トーマス・アルバート・エジソンについては、今更ここで説明をするまでもありませんが、少し物知りのあなたのほうが、この問題の答えは間違えやすいと思いますので、ちょっと説明します。
エジソンは、1847年アメリカのオハイオ州で生まれました。1931年に没するまでに、電球、発電システム、録音装置、映写機などを発明し、生涯で1000件以上の特許を取得しました。
ミシガン州のポートヒューロンで小学校に入りますが、教師から知能が低いと言われ3ヶ月で退学。基礎的知識は教師だった母親から学びました。
12歳の時、グランド・トランク鉄道で新聞売りの仕事を始め、ひまなときはもっぱら貨車で実験をして過ごし、車内で印刷した新聞「グランド・トランク・ヘラルド」を発売しました。この「鉄道時代」にエジソンの発明家・科学技術者としての原点があることはどなたも承知の通りです。
この間にエジソンは、駅長の子どもが列車に轢かれる寸前に救うという活躍をし、その駅長から電信技術を学び、また謝礼として手にした金でファラデーの全集を購入し、電磁気学の勉強に入りました。この結果、電信技手として働きながら、彼が最初に作った発明品は、電信技手がいなくても自動的に信号が次のラインに伝えられるという、「電信反復装置」でした。しかし、これは、特許の第一号ではありません。
※以上エジソンの「伝記」部分は、「マルチメディア百科事典ENCARTA97」(マイクロソフト社)に依りました。
彼はその後ボストンに移り、そこで、1868年21歳の時、彼自身にとっては特許の第一号を取ります。
正解。それは、自動投票記録機。つまり、議会で議員が議員席からボタンを押すと、電信装置で賛成・反対の投票数が表示され、あっという間に投票の結果が出るという装置の発明でした。
これは、採用されたかされなかったか?
この装置がエジソンの発明品として有名でないことから推察できるように、これは採用されませんでした。
理由は簡単です。
議会に売り込んだものの全くの不評だったのです。今も昔も、議会では、反対党から見れば採決を長引かせて会期終了審議未了によって廃案に持ち込むのも、一つの戦術だったのです。
最近ではそれほど多くは用いられませんが、日本の国会での、「牛歩戦術」を思い起こしてもらえれば、何のことかわかります。
かくてエジソンの自身第一号の特許は日の目を見ませんでした。しかし、これは、エジソンに重要な教訓を与えました。「みんなに喜ばれ、売れる発明でなければ意味がない」ということです。
この後彼は、株式相場表示器を発明し、これは投機ブームの世相にあって、実用化されていきました。
現在では、自動投票装置も、アメリカ議会を始め、各国議会で採用され、日本の参議院でも、1998年から押しボタン式投票が始まりました。
ところで、ついでに、「自動投票」に関して、別の新しい試みが、日本で初めて採用されましたので、付記しておきます。
※以下のレポートは、『中日新聞』平成14年6月22日版朝刊、『読売新聞』同6月23日版朝刊より構成。
平成14年6月23日投票の、岡山県新見市の市長選挙・市議会議員選挙で、日本で初めて、電子投票による投票が行われました。
投票所で投票用紙に候補者の名前を書くという方法と違って、次のように行われました。
入り口で本人の確認(これは従来と一緒、事前に配布される入場券による)
投票用紙のかわりに投票カードを受け取る。
投票する場所に行き(今までと同じついたてによるしきりがあるところ)、従来の投票用紙を書くところにかわりに於いてある投票機に投票カードを挿入する。
投票機の投票画面(コンピュータの画面)に並んでいる候補者の氏名を見て、自分の投票する候補者の氏名の部分を専用のペンで触れる。
確認の部分を触れる。
投票そのものは、銀行の自動支払機よりも簡単そうです。
この後、投票結果は、それぞれの投票所ごとにコンパクト・フラッシュ(CF)に記録されて、開票所に集められます。どうしてオンラインになっていないかといえば、ハッカーなどによる侵入・改ざんを防ぐため、法律でオンライン化までは認められていないからです。
電子投票に関しては、平成13年11月に国会で承認された「地方自治体電子投票特例法」に基づいて実施されます。この法律は、地方自治体に限って、条例を定めた上で、電子投票を実施することを認めています。
当日の開票の様子は次のようになりました。
これによれば、電子投票分の開票結果が出るまでは、わずか25分の速さでした。前回の市長・市議会議員ダブル選挙の時の開票時間が4時間半だったののに比べれば、格段のスピードアップです。電子投票に対する高齢者の方などからの不満をほとんどなく、全体的には大成功でした。
時間的人的効率ということ以外でも、これまで判定に時間がかかっていた無効票や疑問票がなくなり、投票の正確さという点でも、大きな効果がありました。
但し、不在者投票はこれまでどおりの手書きの投票であったため、その開票も従来どおりの方法で行われました。その結果、投票数は電子投票の約10分の1の数でしたが、こちらの方は、2時間かかりました。
また、投票カードを挿入しても投票機が読み込まなくなるという投票機のミスが2件発生し、原因はわかりませんでした。それまで記憶されていた分(投票されていた分)については、問題はないでしょうが、若干の不安は残ります。
さて、これが、国政レベルの選挙で実施されるかどうかです。
大きく二つの問題点が指摘されています。
以外と二つ目のことが、大きな心理的障害かもしれません。国会議員の先生方は、「何万人かの支持者が俺の名前を書いくれた」といった思いにこだわりたいのでしょう。
まあ、わかる気もしますが、この際、乗り越えねばなりません。 |