ハイアールは中国最大の家電メーカーで、正式名称は海爾集団公司、山東省青島市(日本史で登場する旧ドイツの租借地で、第一次世界大戦で日本がドイツ軍陣地を爆撃)に本拠地を置きます。
資本金50億円、2001年度の売り上げは602億元(約9000億円)、従業員約3万人、毎年2桁の成長を続け、中国国内に販売会社42社と9000店の販売店網を持つほか、欧米など31カ国に販売拠点を持ちます。冷蔵庫の売り上げでは、世界一を誇っています。
成長企業として中国国内での注目度も抜群で、2001年1年間だけで、中国各地からの企業参観者は50万人にのぼりました。
※海爾集団公司ハイアール社のオフィシャルサイトです。但し、英語版です。
2002年1月8日、三洋電機と広範な事業分野での包括提携をすることが発表されました。三洋は中国市場にハイアールの販売網を使って自社ブランドを投入。ハイアールは三洋と合弁販売会社「三洋ハイアール」を大阪府守口市に設立し、日本に初めて進出します。
WTO(世界貿易機関)に加盟した中国は10年には世界最大市場になると予想され、日中の企業が連合を組むことで競争に勝ち抜くという戦略です。国内家電メーカーと中国大手企業との包括提携は初めてのことです。
ハイアール社をここまで偉大な企業に成長させたのは、現在の同社のCEOである張 瑞敏(チャン ルイミン)氏です。
彼がこの会社の前身である青島冷蔵庫総工場に工場長として赴任したのは、1984年の12月。
当時、147万元(当時のレートで約1億4000万円)の赤字で、工場は閉鎖寸前、ぼろぼろの作業場で、賃金を満足に支払えない会社に対して、労働者の労働意欲も最低でした。やる気をなくしていた労働者は、8時に出勤すると9時に帰ってしまうという状態でした。規律も最低で、「作業場で大小便するな」「工場のものを家へ持ちかえるな」と目を光らせなければなりませんでした。
チャン工場長は、借金して労働者の給料を工面し、一方朝は職員とトラックに荷台に立ちながら乗って通勤し、自分は共産党の幹部として威張っているのではなく、労働者と苦楽を共にするという姿勢を見せました。
荒療治も試みました。
不良品として回収された冷蔵庫76台を、集合させた労働者の前でたたき壊したのです。
不良品とはいえ値引きすればまだ売れそうなものです。しかも定価では労働者の年収の2年分という高価なものです。チャン工場長は、たたき壊しながら、「今月の私の給料はなしだ。今度からは、不良品を出した者の給料から引く。」と叫び、労働者たちに「品質のよい製品」を作ることの重要性を教えたのです。
チャンCEOのモットーは、消費者のニーズをいかに早くとらえ、早く製品を送り出すことです。彼は言っています。
「国際的企業との競争に勝つための唯一の武器は「速度」です。彼らより早く市場に反応すれば勝てる。会社の中で「一人一人が市場に向き合え」と声をかけています。」
また、ハイアール家電は、取扱店網を充実し、24時間サービス態勢をモットーとして全国の都市・農村部をカバーしてきました。つまり、「故障したら24時間以内に修理にやってくる」という、中国では画期的なサービスを展開して、中国の消費者の心を掴んだのです。広い中国で24時間以内です。
正解は、洗濯機でイモを洗ってしまって排水が悪くなってしまった(当たり前だぞこれは)という農民からの苦情に対して、馬鹿にして取り合わない社の技術者を説き伏せて、なんと、イモも洗える洗濯機を発売したのです。(これは日本では売れるでしょうか、農家の方いかがですか)
また、狭い宿舎に住む大学生が、小型冷蔵庫を机代わりに使っているという話を聞いて、上部に折り畳み式のテーブルを板を付けた机型冷蔵庫も売り出しました。(これは日本では少し売れるかな)
チャンCEOのことばです。
「日本からは日本企業の団体精神を学んだ。(しかし、)日本の大企業は時々、反応が遅いことがあり、そこは学ばない。」
※ここまでの記述は、『朝日新聞』平成14年9月8日土曜版be、
『毎日新聞』平成14年1月9日版 に取材し一部引用しました。
一方で、日本のかつての巨大家電企業、松下電器産業が苦しんでいます。
この春発表された2002年3月期の連結営業損失は 2118億円の大赤字でした。
従業員1万人以上のリストラ作戦を立て、挽回に必死です。
2002年7月15日の共同通信は次のように伝えています。
「ハイアール家電の冷蔵庫及び洗濯機は首都圏及び関西地区で売り出されたが、現在ではほとんど売り切れで、次の入荷待ちとなっている。関西地区のハイアール家電のディーラーである上新電機のスタッフは、「お客様はハイアール家電製品に興味を持ています、しかし、残念ながら在庫が少なく、お客様の需要に応えられません。」と言っている。」(ハイアール家電のHPの英文の記事の日本語訳、私が訳しましたので少しぎこちないです。)
最後にもうひとつ、チャンCEOのことば。
「日本で本当に成功するかどうかは、まだわからない。最初に売り出したのは普通の製品で、日本のお客さんの意見を元に、いま改良を試みている。年内に、日本向けの製品を出すでしょう。消費者の要求に応じて個性的な製品を生産できるところが、強みです。」
誤魔化しと不祥事を繰り返して、社長の「ゴメンなさい」ばかりを繰り返している日本の大企業と比べて、何とさわやかで溌剌とした発言でしょう。 |