2006-03
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093 2006年 7月15日(土) 映画「日本沈没」               

 1月以来の映画鑑賞記です。

 今回は東宝映画「
日本沈没」。
 いつも言いますが、よほど恨みがある場合を除いては、ここでは感動したいい映画のことしか書きませんから、書く以上は、またまた評価は★が一杯の映画です。


 ちなみに、この冬から春・初夏にかけては、家族でいくつか映画を見ましたが、敢えてここに書こうと思ったのはありませんでした。
 
 たとえば、ROBOT制作「
Limit of Love 海猿」は、ハリウッドも顔負けの船が沈む映像のすばらしさといい、全編のテーマとなっている恋人への愛情など、とてもヒューマンなドラマで、家族全員のお薦め度は高い評価でした。しかし、それだけでは、どのコラムニストも「同じことを書きそう」というわけで、やめにしました。DVDレンタルがはじまれば、是非お薦めの映画です。

 また、ジョディ・フォスター主演の飛行機サスペンス、「
フライト・プラン」(Touchstone Pictures)も非常によかったです。もう、2か月前からレンタルがはじまっていますから、まだの人は、是非どうぞ。
 これは、この日記に書きたいと思ったのですが、サスペンスですから巧みなストーリーに触れると、まだ映画を見ていない人が面白くなくなってしまうことに配慮(?)して、敢えてやめておきました。すごく面白い映画です。


 さて、「
日本沈没」です。家族の評価はこうなりました。 

お薦め人 お薦め度
(3点満点)
コ  メ  ン  ト
★ ★ ★ ハリウッドもびっくりの感動のヒューマンドラマです。庶民も政治家もかっこいい。
妻N ★ ★ ★ あまり怖くなかったし、人を愛するってことはどんなことかを訴える感動の映画。
次男Y(20歳) −−− 前期試験のため欠席 (-.-)
3男D(16歳) ★ ★ ★ 何も期待していなかっただけに、大感動。高校生にもお薦め。
 

 ※映画「日本沈没」の公式サイトはこちらです。
 

 ストーリーは、中年以上の方はご存じの、小松左京原作『日本沈没』にもとづくもので、地殻の変動で日本列島が海中に没してしまうという映画です。

原作小説は、1973年刊行。同年、東宝により映画化されました。私が大学4年生の時です。


 
迫り来る終末を前に、特別な任務を帯びた人間が、政治家が、庶民が、いかに人を愛し、いかに日本という国土を愛し、それぞれの思いを表現していくかという映画です。

 いい映画と評価できる点を、いくつかにまとめてみましょう。

 1973年映画(以下前作と表記)では、田所博士(前作は小林桂樹、今回は豊川悦司)が日本が沈没することを発見し、それをみんなに訴えていくというところに映画の前半部分の力点が置かれていました。
 今回は、アメリカの学者の「日本沈没」の可能性の発表を政府がはじめから受け入れており、その結果で、理屈をぐだぐだ説明するストーリーの窮屈さからは解放されました。
 後述のようにその分、別の要素を入れることが出来ました。
(1973年当時は、大地震が起こるとか日本の地殻がどうにかなるとかいう問題は、まったく非現実的でした。
 しかし、1995年の阪神・淡路大震災以来、地震災害は非常に現実的になっていますから、そうぐだぐだと理屈を説明しなくてよくなったというのは、ちょっと皮肉です。)
 

 入った別の要素とは、政治家、調査隊員、一般庶民のそれぞれの、国や人間や家族や仲間への思いをどう行動に表すかという、とても、ヒューマンな要素です。
 前作は科学スペクタクルという感じで、
小野寺隊員(前作は藤岡弘、今回は草g剛)やその恋人阿部玲子いしだあゆみ柴咲コウ)の人間関係にまでは深く踏みいることが出来ず、したがって、日本沈没という事実を一人一人の人間がどうとらえるかについては、ちょっと浅い映画でした。
 今回は、とっても、たっぷりです。泣けます。本当に。
 ハリウッド映画で言うと、アルマゲドンやディープ・インパクトのような感じの映画となりました。

