現物教材 日本史17

近世 008 砂金取り体験セット                         |現物教材:目次:日本史
 ○砂金採り体験について
 ○砂金採りの道具
 ○土肥金山での砂金採り
 ○砂金採り大会

○砂金採り体験について  | このページの先頭へ |

 日本史の金山クイズでも説明していますが、鹿児島県の菱刈鉱山での新しい金鉱脈の発見と本格的採掘が開始された結果、1年間の日本の鉱山からの金の採掘量は、日本の歴史上最大となっています。  菱刈鉱山以外でも、大分県引治や野矢、山形県大峠、北海道東部の雄阿寒岳と十勝岳の中間の勢多などで、有望な金鉱脈が発見されています。
 九州大学井澤英二教授は、これらの発見による現代の金の増産を、近世前半以来の歴史的なものと位置づけています。
  ※井澤英二著『岩波科学ライブラリー よみがえる黄金のジパング』
  ※日本史の金山クイズをご覧になっていない方はこちらです。

 さて、そういう産業レベルの事柄とは別に、金というのは、所蔵するにしろ、装飾品にするにしろ、庶民感覚からしても、相当興味を引くものです。
 そして、どこかでたくさんの金が入手できたらと思うのは、宝くじに当たるのと同様、「庶民の願望」です。
 そんな願望を少しだけ満たしてくれるものが、「砂金取り」です。川で石や砂に混じって微量に存在する金を見つけ出すあれです。
 あとで改めて触れますが、普通の川で素人がそう簡単に砂金を見つけることはできません。
 ところが、「一攫千金」の願望の少しだけなら、比較的簡単に満たしてくれる施設があります。それが、「砂金取り体験」施設です。
 過去に金山があった場所に開設されている場合が多く、主のものは以下の通りです。
 ※このページの基本的情報は、『趣味の砂金取り入門』(文葉社 2003年) を参考にしました。
   こういう本がちゃんとあるのです。
  

場所

施設名

電話

HPへ

北海道

ウソタンナイ砂金採掘公園

0163-2-2345

北海道庁の案内ページ

北海道

歴舟川砂金堀体験場

01558-6-2111

北海道大樹町のページ

秋田

マインランド尾去沢

0186-22-0123

福島

日本三大金山 高玉金山

024-984-1220

新潟

佐渡西三川ゴールドパーク

0259-58-2021

山梨

甲斐黄金村 湯之奥金山博物館

0556-36-0015

静岡

土肥金山

0558-98-0800

愛媛

マイントピア別子

0897-43-1801

山口

地底王国 美川ムーバレー

0827-77-0111

大分

地底博物館 鯛生金山

0973-56-5316

 

※上記のうち、北海道の二つは、本当の川で砂金取り体験です。他は、館内施設での体験のようです。


○砂金採りの道具  | このページの先頭へ |

 さて、その砂金取りに使う道具が、右の皿です。

本文にある土肥金山の売店のもの。セットで2000円。黄色の袋の中には、砂金が微量に含まれた小石と砂が入っている。

 業界用語では、英語を使って、パンと呼びます。
 pan、つまり、皿状の鍋(鍋状の皿?、ここでは皿と呼びます。)のことです。
 (例 frying pan フライパン)
 厚手のプラスチック製の皿で、写真の右側の方には全体の3分の1ぐらいの部分に、3本の線のようなものが見えます。
 この線のように見えるのは、ストッパーと呼ばれる部分で、皿の一部が線上に盛り上げてあります。

 パンの使い方です。
 パンを両手でもって、川底の小石・砂を一杯掬い、パンを回転させて、砂金を皿の下に動かしつつ、ストッパーを利用してうまく小石・砂を落としていきます。
 金の比重は、1グラムあたり19.32と重く、パンを回してごそごそとやると、砂金が小石や砂よりも下に移動するという原理をうまく使うのです。
 もちろん、一度に落とせば砂金も落ちてしまいますから、パンを回して砂金を皿の下に集めては、小石・砂を落とす、と言う動作を繰り返し、最後にほんの少しの砂の状態にすると、その中に、数粒砂金を発見できたら成功と言うわけです。
 パンを使って、この動作で砂金を見つけることを、パニングといいます。
 


