教師 |
「現在の5円玉の1個の重さを知っていますか?」 |
生徒 |
「1円玉は1個1グラムって話は聞いたことがあるけど、5円玉はわかりません。5グラム?」 |
教師 |
「いえ、5円玉1個の重さは、3.75グラムです。」 |
生徒 |
「どうしてそんな中途半端なのですか?」 |
教師 |
「キログラム、グラムの単位で示すと中途半端だが、実は昔の日本の単位でいうと、ぴったりの重さです。その説明をしましょう。
以前、律令制のところで、長さや面積や容積の重さの学習をしましたね。昔の単位でいうと、長さは何ですか。」 |
生徒 |
「寸と尺。一寸法師はやく3センチ。」 |
教師 |
「よろしい。では、昔の日本の長さと重さの単位をまとめていう場合、尺という字を使って、○○法といいますが、何でしょう?」 |
生徒 |
「尺貫法ですか。」 |
教師 |
「正解です。その貫という重さの単位とこの1円玉がつながります。ところで、太った人を悪く呼ぶ言い方、私たちの子どもの頃はよく言いましたが、現代の皆さんは使いますかね?」 |
生徒 |
「知ってる、百貫デブ。」 |
教師 |
「そうです。その百貫で、何キロぐらいでしょうか?」 |
生徒 |
「百キロかもっと。」 |
教師 |
「さて、そこで、最初に言ったこっとがつながります。
実は5円玉の重さは、その昔の、銅銭1枚の重さと同じなのです。つまり、銅銭1枚は3.75グラムでした。銅銭1枚を日本では、1文(もん)と数えると同時に、その重さを、1匁(もんめ)としたのです。
そして、銅銭100枚ずつ束にして10個集めたものを1貫として、取引に使っていました。
つまり、貫は、銅銭1000枚であると同時に、1000枚分の重さを示す単位でもあるのです。貫は、何キログラムですか。」 |
生徒 |
「3.75グラム×1000=3.75キログラムです。ということは、百貫デブは、体重375キロの人ですか?
これはありえない?ギネス級だ。」 |
教師 |
「匁という単位は、唐の時代の621年に開元通宝という銅銭が作られた時、当時の唐の単位で、2.4銖(しゅ)と定められした。
この「銖」というのは、中国の古い単位で、黒キビという細かい穀物100粒の重さだったそうです。これが唐時代は、グラムで言うと、1銖=1.56グラムでした。
したがって、2.4銖は1.56×2.4=3.75グラムということになります。
この重さは、中国の宋の時代には、重さの単位として定着しました。
実は皇朝十二銭は、だんだん小さくなっていってしまうのですが、中世の宋銭や明銭の輸入・利用によって、この3.75グラムが公式の重さとして定着しました。
「匁(もんめ)」は、はじめは「文目」と表現しました。そのうち、銭というのを表現するのに使っていた、泉の略字であった匁を記号として使うようになったのです。銭と泉は、発音が同じなので、より簡単な泉のしかも略字が使われたというわけです。
もちろん、江戸時代の寛永通宝も、同じ重さです。」
※石川英輔著『ニッポンのサイズ』(淡交社 2003年)P58などより |
生徒 |
「尺貫法は、いつまで使っていたのですか?」 |
教師 |
「尺貫法は、1891年に正式に制定され、1959(昭和34)年に取引などに使用することが禁止されました。」 |