老人 |
「あんたな、昔はこれが全部鉄橋だったことは知っとりんさるかな。」 |
私 |
「ええっ、そうなんですか。知りませんでした。どうして土手になったのですか。」 |
老人 |
「わしの子どもの頃は、全部鉄橋じゃった。けんど、戦争中に、ほれ、金属の供出ってのがあったじゃろ。」 |
私 |
「はいはい、鉄とか銅とかが不足して、鍋釜や、お寺の鐘が生産用に供出されましたし、TVでいつか言ってましたが、甲子園球場の鉄屋根も撤去されたとかいうやつですね。」 |
老人 |
「よう知っとりんさる。その金属供出でな、この鉄橋も半分近く取られたんじゃが。」 |
私 |
「なるほど、今グランドになっている東側は、よほどの増水でもない限り水は流れないわけだから、土手にしてしまっても、川の水をせき止めることにはならないと判断されたんでしょうね。」 |
老人 |
「詳しいことは、わしゃ知らん。
とにかく、電車止めるわけにはいかんのでな、土を積んでは、夜のうちに鉄橋から土手に線路移し替えてというふうに、順番にやっとたがな。そのころは、機械はありゃせんから、たくさんの人がはたらいとった。
それから、あのころは、電車は朝も夕も昼も満員じゃった。」 |