アメリカ人のユーモアというのは、なかなかのものです。
これは、クリントンとブッシュ両大統領をネタにした偽札です。どういうユーモア、ギャグか分かりますか?
右は、クリントン大統領の肖像を真ん中にした6ドル札です。
おっと、よく見ると、数字は6ですが、英語では「SEX DOLLARS」と書いてあります。
これはもちろん、ホワイトハウスの中で、研修生のモニカ・ルインスキーさんとの不倫スキャンダルをパロッた偽札です。
裏の図柄はもちろんホワイトハウスです。
手前の道には、なにやら文字を書いたカーゴや立て札が立っています。
字が小さくて見えませんが、これらはみな辛辣な批判や、風刺です。
そのうち一番面白いものを説明します。
ホワイトハウスに向かって左手の木の前の一番左の看板には、右下の文字が書かれています。
「The suck starts here.」です。
この風刺の意味が分かる方は、世界史の先生・英語の先生として強者です。
これは実は、F・ルーズベルト大統領の死によって、アメリカ第33代大統領となったハリー・トルーマンの大統領の座右の銘、
「The buck stops here.」をパロッたものです。
これはなかなか難しいことばです。
buck は 背中や後ろを意味する back ではありません。
buck は 本来はオスの鹿を意味しましたが、そのうち柄をオスの鹿の角で細工したナイフを意味することばとなりました。
その昔、西部開拓時代には、男達がトランプのポーカーをする時、自分が親であることを示すために、テーブルにオス鹿の柄のナイフを突き刺しました。この風習から、さらに、 buckは「順番」→「責任」と、意味が転じていきます。
この意味で使う英語の慣用句に、pay the buck to というのがあります。
これは、誰か他の人に、「責任を押し付ける」という意味です。
さて、buckが「責任」という意味であることが分かった方は、「The buck stops here.」の意味はいかがでしょう。
普通、重い責任がある仕事は、みんな厭がって誰かにその責任をなすりつけていきます。しかし、アメリカ大統領は、他の誰かに責任を押し付けるわけには行きません。
そうです、「The buck stops here.」は、責任はここ、ホワイトハウスの大統領の机で止まる。つまり、「大統領はすべて自分で責任を取って仕事をしなければならない。俺がすべて責任を取る」という意味なのです。
大統領トルーマンは、これを座右の銘にして、責任の重い仕事を果たさねばならない自分を、奮い立たせていました。
さて、クリントン大統領はというと、ホワイトハウスの内部で、モニカ・ルインスキーさんと、ただならぬ関係になってしまいました。
念のため suck の意味は、「吸う、しゃぶる、なめる」ですから、これが、ルインスキーさんの行為を示すことばであることはおわかりでしょう。
したがって、クリントン大統領によって、「The suck starts here.」となってしまったのです。
とても、意味の深い英語と世界史のお勉強でした。
次は、ブッシュ大統領の2001ドル札です。
こちらは、それほど難しい細工は施されていません。
ブッシュの肖像の左下に副大統領のディック・チェイニー、右下に国務長官コリン・パウエルの署名があります。
但し、ブッシュのネクタイの下にある彼の肩書きは、
となっています。
つまり、大統領ではなく、「司令官」ブッシュです。
裏は、WTCビルとペンタゴンの写真、アメリカ国旗と二つの建物の間には、それぞれ自爆したアメリカン航空とユナイテッド航空の便名が書かれています。
ユーモアも立派な教材になるかな?
この紙幣は、ヤフー・オークションで入手しました。同じ会社の別々の品物ですが、ブッシュ5枚、クリントン3枚で、送料も含めて、1020円でした。
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