事件の予兆は、先週の日曜日にありました。
夜9時頃に電話がかかってきました。
女「Nですけど、K君いらっしゃいますか?」
さも、長男Kの友達と言った感じの親しげな話し方で聞かれましたので、思わず答えてしまいました。
私「Kは、○○の大学に行っていますので、家にはいません。」
その時は不在だった妻に、あとでこの件を話しました。
「Nさん?あまり聞かない名前ね。家に電話があったということは、中学か高校時代の友人でしょ?」
この瞬間、私は「しまったひょっとしたら」とひらめくものがありました。
さっそく長男Kにメールで確認すると、やはり、Nという女性に心当たりはありません。
確信して、家族と私の母(つまり、長男Kの祖母)に警告を発しました。
「(これこれこういう)電話があったのだけど、なんか変なので、変な電話に気を付けるように。」
不安は当たりました。
2日後の4月27日。帰ったら、母から報告がありました。
「きょう、変な電話がかかってきた。」
母によるとそのやり取りは次のとおりです。
男「もしもし、おばーちゃん、ぼくぼく」
母「あ、Kちゃん。どうしたの、何かあったの。」
母は、瞬間に反応して、孫のKだと思ってしまいました。
男「実は、おとーさんたちには内緒の話なんだけど、ぼくね、彼女がいて、妊娠させてしまってね。この前、中絶手術をさせたんだ。」
母「あれま、そんな大変な。」
長男Kが、そんなだいそれたことになっていると聞いて、母はびっくりです。
男「それもね、妊娠して5ヶ月目の中絶だったので、費用が50万円以上もかかって、困っとるんやて。」
母「そりゃーいかんがね。」
男「そこでね、費用は、とりあえず彼女のお父さんが立て替えているんだけど、そのお父さんが、もうすぐ外国に行ってしまうんで、早くお金返さないかんのやて。
それで、おばーちゃん、急なお願いで申し訳ないけど、今日中に、その彼女のお父さんの銀行口座に、50万円振り込んでくれないかな。」
母曰く、これだけの長い会話をしている中で、やはり、これは自分の孫Kではないと気が付いたそうです。
母「よう聞いとったら、関西弁の発音がまじっとって、Kの声ではないと思った。それで、今、お客さんだからあとでこちらからもう一度電話するといって、切った。
あとでKにかけたら、そんな電話しとらんといっとった。」
かくて、我が家を狙った「オレオレ詐欺」は、未遂に終わりました。
私が事前に警告していたとはいえ、わが母の冷静な対応に脱帽です。
ついでに調べてみました。
2002(平成14)年から発生したオレオレ詐欺ですが、2003年は激増しました。下は警察庁のHPで入手した資料から作成した、2003年の各月別の「オレオレ詐欺」認知件数です。
※資料の入手場所はこちらです。
下半期には激増していることがわかります。
2003年オレオレ詐欺認知件数は全体で6504件(既遂4319件、未遂2185件)、被害総額は、43億1826万8642円でした。
被害総額を既遂件数で割ると、1件あたり、約100万円になります。
詐欺の文言の内訳は、以下の通りです。
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1位 交通事故で被害者にお金を払わなければならなくなった |
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62% |
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2位 サラ金から借りたカネが返せなくなった |
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19% |
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3位 交際中の女性が妊娠中絶しなければならなくなった |
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6% |
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その他 |
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13% |
これを調べて、ちょっと不気味になりました。
我が家に降りかかった「妊娠中絶」は、6%の少数派です。
しかし、我が家の場合、長男は大学生です。
交通事故やサラ金は理由としては非現実的で、彼のおばあちゃんを騙すには、妊娠中絶が最も説得力があるわけです。
ここに、今度の事件の恐ろしさがあるような気がします。
ひょっとしたら、犯人は、長男が大学生であることをつかみ、家元から離れていることを確認し、そして、最も騙しやすい理由を選択したのかもしれません。
ついでに調べてみると、面白い記事がありました。
※Response News のサイトより
「オレオレ詐欺セット販売グループを逮捕」
- 滋賀県警は「オレオレ詐欺セット」などを販売していた男などグループ5人を逮捕した。男らは、パソコンとスキャナーを使い、偽造運転免許証や健康保険証、銀行口座、プリベイド式携帯電話をセットにして、1セット数万円で販売していた。
とんでもないセットがあるものです。
さらに、念のため確認してみました。
妊娠中絶の費用についてです。
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妊 娠 週 |
説 明 |
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〜12週6日まで |
費用8〜10万円 外科的手術 |
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13週目〜20週目6日 |
費用50〜60万円
劇薬を使い人工的に陣痛を起こさせる方法を使う。 |
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※ |
12週目以降は死産届けが必要になり、処置費用とは別に「埋葬費用」が必要となる。
胎児は、13〜14週目で約30グラム、体長11pほどで、性別もわかる。 |
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※この情報は、「Women’s Medi Navi」というサイトから入手しました。
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詐欺犯は、これについても、正確な知識を持っていました。
母「おいよ、Kちゃんは、本当に、困っとらへんのかなー。もう一遍、電話してみよか。」
何いっとる、あれは詐欺だって、とろくさいこと言っとるな、と言い返すのを辞めて、孫をそう思ってくれるわが母に感謝しました。
共稼ぎの息子夫婦にかわって、3年以上毎日、孫を保育所に送り迎えし、孫たちが学校に上がってからも放課後の面倒を見たわが母には、親の私たちとは違う「孫への思い」があるのです。
どんな犯罪でもだめですが、特に、オレオレ詐欺のような、人の愛情を利用する犯罪は、許すわけにはいきません。 |