A(上司)
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「高校ならでは、少子化対策はないだろうか?」
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D(同僚)
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「まず、やはり、教育費の負担を減らすことかな。3人目の子どもは、授業料は徴収しないというのはどうでしょう。」
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E(同僚)
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「それっていつから対象にします?」 |
D(同僚)
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「それは次に生まれる第3子からでしょう。」 |
M(私)
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「即日布告しましょう。私の第3子は、今高校1年です。早いほうがいい。」
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D(同僚)
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「何か動機不純みたいです。」
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E(同僚)
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「いやいや、いいことは早くやって、先輩方が「子どもが多くても何にも負担ではないぞ」ということを次の世代に伝える必要があります。」
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M(私)
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「賛成、大賛成。」(他にも賛成者多数、なぜか、すでに3人の子どもがある職員が、私の職場には多くいる。)
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D(同僚)
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「各都道府県別の教育費の高さと合計特殊出生率低さってのは、相関関係があるのでしょうか。」
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M(私)
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「これはありそうですね。早速、インターネットで調べてみましょう。・・・・
あったあった、ズバリ相関関係がありますね。
合計特殊出生率が低い、神奈川・東京・奈良・京都・大阪・埼玉なんてところは、いずれも、一人あたりの教育費が高い都府県です。」
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これは、「Honkawa Data tribune 社会実情データ図録」の「合計特殊出生率と教育費の相関」を参考にしました。
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C(上司)
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「一歩進んで、同時に兄弟が高校生の場合、下の子の授業料を免除するというのは、どうかな。
兄弟2人高校生って、結構いるでしょう。」 |
A(上司) |
「それもいいですね。
そういうケースがどのくらいか調べてみる必要があります。ただし、これから子どもを生む人に、高校の授業料というのは、ちょっと先のこと過ぎて、今ひとつアピールしませんね。何か奇抜なアイデアありませんか。」
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M(私)
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「結婚と第1子出産年齢が高くなっているのが原因なのだから、それを低くする妙案が必要ですね。
えー、高校に、生徒用託児所を設けるとか。」
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F(同僚)
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「だめ、生徒指導担当としては、問題外。却下。」
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A(上司)
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「Mさん、イエローカード。」
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G(同僚)
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「確か、沖縄が日本で一番出生率が高い県だと思いますが、何が原因か調べてみてはいかがでしょう。」
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M(私)
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「ちょっと待って、インターネットで検索してみましょう。・・・」
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G(同僚)
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「先日沖縄の方と一緒に過ごしましたが、なんか、時の流れ方が違うような感覚で、とてもおおらかでした。その辺も関係があるのではないでしょうか。」
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M(私)
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「はい、分かりました。
沖縄は、2000年段階でも、合計特殊出生率が1.82もあって、1980年以来ずっと全国1位を保っています。
へー、面白いことが分かりました。
沖縄は、いまでこそ1位ですが、戦前は全国最低レベルでした。たとえば、1926年は、青森県が1位で6.48、全国平均が5.10、沖縄は3.86で46位です。
沖縄の減少が緩やかで、他が急速に減少した結果、全国1位になったという感じですね。」
※
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これは、「Honkawa Data tribune 社会実情データ図録」の「合計特殊出生率の推移」を参考にしました。
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E(同僚)
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「沖縄は、過去も現在も経済的には苦しい状況だし、積極的な理由は分かりませんね。」
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B(上司)
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「やっぱり、経済的に恵まれて、子づくりの本能を忘れてしまった日本人がいかんのじゃ。戦争とか貧しさとか、もっと、厳しい困難がないとな。」
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M(私)
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「いまから10年ほど前、まだ東京都知事になる前の石原さんが、最近の文学賞の作品はなっていない、という持論を展開した際に、文学を高めるものは、戦争と貧困と立ち向かうべきイデオロギーだといっていました。
多産化にも関係ありますかね?」
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B(上司)
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「イデオロギーって、マルクス・レーニン主義のことだろう。それはどうか分からないが、戦争と貧困は関係あるな。」
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A(上司)
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「議論が、具体的な対策ではなく、哲学論議に近くなってきました。」
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B(上司)
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「ついでにいうとな、イスラム教の一夫多妻は、あれはいいぞ。あれは子だくさんの社会を作る。」
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A(上司)
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「えー、なんとまあ。」
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M(私)
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「確かめてみましょう。
えーと、ありましたありました。
アジアでは合計特殊出生率が日本と同様2.0を下回っている国が、2割前後ある反面、4.0を上回る国も2割を超えている。イエメン、アフガニスタン、サウジアラビアなど中央アジア・西アジアの国だそうです。
やはり、イスラム圏は、高い出生率です。
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D(同僚)
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「イスラム教は、堕胎を許さないしね。」
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B(上司)
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「それ見なさい。イスラム教の一夫多妻は、多産につながる。」
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C(上司)
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「今日の結論、少子化対策は、授業料免除と戦争と貧困と一夫多妻。なんだこりゃ。」
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A(上司)
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「えー、またの機会に、もうちょっとまじめに考えましょう。」
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M(私)
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「どさくさまぎれに、ついでに言います。
前の職場の上司が、少子化と学力について鋭い分析を持論にしていました。学力低下の原因は、頭のいい女性が特に子どもを生まなくなったせいだと。賢い女性ほど、キャリアガールとなって、晩婚、少子化ですからね。
この意見って鋭くないですか?」
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A(上司)
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「す、す、鋭いですが、学校関係者としては、公式には口には出せません。断じて、ダメです。イエローカードです。」
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M(私)
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「2枚目です。退場です。」
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