○土肥金山での砂金採り  | このページの先頭へ |

2003年12月28日に、家族で、上記の体験施設のうちのひとつ、静岡県伊豆半島西岸の土肥(とい)金山に行ってきました。 

 ここを選んだ理由は二つあります。
 一つ目は、岐阜や隣県には体験できるところはなく、土肥金山が一番近いという点です。
 二つ目は、土肥が温泉地であることから、通常は冷たくて過酷な冬のパニングが、ここでは温泉でほどよく暖められた水の中で快適にできるという点です。
  土肥金山は、東名高速道路沼津インターチェンジから車で1時間半弱ぐらいです。

 砂金体験施設だけでなく、旧鉱山の坑内巡りや、資料館もあ



土肥金山の正面。この裏に、坑内巡りも、資料館も、砂金採り体験館もある。

 坑内入り口

 人形が往時の様子を伝える。いつものパターン。 


 これはギネスブック公認の世界一の巨大金塊です。200キログラムです。 

これは、すごくきれいな金塊っぽいのですが、実はプラスチックに金メッキの貯金箱です。土産にgood。

パニング。なかなか根気のいる仕事。

最終的に砂金を見つけているところ。

 砂金採り体験は、30分大人600円です。
 パンと採取した砂金を入れる小さな容器をもらって、最初に一度講習を受けてからスタートです。

 要領は上述の通りですが、初めてでしたから、なかなかうまくいきません。 
 案内のお嬢さんは、
「さっさと小石や砂を落としてください。」
 といいますが、早くやるとごそっと落ちてしまいます。
 しかも、右上の写真のような、近眼のくせして眼鏡を持っていなかった次男Yの様な人は、なかなかの苦労です。
 さらに、近眼で眼鏡をかけているもの、同時に老眼も進んでいる私のような人間には、相当に致命的です。
 
 結果は、右の写真のようになりました。

 左の列は、私と次男Yの収穫です。
 右の列は、長男K・妻・3男Dの収穫です。
 右グループは、「やって結構面白かった。」という感想となりました。私と次男Yが、不完全燃焼となったのはいうまでもありません。
 目が見えないこと以外に、二人は水槽に並んでいましたから、たまたまその場所に獲物がなかったということも考えられます。

 出口の近くに、年間の「採掘優秀者のランキング」が掲示してありました。
 30分の制限時間内で、何粒の砂金を採取できたかのランキングです。
 それを見ると、2001年の最優秀者は、なんと、砂金59粒。2002年は78粒でした。
 驚くことに、この年に16位タイで36粒採取したのは、9歳の男の子です。これまでの最高記録は、85粒とのことです。
 3個の私、2個の次男Yは、驚くばかりです。 


○砂金採り大会   | このページの先頭へ |

 さて、砂金採りは、儲かるのでしょうか?
 体験施設の所にあげておきましたが、北海道には、本当に砂金がとれる自然の川がいくつもあります。
 その一つに、歴舟川があります。この川は日高山脈の南部に源を発し、襟裳岬の東に注ぐ川です。 この川の中流域、山脈の山裾にある十勝支庁大樹町のあたりで、30年間砂金をとり続けている限りなくプロに近い方がいます。
 もと帯広市職員のUさんです。
 U家は、祖父が佐渡の砂金採りだったという由緒ある家系です。

 そのUさんでも、1日かかってもとれる量は1グラムほどだそうです。現在の金1グラムの売値はおよそ1400円です。これでは生活はできません。
  Uさんがこの30年間に採った砂金の総量は380グラム、今の価格で53万2千円です。

 しかし、このUさんの活動によって生まれた同行者のネットワークなどを中心として、ある成果が生まれました。
 1994年に、第1回全日本砂金掘り大会が開かれたのです。バケツの中に20キロの砂利と砂金10粒を入れ、プールの中でいかに早く砂金だけ取り出すかという競技会です。
 実は、世界には、すでにずっと前から盛んになっている競技でした。
 Uさんは、1997年の世界大会で3位に入りました。
  ※『朝日新聞』(2003年8月30日土曜版)「be 川の流れに身をまかせ」を参照しました。

 知りませんでした。この道も奥が深いのです。

土肥金山の売店での会話。
「このパンを買って帰ってもいいか。」
「だめ、だめ、こんなもん買って帰ったら、休みに家にいなくなってしまう。」
「・・・・・(確かに)」

 定年退職したら、思いっきりやるぞー。
 ※砂金採取を紹介したサイトはいろいろありますが、一つ紹介します。
  茨城県のサトさんの「奥久慈レポート」の「砂金」です。こちらです。