かくして、今回の選挙は、マニフェストが重要な意義をなした最初の選挙となりました。
しかし、これは、改めて見直せば、ずいぶんと悲しい話です。
これまでの選挙は何だったのか、有権者は何を基準に判断していたのかと言う疑問が出てきてしまうからです。
まあ、ひょっとしたら、マニフェスト効果が過大に報じられているのかもしれません。
それはそれでかまいません。
それよりも、このマニフェストは、授業に利用できる格好の材料です。
我々高校地歴公民科教師は、「選挙に投票に行く良識ある公民」を育てなければなりません。
最後に、マニフェストを利用して、どのような授業展開をすべきかを提案します。
第一に考えなければならないのは、法律上の次の規定です。
A
|
教育基本法
|
|
第8条
|
|
|
良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
|
|
A
|
法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他の活動をしてはならない。
|
B
|
公職選挙法
|
|
第138条の3
|
|
|
何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選挙選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙にあっては、政党その他政治団体に係る公職に就くべき者又はその数)を予想する人気投票の経過または結果を公表してはならない。
|
Aは有名ですが、Bはあまり知られていません。
2003年11月の選挙では、東京都内のNPO法人rightsが、全国の未成年者(非有権者)に模擬選挙を呼びかけました。
※rightsのサイトはこちら
インターネットを通して、街頭で、各学校で、合計1704の投票が集まりました。
但し、岐阜市内の高校生らのグループ「U−19模擬選挙@ギフ選挙管理委員会」が行った模擬投票に対しては、岐阜県選挙管理委員会が「人気投票の結果の公表を禁じた公選法に触れる」と指摘したため、結果の公表は見送られました。
※『ギフ新聞』2003年11月8日朝刊
これらを考慮すれば、マニフェストを利用した選挙には次の形態が現実的であると思います。
<できないこと>
<できること>
-
各党のマニフェストの政策について比較し、その内容についてディベートしたり、課題追究学習をする。
-
各党派名を伏せたマニフェスト(仮にA、B、C)により施策の評価を実施し、A、B、Cについて授業中に模擬投票を実施する。A、B、Cが現実にどの政党のものかは、生徒の判断に任せる。
-
模擬投票の際には、各市町村の選挙管理委員会に事前連絡して、本物の投票箱を借り、それを使って臨場感あふれる投票とする。
以上、実際におやりになっておられる方がいましたら、ご意見ください。
|