 だから、政治家も、調査隊員も、恋人も、飲み屋の仲間たちも、みんな味わいのあるカッコイいい生き方に描かれています。
 見ていて気持ちいい人間ぶりです。
 特に、政治家の中の主役、
危機管理担当大臣鷹森沙織(前作は該当の役無し、今回は大地真央)は、真剣にカッコイいいです。
 沈没前は、普通の女性文部科学大臣だったのですが、
山本首相(前作は丹波哲郎、今回石坂浩二)から後事を託されて、危機下で日本を指揮します。
 小泉チルドレンとしてTVをにぎわす、片山さつき議員や佐藤ゆかり議員が大臣になったら、「このぐらいは頼むぜ」といった感じです。
 
日本で政治家をかっこよく描いた映画はそんなには見かけません。「インディペンデンス・デイ」のような大統領(リーダー)がいるのを望むのは、普通の心情です。
 映画の
クライマックスの一部は、大地真央大臣の演説です。泣かせる演説です。選挙の時の絶叫とはわけが違います。政治家のステーツメントはこうありたいものです。
 

 お金かけただけあって、災害セットCGもすごいです。
 そして、最近の映画にはよく見られますが、
自衛隊の協力がこれまたすごいです。海上自衛隊のLSTやエアクッション隊というのは、私は、初めて映像で見ました。ヘリコプターも迫真の「演技」です。

 今、教育基本法改正を巡って、「愛国心」をについて、議論が盛んです。この映画を見れば「愛国心」をどのように考えるべきか、分かります。
 
「日本の国」というものへの愛情というのは、自分が他の人びとと暮らしてきたこの地での思い出への愛情であり、そこに現実に住む人びとへの愛情です。
 だから、あるものは、その愛情を捨てて他国へ移ることを拒み、あるものは、その愛する人を護るために命を捨てるのです。
 それは、戦時中の学徒出陣学生の手記遺稿集『きけ、わだつみの声』を読んでも同じです。(ちなみに、映画では、深海調査のための潜行艇の名前が、「わだつみ」でした。)
 
 これらは、
教義やイデオロギーとして教えるものではありません。教育基本法に書かれようが書かれまいが、人とその人が住む国を愛することと、「国家」を愛することはまったく別なのです。 
 そんなことも考えてしまう映画です。


 いくつもの悲しいシーンがあって、涙をたっぷり流して、そして、最後は希望が持てる締めくくりです。
 
見終わって、「頑張ろう」と思える映画こそが、お薦めできる映画の条件ですね。


 これは、通常のプレートテクトニクスの理論による地震の原理を説明するイメージです。
 茶色の
太平洋プレートが、緑色のユーラシアプレートの下へ潜り込んでいます。
 潜り込むところで、
ユーラシアプレートを引きずり込み、それに反発するエネルギーが蓄積されると、地震が起こる仕組みです。
 これは、正しい理屈です。地震は起こりますが、日本は沈没しません。

このイメージ図は、一応東北地方の蔵王の当たりで日本を切断した図にしてあります。ただし、距離、地殻の厚さなどは、まったく科学的根拠はありません。単なるイメージ図です。
関東とか中部とかを切断しなかったのは、そちらには、フィリピン海プレートもあり、とても素人の私などにはイメージ図化できるような単純な代物ではないからです。

詳しい図は、専門家のサイトをご覧ください。私は、筑波大学の高橋雅紀博士のHPをまねて作成しました。感謝。「高橋雅紀のページ」http://staff.aist.go.jp/msk.takahashi/index.html



 ここで終わってしまっては、単に、他の方のサイトのまねをしただけに終わります。
 映画「日本沈没」の田所博士の説を紹介しなければなりません。(まったくお節介な性分です。)



 以上が、日本沈没の基礎理論です。もちろん、映画の中での話です。

 しかも、当初、アメリカの学者が指摘したのは、50年ほどの間にそういう危険性もあるということでした。
 しかし、各地の異変に気付いた田所博士が、調査データを使ってコンピュータに計算させると、なんと、日本完全沈没までの残された日数は、・・・・・・・・・○○○日。


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