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 32 少子化問題と対策         05/07/17               

 少子化が深刻である。
 岐阜県庁の知事皇室統計調査課は、先日、マスコミに、ちょっとショッキングな情報を流した。
「124年後の2129年には岐阜県の人口はゼロに。」

この情報の正確な意味は、クイズ「現代社会 現代の課題2人口問題」で説明しています。
こちらです。

 ちょっと乱暴な推定であるが、岐阜県の合計特殊出生率1.31がこのままずっと続くと、2129年には岐阜県の人口はゼロになってしまうという、センセーショナルな発表だった。

 ついでにいうと、同じ方法で推定すると、日本国全体の人口は、合計特殊出生率が現在の1.29を維持していくとして、2129年頃には現在の10分の1ほどになり、2144年頃には、これまたゼロになってしまうとのことである。

 

※この表の作り方などは、クイズ「現代社会 現代の課題2人口問題」参照。こちらです。


 少子化の原因となっている要因について様々なことが考えられますが、現象としては、次のようなことが数値的に把握されています。
<晩婚化・未婚化の進行>

 

 

1975年

 

2000年

25歳〜29歳の未婚率

男性

48.3%

69.3%

女性

20.9%

54.0%

 

       

50歳〜54歳の未婚率

男性

1.8%

10.1%

女性

3.8%

5.3%

 

 

 

 

 

平均初婚年齢

男性

27.0歳

28.8歳

女性

24.7歳

27.0歳

<夫婦の出生力の低下>

  

  

1987年

 

2002年

妻の年齢

35歳〜39歳

2.14人

1.90人

30歳〜34歳

1.98人

1.52人

25歳〜29歳

1.32人

0.96人


 すでに、これまでも、エンゼルプランなど少子化対策としては、いろいろなことが考えられ実行されてきた。
 本県教育委員会は、あらためて、2005(平成17)年3月には、特定事業行動計画(少子化対策の一環として、国・地方公共団体の機関等(特定事業主)と一定規模以上の民間事業主(一般事業主)が、職員のために、 仕事と子育ての 両立が図りやすい職場づくりを目指して策定する行動計画)のひとつとして、「岐阜県教育委員会特定事業主行動計画」を策定した。

 これには、育児休業や休暇の取得しやすい職場づくり、多様な働き方、人事異動等9つの項目について、教職員の皆さんが心がけること、所属長がすべきこと、教育委員会が行うこと、の3つの視点から様々な行動計画が記述されている。
 教育委員会に関する主なものを列挙すると、

  • 育児休業が取得しやすいと感じる職員の割合  平成21年度目標 80%

  • 不妊治療のための特別休暇の検討

  • 育児休業からの復帰を支援する仕組みの実現(例 復職時研修実施)

  • 男性のための育児参加のための特別休暇(妻の産前6週間、産後8週間の間に5日間)の創設

  • 教職員の託児施設の創設検討

  • 妊娠中の教職員が横になって休めるスペースを県立学校内に確保

 などなどである。

教職員の 「岐阜県教育委員会特定事業主行動計画」の説明ページはこちらです。(計画(PDFファイル)がダウンロードできます。)


 さて、わが職場でも、高校でできる「少子化対策」を話し合った。
 といっても、ちゃんとした対策会議ではなく、勤務時間外のがやがや自由討論会で、それ故になかなか面白い結論が導き出された。

A(上司)

「高校ならでは、少子化対策はないだろうか?」

D(同僚)

「まず、やはり、教育費の負担を減らすことかな。3人目の子どもは、授業料は徴収しないというのはどうでしょう。」

E(同僚)

「それっていつから対象にします?」

D(同僚)

「それは次に生まれる第3子からでしょう。」

M(私)

「即日布告しましょう。私の第3子は、今高校1年です。早いほうがいい。」

D(同僚)

「何か動機不純みたいです。」

E(同僚)

「いやいや、いいことは早くやって、先輩方が「子どもが多くても何にも負担ではないぞ」ということを次の世代に伝える必要があります。」

M(私)

「賛成、大賛成。」(他にも賛成者多数、なぜか、すでに3人の子どもがある職員が、私の職場には多くいる。)

D(同僚)

「各都道府県別の教育費の高さと合計特殊出生率低さってのは、相関関係があるのでしょうか。」

M(私)

