はじめにお断りです。この教材は、別に地理でなくても、他の科目でも活躍できる教材です。
また、逆に、ただ平凡に提示すると生徒には何の感動も与えません。そのため、長く紹介を控えていました。しかし、やはり状況によっては、活躍できることがわかりました。そこで、あえて登場です。
この「原油と石油製品」は、日本石油連盟が石油製品の紹介のために、学校の教材等を目標として作成しているものです。
広報が目的ですから、石油連盟に電話をしてきちんと目的を説明してお願いすると、学校ごとに一つは無料(送料も無料)で送っていただけます。
※日本石油連盟広報課 TEL:03-3279-3816
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本体は、315mm×105mm×40mmの大きさのしっかりとした箱に入っています。 |
中には、各種の石油製品を入れた11の小瓶が入っています。 |
しっかりとした箱の中には、原油からナフサまで、それぞれの原油・石油製品のサンプルが入っています。
小瓶の拡大写真 |
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1 中国製重質原油
2 中東製形質原油
3 硫黄
4 潤滑油(機械用)
5 潤滑油(自動車用)
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6 重油
7 軽油
8 灯油
9 ジェット燃料
10 ガソリン(イミテーション
11 ナフサ(イミテーション)
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今回の登場は、いうまでもなく、十勝沖地震の結果生じた、出光興産苫小牧精油所の火災の説明です。
9月26日早朝に発生した十勝沖地震では、、北海道東部の沿岸地域に大きな被害をもたらしましたが、もっとも注目されたのが、出光興産苫小牧精油所の2度にわたる火災です。
1回目は、地震が起こった直後にタンクと周辺の配管から火災が発生し、7時間以上炎上して、午後12時9分に鎮火しました。
これで安心と思ったら、二日後の28日午前10時35分頃、別のタンクが炎上し、こちらは、30日の午前6時55分にようやく鎮火しました。なんと、44時間ほど燃え続けたのです。
燃えたのは、同精油所のナフサの貯蔵タンクです。
「ナフサって何?」という生徒の質問に答えるグッズがこれです。
さて、ナフサの説明です。
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参考文献
中学校用教科書『新しい科学 1分野上』(東京書籍 2002年)P80
『世界大百科事典』(平凡社)
山崎時男著『オイルマンが書いた マルチ石油学入門』(1994年 大空社)P84 |
原油は精油所に運ばれて、各種の製品になります。
その精製工程の第一段階、つまり一次精製
は、原油の「常圧蒸留」です。
つまり、原油に含まれている多種類の炭化水素を、それぞれの持つ沸点の差を利用して、各製品留分仕分けることです。
この工程は別名、「分留」と呼ばれます。
蒸留装置(塔)の下から350度程度に熱した原油を噴射し、蒸気となった原油が、蒸留塔を上に上っていきます。
蒸留塔の内部には、たくさんのトレイが作ってあって、高い部分のトレイほど温度が低くなっています。
したがって、沸点の高いもの(蒸気から早く液体となるもの)ほど下の方のトレイに貯まる仕組みです。
ちょうど砂利を「ふるい」にかけて大小に仕分けるようなもので、基本的には化学変化を伴わない物理的な作業です。
次は、二次精製です。
ここでは、減圧蒸留、改質、分解(これらはちょっと難しくて簡単には説明できません。(-.-))などの工程を行い、それぞれ細かな種類別の石油製品を作ります。
右上の図にはナフサが二つあります。一次精製で作られたナフサはガソリンとなる成分も含むもので、二次精製によってできたナフサは、エチレ・プロピレン・ベンゼン・トルエン・キシレンなどを作る石油化学工業の原料となるものです。
新聞を見ると、苫小牧精油所で炎上したナフサタンクというのは、一次精製後のナフサのようです。
2度目の火災では、結局2基のタンクが炎上し、2万6000キロリットルのナフサが燃え尽きてしまいました。
ナフサの価格は市況によって変動しますが、2003年8月の平均価格は1キロリットル2万2357円でしたから、それで計算すると、なんと5億8000万円余りが燃えました。(この数値は、あくまで私の計算で、公式発表ではありません。)
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