現物教材 日本史21

近代 015 火縄銃の球形弾丸 ミニエー銃の椎の実型(円錐型)      |現物教材:目次:日本史

 火縄銃の球形弾丸と幕末に輸入されたミニエー銃椎の実型(円錐型)弾丸の実物です。
 いずれも、ネットオークションで入手しました。値段は1000円程度です。
 いつもいつも出品されている商品ではありませんが、気長に待つと出てきます。(^_^) 


 銃が発明された当初の弾丸の形は球形であり、長くその形が続きました。
 しかし、19世紀前半になって、ようやく椎の実型の弾丸が考案されました。その利点と欠点は次のとおりです。

 椎の実型(円錐弾)にすれば、弾丸重量が同じであっても、空気抵抗がより少なくなり、射程距離を長くでき、さらに、威力も増大できる。

   そのかわり、円錐弾を使用するには、同時にライフルを施して、弾丸に回転を加えないと、高い命中率は得られない。 

 つまり、椎の実型弾丸は同じ重さの球形弾丸に比べ、射程も威力も優れていましたが、銃腔に溝を掘るライフル化が実用化しないと、命中率が期待できないという課題がありました。
 
 先込め式の銃では、ライフルの場合、どうやって弾丸を装填したかを説明します。

 まず、球形弾丸でライフルが刻んであった場合の装填は次のようにしました。

 火薬を挿入する。

   コインほどの木綿の小布(パッチ)を獣脂にひたす。 
   パッチを銃口に置き、その上に球形弾丸を載せる。 
 パッチと弾丸を一気に朔杖(カルカ)で銃底へ押す。 

 これによって、パッチと球形弾丸と筒とにうまく摩擦が生じ、球形弾丸が筒内でライフルに沿って回転していくという仕組みです。 


 一方、説明図2の椎の実型の弾丸は、フランスのミニエー大尉によって発明されたもので、この弾丸がミニエー弾と呼ばれ、この弾丸を使用する銃は、他の機構が異なっていても、ミニエー銃と総称されています。
 椎の実弾を銃口から装填する場合は、球形弾丸以上に難しい作業でした。
 円柱形の部分をうまくライフルに噛み合わせなければなりません。スムーズに装填するためには、銃腔の内径と弾丸の直径の差がある程度大きいものを使えばいいわけですが、それでは、隙間がありすぎて弾丸に十分な初速は得られません。
 19世紀前半のいろいろな試行錯誤ののち、ミニエー大尉がたどり着いたのは、次の工夫でした。

 弾丸底部を大きめの空洞にする。 

 空洞に鉄製の小キャップをはめ込む。 

 弾丸後部には溝を掘り、その中には銃腔との摩擦をほどほどにするために堅めのグリースを充填しておく。

 発射火薬が爆発するその鉄製キャップが奥まで押し込まれ、それによって、弾丸本体が拡張して、銃腔面のライフルに食い込む。 


 1853年にイギリス陸軍は、エンフィールド銃を制式採用しました。
 これは、口径14.7mmの先込め(
前装式ライフル式(施条)銃で、ミニエー弾を使用していました。幕末に輸入された銃の中では主役を占めています。



 説明図03は現代の銃弾です。弾丸と火薬・雷管が、薬莢によって一体となっています。

 もともと、銃の
弾丸を装填する方法としては、古くからの先込め前装に対して、18世紀から、元込め後装の実現が各地で進められました。
 しかし、手元で装填する元込めにおいては、その装置から火薬の爆発ガスを漏らさない方法が技術的には確立できず、軍事用の小銃の元込め化は、なかなか進みませんでした。何百発・何千発・何万発とうっても、全く発射ガス漏れがない完全なものでなければ、実用化はできません。
 この薬莢といういわばカートリッジによって火薬と雷管が一体化し、爆発ガスの噴射方向も制御できることにより、が実現されました。
 19世紀なかばのことです。

説明図03・04の銃弾も、ヤフー・オークションで入手しました。もちろん本当の本物ではなく、本物の使用済み薬莢(火薬は入っていません)に銅製の弾丸を装着した飾り物です。しかし、全体の雰囲気は「本物」です。 

   

 銃の発達については、もう少しわかりやすく、目から鱗の話「銃砲と歴史3 高島秋帆と高島平」の05−06「西洋砲術と日本」で説明しています。ご覧ください。