「これはありそうですね。早速、インターネットで調べてみましょう。・・・・
 あったあった、ズバリ相関関係がありますね。
 合計特殊出生率が低い、神奈川・東京・奈良・京都・大阪・埼玉なんてところは、いずれも、一人あたりの教育費が高い都府県です。」

これは、「Honkawa Data tribune 社会実情データ図録」の「合計特殊出生率と教育費の相関」を参考にしました。

C(上司)

「一歩進んで、同時に兄弟が高校生の場合、下の子の授業料を免除するというのは、どうかな。
 兄弟2人高校生って、結構いるでしょう。」
A(上司)

「それもいいですね。
 そういうケースがどのくらいか調べてみる必要があります。ただし、これから子どもを生む人に、高校の授業料というのは、ちょっと先のこと過ぎて、今ひとつアピールしませんね。何か奇抜なアイデアありませんか。」

M(私)

「結婚と第1子出産年齢が高くなっているのが原因なのだから、それを低くする妙案が必要ですね。
 えー、高校に、生徒用託児所を設けるとか。」

F(同僚)

「だめ、生徒指導担当としては、問題外。却下。」

A(上司)

「Mさん、イエローカード。」

G(同僚)

「確か、沖縄が日本で一番出生率が高い県だと思いますが、何が原因か調べてみてはいかがでしょう。」

M(私)

「ちょっと待って、インターネットで検索してみましょう。・・・」

G(同僚)

「先日沖縄の方と一緒に過ごしましたが、なんか、時の流れ方が違うような感覚で、とてもおおらかでした。その辺も関係があるのではないでしょうか。」

M(私)

「はい、分かりました。
 沖縄は、2000年段階でも、合計特殊出生率が1.82もあって、1980年以来ずっと全国1位を保っています。
 へー、面白いことが分かりました。
 沖縄は、いまでこそ1位ですが、戦前は全国最低レベルでした。たとえば、1926年は、青森県が1位で6.48、全国平均が5.10、沖縄は3.86で46位です。
 沖縄の減少が緩やかで、他が急速に減少した結果、全国1位になったという感じですね。」

これは、「Honkawa Data tribune 社会実情データ図録」の「合計特殊出生率の推移」を参考にしました。

E(同僚)

「沖縄は、過去も現在も経済的には苦しい状況だし、積極的な理由は分かりませんね。」

B(上司)

「やっぱり、経済的に恵まれて、子づくりの本能を忘れてしまった日本人がいかんのじゃ。戦争とか貧しさとか、もっと、厳しい困難がないとな。」

M(私)

「いまから10年ほど前、まだ東京都知事になる前の石原さんが、最近の文学賞の作品はなっていない、という持論を展開した際に、文学を高めるものは、戦争と貧困と立ち向かうべきイデオロギーだといっていました。
 多産化にも関係ありますかね?」

B(上司)

「イデオロギーって、マルクス・レーニン主義のことだろう。それはどうか分からないが、戦争と貧困は関係あるな。」

A(上司)

「議論が、具体的な対策ではなく、哲学論議に近くなってきました。」

B(上司)

「ついでにいうとな、イスラム教の一夫多妻は、あれはいいぞ。あれは子だくさんの社会を作る。」

A(上司)

「えー、なんとまあ。」

M(私)

「確かめてみましょう。
 えーと、ありましたありました。
 アジアでは合計特殊出生率が日本と同様2.0を下回っている国が、2割前後ある反面、4.0を上回る国も2割を超えている。イエメン、アフガニスタン、サウジアラビアなど中央アジア・西アジアの国だそうです。
 やはり、イスラム圏は、高い出生率です。

D(同僚)

「イスラム教は、堕胎を許さないしね。」

B(上司)

「それ見なさい。イスラム教の一夫多妻は、多産につながる。」

C(上司)

「今日の結論、少子化対策は、授業料免除と戦争と貧困と一夫多妻。なんだこりゃ。」

A(上司)

「えー、またの機会に、もうちょっとまじめに考えましょう。」

M(私)

「どさくさまぎれに、ついでに言います。
前の職場の上司が、少子化と学力について鋭い分析を持論にしていました。学力低下の原因は、頭のいい女性が特に子どもを生まなくなったせいだと。賢い女性ほど、キャリアガールとなって、晩婚、少子化ですからね。
この意見って鋭くないですか?」

A(上司)

「す、す、鋭いですが、学校関係者としては、公式には口には出せません。断じて、ダメです。イエローカードです。」

M(私)

「2枚目です。退場です。」


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