現物教材 世界史15

 近代10  綿花の栽培 コットンボールの収穫   13/12/08記載  | 目次へ

 世界史でも日本史でも地理でも重要な教材として登場する綿花を栽培してみました。綿花とは、綿の種子を包んでいる白い毛状の繊維のことです。
 栽培するのになかなか根気が必要な教材です。(^.^)

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 写真15-01 
  綿花の花が開花したあと、綿の実がはじけていっぱいに広がった収穫前の綿花(コットンボール)。種をまいてから6か月後の成果です。

 (撮影日 13/11/01)


 全体のボリュームが大きくなりますから、次の順序で説明します。
綿花の登場する場面(世界史・日本史)、栽培の現状(地理)
この現物教材の入手先
綿花栽培の記録

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綿花の登場する場面(世界史・日本史)、栽培の現状(地理)  | このページの先頭へ |


日本史の教科書・資料集では、綿花・木綿・綿工業の主な登場場所は次のとおりとなります。

古代日本には綿花は存在せず、木綿は衣料としては使用されていなかった。しかし、中世になって中国から輸入されるようになり、特に日明貿易においては、「木綿は大量に輸入され、衣料など人々の生活様式に大きな影響を与えた。」(笹山晴生他著『詳説日本史B』(山川出版 2013年)P129)

江戸時代には、各地に綿花栽培が広がり、家内工業として木綿の生産が広がる。河内・和泉・摂津・尾張・三河などが主産地となる。(『日本史総覧』(東京法令出版 2003年)P131

明治以降には、近代化の過程において、国内での綿花栽培は衰退し、反対に輸入綿花を加工し綿糸・綿織物として輸出する産業構造となる。(山川同前 P302)

第一次世界大戦中に成長した日本国内の巨大紡績会社は、大戦以降中国に進出し、在華紡と呼ばれた。(山川同前 P340)

満州事変以降、金輸出再禁止により為替を円安に誘導した日本は、軽工業品の中国への輸出量を増やし、特に綿織物においてはイギリスにかわって世界一の輸出国となった。(山川同前 P347)

 

世界史の教科書・資料集では、綿花・木綿・綿工業の主な登場場所は次のとおりとなります。

インドの綿布生産は、紀元前の昔から続く重要な産業であり、17世紀以降のヨーロッパの宮廷では、インド産綿織物の人気が向上。(『世界史のミュージアム』東京法令出版 2005年 P161)

イギリスでは、産業革命がまずは綿工業の分野でマンチェスターを中心に始まる。(木村靖二他著『詳説世界史B』(山川出版 P242)
 ※マンチェスターの綿工業のことは以下のページも参照してください。
  海外研修記「マンチェスター・ロンドン研修記05 マンチェスター滞在」

イギリスの安価な工業製品のおかげでインドの綿布生産が振るわなくなり、19世紀前半には綿糸・綿布の輸入量が輸出量を上回る。これ以降、インドは原料綿花の輸出国という位置づけとなる。(山川同前 P289)

アメリカでは、南部諸州で奴隷制に基づく綿花生産プランテーションが拡大する。奴隷制・関税等をめぐって北部諸州との対立が深まり、南北戦争が起こる。(山川同前 P275-78)

インドでは、イギリス植民地支配に抵抗する民族運動が高まる。その指導者ガンジーは、手紡ぎ車(チャルカ)による糸紡ぎを、イギリスの機械生産に対抗するシンボルとして強調した。(東京法令同前 P161)

 

地理の教科書にある、綿花栽培の状況の説明は次のとおりです。

「(アメリカ合衆国の)南部は、かつては黒人の奴隷労働力を用いた綿花プランテーションが特徴であったので、綿花地帯(コットンベルト)とも呼ばれている。綿花栽培の中心は、大規模な灌漑施設をもつテキサス州、さらにはカリフォルニア州の乾燥地帯へ移動した。かつての綿花地帯には大豆・米・果実などの作付けが増えている。山本正三他著『詳説新地理B』二宮書店 2002年 P177)

 一鉢栽培しておけば、いろいろな部分で話題提供ができます。ただし、綿花の現物ができるのは、早くて10月遅ければ11月です。
 なお、綿は、英語Cotton、フランス語Coton、オランダ語Katoenと表現しますが、これらは全てアラビア語のクゥトンから出ています。古い時代からインドで生産された綿製品をアラビア人商人が東西交易によって広めていったことに由来します。
 もっとも、4種ある栽培種のうちの2種の起源は、新大陸です。コロンブスがアメリカ大陸に到達した際には、すでに当地の人々が綿製品を利用していました。コロンブスが新大陸をインドだと思い込んだ理由の一つは、それまでの常識で「綿製品はインド」と考えていたからです。
 ※日比暉編『子供のための綿づくり教室』(合同出版 1985年)P83、92-97、102

