2012-11
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140 2012年07月09日(月) 今年も登場しました。我が家のヤモリ君、秘密の力を持っています??    

 今年も、無事、我が家に毎年出没するヤモリ君が現れました。キッチンの窓に、6月25日(月)に初登場しました。もちろん、昨年の個体と同じかはわかりません。


 写真−01 ヤモリ君登場。真ん中の生き物はヤモリとは別物です。(撮影日 12/06/26)


 写真−02・03 最初は奥ゆかしく、半身を乗り出して。恥ずかしそうにも見えます。 (撮影日 12/06/25)


 写真−04 しっぽの先までの長さは、10cm以上あります。(撮影日 12/06/27)


 部屋の中からのガラス越しでは、ヤモリ君の姿や周囲の詳しい状況は、はっきりとはわかりません。実は、数年前から、部屋の外に出てヤモリ君を撮影することを何回も試みました。しかし、窓にいることを確認して私が裏口(台所に隅にある)から外へ出ると、もう姿が見えないということが繰り返されました。
「そんなに警戒心が強いのか」
 最初はちょっと疑いつつも、何回も慎重に繰り返すうちに、ヤモリ君が極度に敏感なのがわかってきました。妻に部屋側から観察してもらうと、私が裏口のドアのノブを回すと、その音か震動かに反応して、もう警戒モードに入り、ドアを開ける「キー」という小さな音がすると、もう、窓を離れて隣の物置小屋の中へ退避してしまうのです。すごい警戒心です。

 そこで昨年は、思い切って、ヤモリ君が登場した場合、撮影者の私は、台所とは反対側の玄関から外に出て、家の横の道を通って家の裏手の道に回り、道から望遠レンズで撮影するという新手を考えて、実行しました。
 しかし、その作戦でも撮影は失敗に終わります。

 何回やっても裏に回った時はヤモリ君の姿は窓には見あたりません。
 また妻に観察を依頼すると、玄関を出てしばらくはヤモリ君は何の反応も示しませんが、私が横手の道を通って、裏の道へ回っていくと、その足音を聞いて、警戒モードに入り、足音が大きくなると、退避してしますというのです。
 私の方も、普通のサンダルを履いて撮影に向かっていましたので、抜き足差し足忍び足という具合ではなかったのです。これはうかつでした。
 それにしても、これまたものすごい警戒心です。
 
 今年は、しっかりスニーカーを履いて、まさにスニーク・アタック(奇襲攻撃、日本軍の真珠湾攻撃をアメリカ軍は、"sneak attack"と表現しました)をかけたのです。
 
 この結果、まず、裏手の道からヤモリ君の姿を見ることには成功しました。
 しかし、ここでまた、ヤモリ君の異常なセンサーが働いたとおもわれます。
 私がカメラを構えて、オート・モードでピントを合わせようとすると、何とそれを察知したかのように、ヤモリ君は逃げてしまうのです。カメラの音を感じたのでしょうか?


 写真−05 窓枠と物置の間に入って半身を隠すヤモリ君 (撮影日 12/06/27)


 ついに、自分の家の横手の道ではなく、隣の家の反対側の横手の道を回って、より遠くから撮影することにしました。もうこれ以外に作戦はありません。


 写真−06 ついに撮影成功。(撮影日 12/06/30)


 この迂回作戦が功を奏したか、偶然か、今年の登場初日から数えて6日目に、やっと撮影に成功しました。
 ヤモリ君の全身が撮影できたのはもちろん、まわりの状況もわかりました。
 写真を見てください。たくさんの小さな虫がガラスに張り付いています。これが彼の狩りの対象です。ここが彼の狩り場なのです。 


 写真−07・08 ヤモリ君はつるつるのガラスにしっかり貼り付いています (撮影日 12/06/26)


 ところで、このヤモリ君ですが、最近、その貼り付き力で話題になっています。
 ヤモリ君はどうやって、このガラスに貼り付いているのでしょうか?
 カエル君なら、手の先にある
吸盤です。右の写真の指の先の吸盤、これで貼り付くわけです。

 ところが、ヤモリ君の手足の先は、カエル君と同じ吸盤ではないことがわかってきました。
 私も、普通に「吸盤で貼り付く」と思っていましたが、ある新聞記事を見て初めて知りました。
 みなさんは、
ファンデルワールス力というのをご存じでしょうか?

 写真−09 カエル君は吸盤吸着(撮影日 12/06/08)

 吸盤というのは、普通に器具としても一般的なように、内側の圧力を外側の大気圧や水圧より小さくして、その圧力の差で吸着するものです。
 ところが、ヤモリ君の指先には、全く異なる仕組みが備わっています。
 まずはヤモリ君の手足先の状況の説明です。
 そこには、髪の毛の400分の1の
直径0.2ミクロン(200ナノメートル)の細かい毛が密生しているとのことです。



 これだけの細かい毛になると、この毛の生えている手足が接する物体に、なんと分子レベルで近づくことができるそうです。そうすると、毛の分子と物体の分子と、分子と分子の間で引きあう力がはたらきます。この力を一般的に分子間力といい、オランダの科学者の名前をとって、ファンデルワールス力ともいうのです。その力がどうやって生じるかは、文系の私の知識では説明不能です。
 ※詳しくは、NHK高校講座:物理「いろいろな力」を見てください。
   http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/butsuri/archive/resume028.html
 
 つまり、我が家のヤモリ君の場合、ガラスの分子と自分の手足の毛の分子の間のファンデルワールス力によってガラス面にへばりついているというわけです。えらいもんだ。
 ヤモリの手足のこうした仕組みは、
2000年にカリフォルニア大学バークレー校のロン・フェアリング教授の研究チームによって解明されました。まだとても新しい発見なのです。電子顕微鏡の精度が向上した結果です。

 こういうことが分かると、人間はその仕組みを何か他のものに利用できないか工夫します。
 粘着テープを生産する日東電工(大阪市)は、直径数ナノから数十ナノメートルという、ヤモリよりも細いカーボンナノチューブをヤモリの毛のように密集させた「
ヤモリテープ」を作りました。
 このテープは、1平方センチ角をガラス面に貼り、500グラムのペットボトルをぶら下げることに成功しています。ヤモリの実際の力の80%程の貼り付き力は実現できているとのことです。
 このテープの利点は、マイナス150度から500度の高熱まで、幅広い温度に耐えられることです。商品化が待たれます。
  ※『朝日新聞』2012(平成24)年6月4日朝刊20面「生き物まね最新技術」
  ※日東電工 http://www.nitto.co.jp/  ヤモリテープ説明 http://www.nitto.co.jp/news/20100123/index.html
 
 スパイダーマンは実現不可能でも、ヤモリマンは誕生するかもしれません。すごい、すごい。 


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