現物教材 日本史9

中世 001 金箔                             |現物教材:目次:日本史

 金というのは、昔も今も人々を魅了する金属です。日本史の中にもいろいろな面で登場します。
 小判、金貨、金本位制度といった経済の仕組みにかかわるものから、奈良の大仏の塗金、押収平泉の中尊寺金色堂、金閣寺の金箔、秀吉の黄金の茶室などなど。

 金沢に行って金箔を買い、金箔工芸を体験してきました。
 直接には、金閣寺の金箔のところで話をする時に金箔を使うのですが、伝統工芸をちょっとだけ体験して、金細工の話をするのもなかなか面白いと思ったからです。
 
 金沢は金細工の街です。
 かの有名な兼六園の中に、金沢の地名の由来となったされる湧き水があります。
 今から1000年ほど前の平安時代中ごろ、芋掘り藤五郎と呼ばれていた男が、取ってきた山芋をその湧き水で洗ったところ、そこから砂金が取れたことから、金を洗う沢、かねあらいさわ、金沢となったということです。

 金沢で金箔工芸が始まったのは、安土桃山時代です。
 前田利家が朝鮮の役の陣中から領国の金沢へ、金・銀箔の製造を命じたことが始まりとされています。しかし、その後江戸時代には、幕府の金銀箔製造の統制があり、本格的に製造が拡大するのは、明治になってからでした。
 
 金箔は、現在では、仏壇・仏具の主要資材であり、また、金屏風・西陣織・漆器・扇子・襖紙・水引・など、多くの伝統工芸品の原料となっていますが、金沢はその全国生産の98%を占めています。

 「るるぶ」で調べたら、金箔工芸を体験できるお店が紹介されていました。
 金沢市東山1丁目3−27の、作田金製箔株式会社です。(同社のホームページは、こちらです。)
 
  まずは説明してもらった金箔の話です。
 金箔は、普通の金のインゴットをひたすら薄くのばして作られます。下の一番左のインゴットから、およそ、52000枚の金箔が作られます。

金のインゴット1キログラム。これから金箔をおよそ52000枚ほど作る。おおむね金1グラムで金箔50枚。

金箔にする最終段階は、1000分の1ミリの薄い金をこの紙の間に挟んで重ねて叩いて引き延ばす。

できあがった金箔、薄さ、10000分の1ミリ。静電気が大敵なため、絶対に手では触れられない。

 この奇妙な写真は、金箔を天井照明にかざしたもの。左半分に斜めに照明がある。10000分の1ミリの金箔は光を通し、蛍光灯が透けて見える。

紙の間から竹の道具で金箔を挟んで台の上に置く。その時は真っ平らではない金箔を、ふっと息を吹きかけて伸ばす。絶妙な技。

竹の道具で挟んだ金箔を、竹の型を押し付けて、10.8pの四方の正方形に切る。竹は静電気を生じないため、金箔製造に不可欠な道具。

 厚さ10000分の1ミリ、10.8センチ四方の金箔2枚入りで、500円。

 中味の金箔。取り出すのに失敗し、写真の右上部分は破れた。(--;)

 最後の成形の時にでた金箔くずが、お酒・お茶・化粧品などに混ぜられる原料となる。これは500円。


 家に帰ってきてから、購入してきた金箔の写真撮影を試みましたが、ちょっとしたすきに折れ曲がってしまいました。箸を使って必死に伸ばしましたが、上の真ん中の写真のように、一部がちぎれてしまいました。
 これは扱いが大変難しい現物教材です。

 さて次は、金箔工芸の体験学習です。
 漆塗りの箸に金箔で模様を付けるというのに挑戦しました。およそ1時間15分の工程です。 

黒の漆器の箸の上部に、普通のマスキングテープで、模様を作っていく。

模様が完成した状態。白いマスキングテープの部分には金箔が付かず地の黒色がでる。

金箔を張り付ける塗料を付ける工程。マスキングした箸をビンの中の液体接着剤に浸す。

10000分の1ミリの厚さの金箔に箸をクルクルと巻いていく。冗談ではなく鼻息でも金箔は飛んでしまう。

金箔を半分巻き終えたところ、今度は右側に片方の箸を置いて、右から左へ巻いていく。

2本の箸に金箔を巻き終えたところ。金箔は2重もしくは3重に巻いてあることになる。

真ん中から無造作に切断して1本1本に分ける。

左の工程では、箸に巻いた金箔はでこぼこかつビロビロである。それを刷毛で仕上げる。最初はとんとんと叩いて、次に横にうまく払って。

マスキングテープを剥がす工程。カッターナイフでうまく先端を剥がし、あとはずるずると引っ張る。

マスキングテープを完全にはがして、自分でできる工程はこれで終わり。あとは専門家に任せる。

1週間後、専門家のコーティングを終えて送られてきた完成品。デザインはともかく、金箔の塗り箸らしい。

 完成品の箸は、見栄えはまずまずです。
「普通につかっていですか。」
「いいですが、洗う時には、普通の箸みたいに全体をスポンジでごしごしやっちゃうと、だんだん金箔が剥げていってしまいます。洗う時は、さきっぽだけにしてください。」
 とのことでした。
 
 ちなみに、現在の金地金の店頭販売価格は、1グラム=1299円です。(2003年4月5日現在)
 
 金箔工芸体験は一人500円でできます。
 予約制ですから、事前に電話が必要です。作品はコーティングしてもらわないと金箔が不安定です。作ったあと、一度専門家にお任せして、後刻完成品を送ってもらうことになります。(若干の送料が必要です)
  ※作田金製箔株式会社(金沢市東山1丁目3−27)電話 (076)251−6777