現物教材 日本史20 |
古代 013 絵巻物 複製 『伴大納言絵詞』(「えことば」と発音します) |現物教材:目次:日本史 | |
高校の日本史の教科書ではおなじみの、絵巻物『伴大納言絵巻』の複製品です。 |
4 伴大納言絵巻の謎 |
※参考文献(このページは、次の書籍を参考にまとめました) |
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1 入手の方法 | このページの先頭へ | |
この絵巻物の複製は、京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町301番地に本社がある、株式会社便利堂の商品です。
同社には、絵巻物・屏風など古典的文化財を商品にしたものがたくさんあります。ポストカードやブックカバーなどは比較的手に入れやすい価格ですが、屏風や絵巻物などは概して高価なものとなっています。 |
2 教科書と『伴大納言絵巻』 | このページの先頭へ | |
高校の教科書には、この絵巻物について、次のように記述されています。
つまり、この絵巻物は、平安時代末期(12世紀後半)に描かれたもので、都の火事を題材にしたものと言うことです。絵巻物そのものには作者名などは書いてありませんが、研究者の多くは、作者を常磐源二光長(ときわげんじみつなが)としています。後白河法皇の宮廷に使えた絵師で、彼がこの絵巻物を描いた年代は、1160年代から70年代にかけてと推定されています。
つまり、この絵巻物が教材として重要な理由は、単なる絵巻物としてだけではなく、これが藤原氏の権力獲得にまつわる事件を題材に描かれているという点にあります。それ故、次の「3」で示すように、「謎」も含まれたミステリアスな絵巻物なのです。ちょっと高価ですが、それに見合う「活躍」ができる教材です。 |
3 授業での利用 | このページの先頭へ | |
絵巻物というのは、これ以外にも、高校の授業ではいろいろ出てきます。授業に登場する順に言えば、『北野天神縁起絵巻』・『前九年合戦絵巻』・『後三年合戦絵巻』・『平治物語絵巻』・『鳥獣人物戯画』・『伴大納言絵巻』・『源氏物語絵巻』・『一遍上人絵伝』・『蒙古襲来絵巻』などです。 |
4 伴大納言絵巻の謎 | このページの先頭へ | |
絵巻物の研究をしていくと、そこに絵として描かれた風俗や人物の表情を初め、いろいろな面白い点が発見できます。そこはまた、絵巻物学習の第一のおもしろさでもあります。 |
応天門の変の経過 |
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閏3月10日 |
夜半、応天門炎上し全焼(現在に至も真犯人は不明) |
5月13日頃 |
大納言伴善男は右大臣藤原良相と結んで、応天門放火の犯人は左大臣源信(みなもと まこと 嵯峨源氏一族の最上位者)であるとし、この頃兵をだして、源信邸を包囲する。 |
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時期不明 |
藤原良房は伴善男・藤原良相とは結託せず、逆に伴善男は孤立する。 |
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8月3日 |
左京に住む備中権史生大宅鷹取という人物が、応天門の放火犯人は伴善男とその子、中庸(なかつね)犯人と申し出る。 |
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8月7日 |
伴善男、取り調べを受ける。事件を否認する。 |
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8月19日 |
朝廷、応天門炎上事件を歴代天皇陵に報告。その告示文から伴善男の有罪の確定が困難に直面していることが推定される |
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8月29日 |
善男の子、中庸の命令で、善男の配下の者が、善男を真犯人と申し出た大宅鷹取の娘を殺害したことで取り調べを受ける。のち確定。 |
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9月22日 |
伴善男の罪状が確定。この日、伊豆へ配流される。 |
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秋 |
良房の養女高子、清和天皇に入内。のち、陽成天皇となる皇子を出産する。 |
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12月8日 |
左近衛中将参議藤原基経が、7人抜きで、従3位中納言に出世する。良房の弟の良相の子、常行の官位を飛び越す。 |
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867年 | 10月 | 藤原良相、没。 |
閏12月 | 源信、没。 |
年表は、応天門炎上以降の動きを示しています。 |
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※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。 |
応天門の変は、上記のように結果的には藤原良房にとっては、政治的に大変有利な状況を生む結果となりました。 |
『伴大納言絵巻』の謎 |
事件の概要が理解できたら、次は、絵巻物そのものの謎への挑戦です。 |
たとえば、上述の黒田日出男氏は、同書(2002年出版)の中でこれまでの研究史を詳しく分析し、絵巻物そのものを精密に調査した上で、A伴善男、B頭中将、C藤原良房と比定しておられます。 |