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 今回私は、生活協同組合のインターネット販売で、千葉県にあるアタリヤ農園(0120-455-566 千葉県香取市阿玉川1103 http://www.atariya.net/index.htm)という会社のセットを入手しました。この12月はまだ販売時期ではありませんが、また、来年になると販売されると思います。
 ほかにも、次の所から購入ができます。

特殊種苗生産滋養園 茨城県筑西市落合776   http://homepage3.nifty.com/jiyounouen/index.html

 

一般財団法人日本綿業振興会  http://cotton.or.jp/ 


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 5月上旬にインターネットで注文した種は、5月中旬には届きました。早速説明書通りに種をまきました。参考文献によると、種は最低気温12度以上、平均気温が15度の頃が適期だそうです。関東以西では、5月上旬から中旬にあたります。
  ※日比暉編『子供のための綿づくり教室』(合同出版 1985年)P

 うまく成長すれば、7月下旬から8月、9月上旬にかけて開花し、その後すぐに綿の実ができ、10月にそれがはじけてはコットンボールができるとのことです。


 写真15-02・03 パッケージと発芽 (撮影日 13/05/18 13/05/20)

 購入セットは、ポット、鉢皿、用土、種(写真の白いもの)、肥料2袋です。


 写真15-04・05 途中で2鉢にわけました 9月になってようやく花が咲きました(撮影日 13/07/15 13/09/11)

 たくさん芽が出ましたので、2週間ぐらいで、もう一つの鉢に植え替え、一部は間引きしました。
 7月になると、白い鉢の方に緊急事態が生じました。葉に虫が付き、もはや枯れ死寸前となってしまったのです。悪い部分を摘むという消極的な措置しかしませんでしたが、3週間後には何とか復活してくれました。
 写真の鉢がおいてある場所は、午前中しか日光が当たらない場所で、これも順調な生育を妨げた気がします。
 
 アクシデントのせいか、開花は予定より遅れ、9月の上旬となりました。背丈はこの時点で40cmぐらいになっています。
 右は花が開いて再び閉じてしまったあとです。花の色は、淡い黄色とのことですが、しぼんでしまうとピンクっぽくなってしまいます。きれいに開花している花の撮影には失敗しました。


 写真15-06・07 無事に実が付きました(撮影日 13/09/16)

 花が咲いたあとに、すぐに実が付きました。これが割れて、綿の実となっていくはずです。
 私の鉢は、虫がわいたせいか、2鉢で、合計3つの実しかなりませんでした。本当なら、10から20ぐらいは実がなるとのことです。


 写真15-08・09 だんだん熟して10月に入ってようやく実が割れ始めました(撮影日 13/09/21 13/10/12)

 開花から実がはじけるまでは、およそ50から60日と聞いていましたが、私の場合は、早いのは40日、遅いのは60日ほどかかりました。


 写真15-10・11 可愛いふわふわのコットンボールです (撮影日 13/10/14 13/10/18)


 写真15-12・13 実は合計3個しか付きませんでした。(撮影日 13/11/01 13/11/02)

 写真左の右側と中央がもともとの白い鉢についた二つの実。上側のものは割れてコットンボール状態になっています。中央のものは11月になってもまだ実が割れていません。
 左下のコットンボールは、分家した青い鉢の方についています。2鉢で3個とは、ちょっと寂しい収穫です。
 季節はずれの台風の通過で飛ばされてしまうことを心配して、熟した二つのコットンボールは収穫しました。


 写真15-14 3個の収穫(撮影日 13/12/07)

 結局、白い鉢についていた最後の実は、11月中旬に実が割れましたが、直後の強風で茎から落ちてしまい、写真の一番下のように、中途半端の状態で終わりとなりました。これが、「平成25年の収穫の全て」です。


 これだけでは、収穫と威張って言えるものではありません。
 ましてや、糸を紡ぐなど無理な話です。
 来年は、いろいろ工夫して、もう少し収穫を増やすことに挑戦したいと思います。

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 【綿花の栽培 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

笹山晴生・老川慶喜・加藤陽子・五味文彦・坂上康俊・桜井英治・佐藤信・白石太一郎・鈴木淳・高埜利彦・吉田伸之著『詳説日本史B』(山川出版 2013年)

『日本史総覧』(東京法令出版 2003年)

木村靖二・佐藤次高・岸本美緒・油井大三郎・青木康・小松久男・水島司・橋場弦著『詳説日本史』(山川出版 2013年)

『世界史のミュージアム』(東京法令出版 2005年)

山本正三・石井英也・手塚章・秋本弘章・井田仁康・犬井正・内山幸久・菊地俊夫・櫻井明久・西脇保幸・林敦子・松本栄次・矢島舜孳・山川修治著『詳説新地理B』(二宮書店 2002年)

 

日比暉編『子供のための綿づくり教室』(合同出版 1985年)