません。
そこで、鵜飼大橋を過ぎて比較的平坦な堤防道路に出てから、ずいぶんペースを上げました。ちょうど、いわゆる、「ランナーズハイの状態」がほんの少し訪れ、膝関節は痛いものの、それなりに快調に走れたのです。特に千鳥橋を渡るときは、非常に快調でした。
その結果、第2関門(13km 制限10:55)は、ほぼ計画通り、10時48分40秒に通過しました。
ところが、このあと、10km~13km当たりにちょっとペースをあげた反動が来ました。
いつもいつも経験する、「ランナーズハイの状態でペースを上げたあとの反動」です。
コースは長良川の北岸堤防に移っていましたが、このあたりは、応援の沿道の人もほとんどなく、疲れと意欲の低下から、ペースは1km9分台に落ち、さらに時々歩く時間も増えてしまいました。
そのツケは、当然ながら次の関門に回ってきました。
ハット気がつくと、鵜飼大橋手前の16kmの通過が11時22分過ぎ、これでは、残り1kmを5分弱で走らないと、17kmの第4関門は制限時間11:27までに通過できません。これは大ピンチです。
しかし、目前には鵜飼大橋から堤防道路に上がる坂道。こんなところでペースを上がれば、かえってあとで反動が来ます。坂道はぐっと我慢しました。そして、平坦な堤防道路で頑張りました。さらに、関門の電光時計が肉眼で見えて、これはもうあかんと思いました。まだ、300m弱を残して、時計は、11時26分00秒を過ぎました。これはもう、一か八かの全速力しかありません。ほとんど200m競争と同じぐらいの速さで走り抜けました。
結果、第3関門通過は、11時27分00秒。
つまり、閉鎖時間と同時に飛び込んで、ぎりぎりセーフというきわどい状況でした。
しかし、このあとの展開がどうなっていくかは、みなさんおわかりですね。
うまくペース配分をしなければならないはずのハーフマラソンで、途中で、200m競争をやってしまったのです。そのあと、どっと疲労が出るのが当たり前です。
グランドホテルの前から、旅館街のプロムナードに入り、また沿道のみなさんから多くの応援をいただきました。
もと同じ職場の仲間が数分間伴走をしてくれるという支援もいただきました。しかし、長良橋下をくぐって、高校生の一段の熱烈な応援を受けて堤防道路へ上がってからは、もはや、エネルギーは底をつきました。都ホテル裏から見る金華橋の遠いこと遠いこと。体の方はと言うと、両足とも、つりかけています。
AEDを持った、救援部隊が声をかけてくれます。
係
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「頑張ってください。心臓は大丈夫ですか。」
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私
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「心臓は大丈夫です。その代わり、この足、2本とも取り替えてくれませんか。」
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係 |
「あと2kmちょっとです。頑張って。」 |
結果的に、そのあと2kmちょとが、重い重い距離になりました。
そもそも、第3関門を通過したときに、私は、最後の通過者のはずであり、つまり、全生き残りランナーの最後尾となったわけです。
途中で、上記の高校生の応援を受けて、一人抜きました。
ところが、長良橋と金華橋の中程をほとんど歩くと同然のゆっくりしたスピードで進んでいると、白バイが後からすーっと迫ってきました。無線で報告をしておられます。
白
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「ひとり、ケガのためリタイアしました。今、最後尾のランナーの後につきました。」
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私
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「あれれ、私が、最後のランナーですか。」
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白 |
「はいそうです。」 |
また、第2関門前の千鳥橋の時のような「ランナーズハイの奇跡」が起きれば、あと2キロ弱ぐらい、何とかなります。しかし、もう、大腿筋もふくらはぎも、両膝関節も、足首も、すべて限界が来ていました。
時間はすでに、11時57分を示しています。競技終了まであと3分です。
私
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「白バイさん、迷惑かけて済みません。最後の力を振り絞って、金華橋の北詰まで行きます。そこで、時間切れになると思いますから、歩道に上がります。それで終了にします。
ありがとうございました。」
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白 |
「はい、存分に走ってください。あなたのご判断に任せます。」 |
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